最高裁判所第二小法廷 昭和33(オ)289 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人鍛治利一名義の上告理由第一点について。
当事者間に本件土地(富山市a町b番外c筆の土地)売買に関する契約が締結さ
れた昭和二八年七月七日当時、被上告人は右土地が国税滞納処分により差押を受け
ていたことを知つていた事実について、当事者間に自白があつたとしても本件は請
求異議事件であり、本件訴訟の主要なる争点は、本件公正証書は有効なりや、無効
なりやということであり、この点からみれば、右自白された事実は、右主要事実の
認定の資料となり得べきいわゆる間接事実であつて、これに対する自白は裁判所を
拘束しないものと解するのを相当とする(最高昭和二九年(オ)第八九四号、昭和
三一年五月二五日二小、最高民集一〇巻五号五七八頁参照)。従つて原判決が所論
の自白された事実に反して、「上告会社(控訴会社、原告会社)代表者Aは、本件
土地が国税滞納のため差押されていることをかくして、被上告人(被控訴人、被告)
と売買契約を締結し、内金を受領し、最後に残金壱百万円受領の際に初めて上告人
(控訴人、原告)Aは、右土地が国税滞納のため差押されていることを明らかにし
た」旨認定しても、何等民訴法第二五七条には違反しない。論旨は独自の見解に立
つて原判決を非難するものであり、採るを得ない。
同第二点について。
本件記録によれば、昭和三〇年三月三〇日の口頭弁論期日において、原告両名訴
訟代理人正力喜之助が、同日附準備書面に基き、上告代理人主張の如き陳述をなし
たこと、同年五月四日の口頭弁論調書並びに原判決の引用する第一審判決事実摘示
欄にそれぞれ上告代理人主張の如き記載があることは論旨指摘のとおりである。し
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かしこの上告代理人主張の事実に対し、原判決の引用する第一審判決は「そして滞
納の解決を早急になすよう原告(上告人)に申入れたが、原告に誠意がないため、
被告(被上告人)は支払済の代金に多大の不安を抱き、最悪の場合に備えて極力原
告に担保物の提供、返還の方法についての取極を原告に要求し、且つ之が取極を公
正証書に作成することを要求した。そして昭和二九年二月一〇日頃原被告間に本件
公正証書の契約の原契約が成立し(乙第三号証の五)、この契約を公正証書に作成
するとの合意により云々」と判示しているのであつて、その趣旨は原告(上告人)
は被告(被上告人)よりの担保物の提供、返還の方法についての取極要求並びに之
が取極を公正証書に作成することの要求に対し、これを拒絶することなく、昭和二
九年二月一〇日頃原被告間に本件公正証書の契約の原契約が成立し、この契約を公
正証書に作成するとの合意により、……本件公正証書が作成されたことを認定した
ものと解すべきであるから、原判決には論旨の如き判断遺脱は存しない。なお乙第
一一号証は原判決の採用しなかつたものである。所論はその前提を欠き採るを得な
い。
同第三点について。
しかし本件公正証書の作成経過並びに右公正証書に上告人両名が関知していた点
に関する原判決の認定は、原判決挙示の各証拠によりこれを肯認し得る。論旨は原
審の適法に認定した事実または証拠の取捨判断を非難するものであつて、採るを得
ない。
同第四点について。
しかし本件公正証書を件成するため、上告人両名が、同人等の委任状(乙第三号
証の三)をその他の関係書類と共に被上告人に交付し、これらの書類によつて右公
正証書が作成されたものと認定できることは右第三点において述べたとおりである。
この点に関する上告代理人のその他の主張は原審において主張せざる事実に基くも
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のであつて、上告適法の理由とならず、論旨は採るを得ない。
上告人両名の上告理由第五点について。
しかし原判決は本件公正証書を作成するために、上告人両名が、同人等の委任状
(乙第三号証の三)を上告人等が主張する如き何等の制限なく、無条件に、その他
の関係書類と共に、被上告人に交付し、これらの書類によつて、右公正証書が作成
せられた旨を認定したものであり、右認定が原判決挙示の各証拠により肯認できる
ものであることは、右第三点において述べたとおりである。この点に関する上告人
等の主張は、原判決の認定しない事実に基いて原判決を非難するものであつて、採
るを得ない。
よつて民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主
文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 池 田 克
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
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