最高裁判所第二小法廷 昭和33(オ)701 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差戻す。
理 由
上告代理人弘中武一の上告理由一、第一について。
上告人の本訴請求は、被上告人は上告人所有の宇部市大字a字b第c番のd山林
一反三畝二五歩、同所第e番のd畑四畝歩、同所第e番のf田四畝歩、同所第g番
田五畝二歩の地域内で石炭の採掘をするため上告人に右土地の使用方を申込み、昭
和二七年三月一日上告人との間に、借受料は三ヶ年二〇万円とし、鉱害保証として
被上告人は昭和二七年六月一〇万円、その後同年七月より毎月五万円宛総額五〇万
円に達するまで上告人に積み立てること等の趣旨の契約を締結し、被上告人は、右
契約に基き右土地を使用して石炭の採掘をなして相当多額の鉱害を生ぜしめたにも
拘らず、右約定の鉱業保証金の積立を履行しないので、上告人は、被上告人に対し、
五〇万円を積み立てることを求め、なお、予備的に、株式会社D銀行E支店に上告
人名義で五〇万円の普通預金をなし、その預金通帳を交付すべきことを求めるとい
うのである。
ところが、原判決は、右上告人主張の契約の成立した事実、被上告人は前示土地
において石炭の採掘をしたが、約定の積立の履行をしていない事実を確定しながら、
甲第一号証の契約書によれば、本件契約による保証の期間は炭鉱終了後三ケ年とす
る旨の条項があり、被上告人は昭和二八年二月下旬採炭を終了しているから、被上
告人の上告人に対する本件契約に基く保証責任、従つてその一部である鉱害保証金
積立義務は爾後三ヶ年間すなわち昭和三一年二月下旬までに限り存することとなり、
結局、右期間経過後である原審最終口頭弁論期日(昭和三三年一月二二日)現在に
おいては、右三ヶ年の期間内に上告人に損害が発生していると否とを問わず、被上
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告人の右契約に基く保証金積立義務は既に消滅しているとして、上告人の本訴請求
を排斥しているのである。
しかしながら、甲第一号証の「保証年限ハ炭鉱終了後三ヶ年トス」との条項は、
同号証記載の他の条項との関連、右保証の性質等を考察すれば、「炭鉱終了後の三
年間に発生した鉱害について責任を負う」との趣旨に解すべく、これを、原判決の
ように、「鉱害に対する責任の存続期間を炭鉱終了後三年間とする」との意味に解
することは実験則に反するものといわなけ駅ればらない。
従つて、原判決が、地に特段の理由を示すことなく、甲第一号証により、本件保
証金積立の義務は、炭鉱終了後三年の期間経過によつて当然消滅すべきものと認定
したのは、証拠の解釈を誤り、不当に事実を確定した違法があるというべきであつ
て、右の違法は原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、
原判決は破棄を免れない。
よつて、爾余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員一
致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 池 田 克
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
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