大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(あ)2670 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中弐百日を本刑に算入する。

理 由

被告人本人の上告趣意について。

所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由に当らない、(なお被告人の司法

警察員に対する供述調書が所論の如く供述の任意性を欠くと認むべき資料は存しな

い)

弁護人中村登音夫、同和気寿の上告趣意第一点について。

所論は、違憲をいうけれども被告人の司法警察員に対する所論各供述調書の任意

性を欠くと認むべき資料は存しないから、所論違憲の主張はその前提を欠くもので

あり、所論の実質は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであつて適

法な上告理由に当らない。

同第二点について。

所論は被告人の司法警察員Aに対する昭和三二年二月二日附(三日附とあるは二

日附の誤記と認める)供述調書には、あらかじめ供述拒否権を告知した形跡が認め

られないから右調書は証拠能力がないとして、これを証拠とした原判決の憲法三八

条一項違反乃至判例違反を主張する。しかし司法警察員が被疑者を取り調べるに当

つて供述拒否権のあることをあらかじめ告知しなかつたからといつて、その手続は

憲法三八条一項に違反するということはできないし、又その取調に基く被疑者の供

述が直ちに任意性を失うということにはならないことは、当裁判所の判例(昭和二

二年(れ)第一〇一号同二三年七月一四日大法廷判決・集二巻八号八四六頁、昭和

二三年(れ)第一〇一〇号同二四年二月九日大法廷判決・集三巻二号一四六頁、昭

和二五年(れ)第一〇八二号同年一一月二一日第三小法廷判決・集四巻一一号二三

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五九頁各参照)の趣旨とするところであるから、所論違憲の主張は理由がない。

又所論引用の判例は、被疑者逮捕後の弁解録取書に関する判例であつて本件に適

切でないから、所論判例違反の主張は不適法である。結局所論は採るを得ない。

同第三点について。

所論は判例違反を主張する。しかし記録によれば、所論証人B、同Cの各尋問調

書は、いずれも起訴前における検察官の証人尋問請求による裁判官の証人尋問調書

であること、その後右両名共所在不明であるため検察官が刑訴三二一条一項一号に

よりこれが証拠調の請求をなし、第一審裁判所は右各調書が同条同項同号の要件を

具備するものと認めて、これを採用し、適式な証拠調をなしたものであること明ら

かである。従つてこれを証拠とした原判決には何等違法は存しない。所論引用の判

例は事案を異にし本件には適切でなく、所論の実質は右各調書の証拠能力は否定さ

るべきものとしてこれを証拠とした原判決の訴訟法違反をいうに帰するものである

が、その理由のないことは右に述べたところに照して明白である。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三九六条、刑法二一条により裁判官全員一致の意見で主文の

とおり判決する。

検察官 高橋一郎公判出席

昭和三六年一一月一七日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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