大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和34(オ)1010 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人川添清吉、同服部喜一郎の上告理由第一点について。

上告人が原審第二次的請求について、第一審において「本件不動産が原告(上告

人)の亡父Dの所有であつたが、同人はその後内縁の妻、Eの妹である被告(被上

告人)に対し、本件不動産を担保として金三〇万円の借用方を申入れ、未だ金員の

授受がなかつたのに、被告と前記のような身分関係があつたところから同人を信頼

し、被告に対し昭和二八年五月二日売買を原因とする所有権移転登記をした。しか

しながら被告はその後も一金をも右Dに交付しないうち、同人が同二八年七月二一

日死亡し、同人の相続人中原告を除く他の相続人はいずれも相続の放棄をしたので

原告において右Dを相続した次第である。よつて原告は被告に対し本件不動産が原

告の所有であることの確認を求めると共に、原告に対し同不動産の所有権移転登記

手続を求める。」旨主張したところ、第一審判決において「原告の請求はいずれも

これを棄却する」旨の判決がなされた。よつて上告人は控訴し、原審において右主

張を、「本件不動産につき昭和二八年五月一日附売主をD、買主を被控訴人(被上

告人)とし、代金を五〇〇、〇〇〇円とする売買契約が締結されたが、被控訴人は

売買成立と同時に支払うべきであつた代金五〇〇、〇〇〇円を今日まで一金も支払

つておらない。また仮に内金三〇〇、〇〇〇円の支払があつたとしても残金二〇〇、

〇〇〇円は同様未払のままである。そこで控訴人(上告人)は右代金の全額ないし

は一部の不履行を理由に、被控訴人に対し、右Dの売買契約上の地位の承継者とし

て本訴(昭和三三年一〇月二七日の本件口頭弁論期日)において右売買契約解除(

右一部不履行の場合においても右不動産は不可分のもので、代金全部の支払を受け

- 1 -

なければ契約の目的を達し得ないものであるから、契約の全部について)の意思表

示をする。よつて被控訴人に対し、本件不動産が控訴人の所有であることの確認を

求めると共に、右解除に基く前記不動産の所有権の復帰につき、控訴人に対する所

有権移転の登記手続を求める。」旨改め、原審判決において「本件控訴を棄却する」

旨の判決がなされたことが本件記録に徴し認められる。それによれば、上告人の第

一審における右請求につき、その請求原因の不備、不明確が原審において補完、明

確化されたに止まり、請求の同一性が維持されていると解すべきであつて、所論の

請求については原審判決の主文においてその許否の宣言がなされているから、論旨

は理由がない。

同上告理由第二点について。

所論の点に関する原判決の判断は、その所携の証拠に照し認められ、重ねて所論

の点に関し説示を加える必要がないから、原判決に所論の違法がなく、論旨は採用

できない。

同上告理由第三点について。

原判決は、所論の証拠のほか、原判決所掲の証拠により判示の頃被上告人がDに

対し本件不動産の売買代金を支払つた事実を認定したものであつて、所論の証言の

うち金銭支払の日時の点につき原判決の認定と多少相違するところがあるが、その

点は、Dと被上告人との間の本件不動産の売買代金の支払の有無に影響を及ぼさな

いところであるから、その部分の証言を措信しない旨を明示しなかつたものにすぎ

ず、これを措信しない趣旨が判文上うかがわれるから、原判決に所論の違法がなく、

論旨は採用できない。

同上告理由第四点について。

所論指摘の証拠は、証人が他より伝聞したところの証言もしくは証言記載であり、

証人が伝聞したこと自体は原審の所論の点に関する事実認定の妨げとならないから、

- 2 -

これを排斥する旨の説示を要するものではない。従つて、原判決に所論の違法がな

いから、論旨はいずれも採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

- 3 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!