大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和35(あ)2824 判決

主 文

原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。

右被告人に対する本件を仙台高等裁判所秋田支部に差し戻す。

被告人Bの本件上告を棄却する。

理 由

被告人Bの弁護人内藤庸男の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二

点は、量刑不当の主張であつて、すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また

記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

被告人Aの弁護人加藤定蔵の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、所論引用の

各判例は本件と事案を異にしていて適切ではないから、所論は前提を欠き、その余

は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点は、違憲をいうが、実質は単

なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出す、同第三点は、違憲をいうが、実質は単な

る法令違反の主張であつて、すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

しかし職権により調査するに、原判決は、第一審判決判示第七の(一)のCに対

する詐欺の事実は、被告人AとDの共謀に基づき、、Dにおいて実行した犯行と認

めるのが相当であつて、第一審判決がこれを、被告人両名の共謀によるDを介する

共同間接正犯である、と認めたのは事実の誤認であるが、被告人Aは、Dにおいて

実行された犯行につき、共謀共同正犯としての罪責を免れないから、結局右事実の

誤認は、判決に影響を及ぼすことか明らかであるとはいい難いとして、被告人Aの

控訴を棄却しているところ、原判決が右のように被告人AとEとの共謀ありと認め

たのは、原判文によれば、(1)Dが右事実以前に被告人Bと同Aの共謀にかかる

右事実類似の各犯行に使用されていたこと、(2)Dは在外資産株券による金融の

からくりにつき、当時その内情を察知していたこと、(3)Dにおいて、Cが在外

資産株券だけでは金融に応じ難いことを知るや、独自の判断により、他から先日付

- 1 -

小切手を振り出さしめ、この小切手と在外資産株券をもつて欺岡行為を尽している

こと、の各事実に基づいているものの如く認められるのである。しかしながら右(

1)ないし(3)の各事実からすれば、或は右犯行はDの単独犯行ではないかとの

疑をさしはさむ余地があり、被告人AとDの共謀によるものであると直ちに断定す

ることは困難である。そうだとすれば、右各事実から、同被告人とDこの共謀を認

定し、それを前提としてDにおいて実行された右犯行につき、同被告人に共謀共同

正犯としての罪責があるとした原判決は、この点について審理を尽さなかつた違法

があり、その結果事実を誤認した疑いがあつて、これを破棄しなければ著しく正義

に反するといわねばならない。

よつて被告人Bにつき刑訴四一四条、三九六条、同Aにつき同四一一条一号、三

号、四一三条を適用し、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 高木一出席

昭和三八年五月三一日

最高裁判所第二小法廷

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判長裁判官池田克は退官につき署名押印することができない。

裁判官 河 村 大 助

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!