大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和34(オ)375 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人広浜嘉雄名義の上告理由第一点について。

原判決は、(一)被上告人の妻Eは、上告人の母Fに対し、昭和二八年七月頃か

ら同年一二月末ごろまでの間前後七回にわたり合計三四万円を貸与し、(二)昭和

二九年四月頃EはFと交渉の上、右七口の貸金を一口に改め金額三四万円、利息年

一割、弁済期同年一一月末日とする準消費貸借を成立させた事実を確定したもので

あつて、所論甲一号証の作成によつてはじめてFの債務が成立したとしているので

はないから、原判決には所論の違法はない。

同第二点について。

論旨は原判決の事実認定を非難するものに帰し、上告適法の理由と認められない。

同第三点について。

原判文の全趣旨によれば、原審は、Eのした前示(一)および(二)の行為は、

いずれも同人が夫である被上告人のためにすることの黙示の表示があつたことを前

提とし、その無権代理人としてしたものであることを判示した趣旨と認められる。

したがつて、代理における顕名主義が貫かれていないとする論旨は採用し難く、ま

た、先行する消費貸借の相手方とはちがつた者を相手方とする準消費貸借は民法の

認めないところとする論旨も前提において失当である。そして、被上告人が昭和三

二年九月一四日Eの右行為を追認したことは原審の確定したところであるが、この

場合追認は、(二)の準消費貸借に対してなされたものと解すべきであるから、追

認すべき対象物が存在しないとの論旨の採りえないことは明らかであり、なお、E

の死亡したことを前提とする論旨は、原審において主張判断のなかつたところであ

- 1 -

るから、もとより採用の限りではない。

同第四点について。

論旨前段は、名を憲法違反等に藉りて、原審の事実上の判断を非難するものに帰

する。また、消費貸借における貸主の地位が追認に親しまないとする理由なく、論

旨後段は独自の見解にすきない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!