大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(あ)2898 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人瀬崎信三の上告趣意について。

所論は、原判決が憲法一一条、一三条、二二条、九八条および国籍法に違反する

と主張する。

しかし、憲法は、領土の変更に伴う国籍の変更について条約で定めることを認め

た趣旨と解すべきであつて、日本の国内法上朝鮮人としての法的地位をもつていた

者が平和条約により日本国籍を喪失したと認めることは、なんら違憲ではなく、ま

た領土変更という国際法上の原因に伴う国籍の変動については、国内法たる国籍法

の適用はないものと解すべきことは、当裁判所判例(昭和三〇年(オ)第八九〇号、

同三六年四月五日大法廷判決、民集一五巻四号六五七頁)の示すところである。し

こうして、当裁判所の判例(昭和三三年(あ)第二一〇九号、同三七年一二月五日

大法廷判決)は、台湾の戸籍に登載された者など日本の国内法上台湾人としての法

的地位をもつていた人は、台湾を日本国から中華民国に譲渡する旨定めた両国間の

平和条約が、昭和二七年八月五日発効すると同時に日本の国籍を喪失したものと解

している。

本件において、被告人が、台湾に本籍を有する生来の台湾人であつて、右にいわ

ゆる日本の国内法上台湾人としての法的地位をもつていた人であることは一件記録

上明白であるから、右判例によれば、被告人は、右条約の発効とともに日本国籍を

喪失したものと解すべきである。原判決は、その理由においてやや異なる点もある

が、結局、被告人が、右条約に基づいて日本国籍を喪失したものと認めたものであ

つて、この認定が、所論憲法の各規定に違反するものではなく、また本件には国籍

法の適用がないことは、前掲昭和三〇年(オ)第八九〇号事件大法廷判決の趣旨に

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照らして明らかである。それゆえ、所論は採るを得ない。

また、記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、台湾人の日本国籍離脱の時期および原因について、裁判官奥野健一

の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。

裁判官奥野健一の右の点に関する補足意見は、前掲昭和三三年(あ)第二一〇九

号事件大法廷判決における同裁判官の意見と同一につき、ここにこれを引用する。

昭和三七年一二月二六日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奧 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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