最高裁判所第二小法廷 昭和34(オ)295 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人奥山八郎、同川上達吉、同安田重雄、同手塚義雄上告理由第一点につ
いて。
論旨は、破産組合は中小企業等協同組合法に基く事業協同組合であつて、同法三
八条によれば、組合が理事と契約するときは監事が組合を代表するとされていると
ころ、原判決が、破産組合の理事たる上告人との本件取引及び同じく理事たるDと
破産組合との間の本件破産組合成立前に成立した債権債務の引継契約につき、監事
において破産組合を代表してなした事実を確定していないのは違法であるという。
しかし、右の各契約が上告人又はDと破産組合との間になされたものであること
について当事者間に争のなかつたことは記録上明らかであつて、かかる場合には殊
更所論のごとき点についてまで審理判断を要するものではないから、所論は採用し
得ない。
同第二点について。
論旨は、原判決には、上告人の主張を正解しないか、或いはこれに対する判断を
遺脱した違法があるという。
しかし、原判決には所論のごとき上告人の主張に対する誤解乃至は判断の遺脱が
あるものとは認められない。所論は採用するに由ない。
同第三点について。
論旨は、昭和二四年六月二七日までに旧組合(E)のa出張所(上告人)が旧組
合の出張所として荷受した木炭については、たとえ破産組合ら(破産組合又はこれ
が成立するまで同組合の名称を使用して木炭の卸売業務を行つたD)宛に荷受通知
- 1 -
書を送つたにせよ、当然には破産組合らがa出張所に対し右木炭の販売代金を請求
し得るいわれはない筈であるのに、何らの理由を示すことなく、破産組合らのa出
張所に対する右代金の請求権を認めた原判決は理由不備の謗を免れないという。
しかし、原判決は、破産組合の設立発起に当つて、上告人ら発起人と旧組合との
間に、出張所長が昭和二四年六月二八日(旧組合が廃業した日の翌日)以降に仕入
先から荷受する木炭は勿論破産組合らからの販売委託品として取扱うが、同月二七
日以前に荷受した、又は荷受する木炭であつても、出張所長が破産組合らに対し荷
受通知書を送付したものについては、これを破産組合らからの販売委託品として取
扱う(なお、破産組合らからの販売委託品として取扱うとは、破産組合らに委託販
売の代金請求権を取得せしめる趣旨であることは明らかである)旨の出張所長に対
する旧組合と破産組合ら間の木炭販売委託の区分に関する協定がなされたことを認
定判示しているのであつて、右原審の認定は、その挙示する証拠に照し、首肯する
に難くないから、原判決には所論のごとき違法は認められない。所論は採用するに
足らない。
同第四点について。
所論は、破産組合らの出張所長の尽力によつて協定価格以下で仕入れた場合は、
協定の価格と仕入価格との差額は、破産組合らの出張所長の性格からして、破産組
合らと出張所長との間の特段の合意を俟たずして、当然出張所長の利得に帰すべき
ものであると主張して、右利得金をもつてする相殺の抗弁を排斥した原判決を非難
する。
しかし、原審認定のごとき本件木炭販売委託に関する協定の趣旨から考えても、
何ら特段の合意を俟たずして、当然出張所長において所論のごとき利益を取得する
ものとは解し難い。
所論は独自の見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用し得ない。
- 2 -
同第五点について。
論旨は、原判決上告人に対し、委託手数を差引かない委託販売代金の全額の支払
を命じているのは、破産組合らと上告人間の本件販売委託契約の解約を誤つたか、
又は釈明義務違背の違法があるという。
しかし、原審認定の破産組合らと上告人間の本件販売委託契約によるも、所論の
ごとく上告人は当然所論手数料を差引いた委託販売代金についてのみ支払義務を負
うにとどまるとは解し得ないこと明白であり、また、上告人が、所論のごとき手数
料を請求し得べき権利を有し、その差引を欲するというのであれば、自ら、その金
額等を主張立証し、相殺等の抗弁を提出すべきであつて、その義務を裁判所に転嫁
することは許されない。所論は理由がない。
同第六点について。
論旨は、結局、原審の事実認定を非難するものにとどまる。しかし、所論原審の
認定は、その挙示する証拠に照し、首肯し得ないわけでもないから(なお、論旨は、
公の認証ある書証を排斥する場合は、特にその理由を明示すべきであるというが、
根拠のない議論である)、所論も採用し得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 池 田 克
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
- 3 -