大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和33(オ)815 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人高木廉吉の上告理由第一点について。

所論は、原判決が被上告人の主張しない弁済の事実を認定したというが、被上告

人は第一審以来所論弁済による本件貸金債権消滅の事実を主張しているものである

ことは記録上明らかであるのみならず、質権の実行として弁済を受ける場合も弁済

であることには変りはないのであるから、論旨は理由がない。

同第二点ないし第五点について。

原審が確定した事実によると、上告人の代理人Dは、本件債権質権の実行として、

民法三六七条一項によつて、E保険株式会社より質権の目的たる保険金請求権につ

いて直接取立をなしたが、保険金の支払方法については、当時施行中の法令上保険

会社より一件につき三、〇〇〇円合計一万二、〇〇〇円(四口分)の普通小切手に

よる支払の外は、すべて特殊預金として支払わなければならないので、右Dの指定

により上告人の取引銀行たるF銀行G支店に上告人名義の特殊預金口座の設定を受

け、さらに本件貸金の残額およびそれまでの利息全額も別途被上告人より支払を受

けたというのであつて、即ちDの承諾の下に特殊預金設定の方法を以て保険金の支

払いが行われこれにより本件貸金債権全額が弁済により消滅したことになる旨の原

審の判断は正当である。そして、この場合、右特殊預金の設定が、法律上弁済にな

るのではなくして代物弁済になるとの所論は、なんら判決に影響を及ぼすべき違法

の主張とはなりえない。したがつて、原審が民法三六七条の解釈を誤り、債権質権

者は債務の支払に代えて質権設定者に対し質物たる債権の譲渡を請求しうるものと

しているとか、またはそれを前提として所論非難は理由なく、また原審が弁済と質

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権の実行とを混同しているとか、その他所論はすべて原判決を正解しないでこれを

非難するものにすぎない。されば、論旨はいずれも採用しえない。

同第六点、第七点について。

所論保険金請求権に質権を設定することや、質権者が保険金を特殊預金で(質権

者名義の特殊預金口座の設定を受けて)受領するについて、政府の認可を必要とし

ないとの原審の判断説示は首肯しうる。なお、本件保険金請求権に対する質権設定

の時期は、被上告人の主張自体によつても昭和一九年六月二一日であるというので

あるから、右時期は所論諸法令の施行後であつて、本件につき右諸法令の適用ある

ことは明らかで、この点に関する原審の判断は誤つているが、これは前記政府の認

可を不要とする旨の判示に仮定的に付加した蛇足の説示にすぎないから、右違法は

原判決に影響を及ぼすものでないことは明白である。論旨は、すべて採用しがたい。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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