最高裁判所第二小法廷 昭和35(あ)462 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
理 由
弁護人真木桓の上告趣意について。
弁護人宗宮信次、同鍵山鉄樹、同川合昭三の上告趣意について。
職権をもつて調査するに、
原判決は、その理由として次の趣旨を判示している。すなわち、第一審判決挙示
の証拠によれば、被告人は本件犯行当時、第一審相被告人A及びB、Cと飲食店D
において、Eから酒を馳走され、その際同人から、上京の金がないのでこれからそ
の工面をすることを聞いた後、一同で同所を出て同日午后一一時ごろ飲食店F前に
行き、Eだけが同店に入り、酒を一杯ひつかけすぐ外に出て来て、再び一同で元来
た道を戻る際、Eが消防屯所前附近において、右肩にボストンバツクを掛け左手に
手提鞄を持ち、前方を歩いていた本件被害者を認め、同人を殴つて同人から金員在
中の手提鞄を奪おうとの考えを起し、傍のBに対し、「俺あの鞄をとつてやろう」
と告げて、被害者の後を追つて走つていつたこと、これを見てBは側にいた被告人
を誘い、被告人とAとは共に走り出し、Eの後を追つたこと、約三〇数米先のGパ
チンコ店前道路上において、Eが被害者を追い越しその前面に立ち塞がり、突如手
挙で同人の顔を二回位殴りつけ、片手で被害者の手にした手提鞄に手をかけ奪おう
としとられまいとする被害者と引つ張り合つたこと、被告人とAとはEのすぐ後方
を追尾して来て、Eが右のごとく被害者を殴打し手提鞄を奪おうとしているのを認
めたが、被告人は被害者の側に位置し、Aはその後方に位置し、Aにおいて、手拳
等で被害者の後頭部を二回位、背部を二、三回位強打し、さらに後方から手提鞄を
持つた被害者の左手を捉えてねじ上げたこと、Eがねじ上げられた被害者の手から
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手提鞄をもぎとつたこと、その間、被告人は被害者の傍にいて勢威をそえていたこ
と、以上の各事実が認められ、これに被告人及びA、Eの各検察官に対する供述調
書を参照すれば、被告人はAとともに、Eが被害者を殴打して同人から手提鞄を奪
おうとしているのを認めた後に、Eと共同して被害者を殴打等しその反抗を抑圧し
て手提鞄を奪う意思を暗黙にEと連絡し、右のごとく、被害者に対し暴行を加え手
提鞄を強奪したと認められ、その際、Aか被害者に対し頭頂部打撲傷を与えたこと
も証拠上明らかであるから、被告人は被害者に対する強盗致傷の罪につき共謀共同
正犯の責を免れ得ないものというべきである。ただ、第一審判決は本件犯行に際し、
被害者が蒙つた傷害中左眼瞼部腫脹の傷害をも被告人ら三名による共謀に基づく強
盗に際しての傷害として認定しているのてあるが、右傷害にはE及び被告人ら間に
被害者に対する強盗の共謀が成立する以前において、Eが強盗の意思なく被害者を
殴打して手提鞄を奪う意思で被害者を殴打した際、生じたものであることが証拠上
認められるから、第一審判決は、この点において判決に影響を及ぼすこと明らかな
事実誤認を犯したものであると。
これによると、原判決は、本件強盗致傷の事実につき、被告人は、E、Aとの本
来の共同正犯としてではなく(被告人はEが被害者の手から手提鞄をもぎとるまで
の間被害者の傍にいて勢威をそえていたとの原判示も、強盗の実行々為に加担した
事実を認めた趣旨ではないと解せられる。)、共謀共同正犯としての責を負うべき
であり、しかもその共謀が成立した時期は、Eが当初被害者を殴打した際或いはそ
れ以前ではなく、被告人がAと共に現場に到着し、Aにおいて被害者の後頭部、背
部を強打し始めたとき以後であると認定したものであることが窺われるのであるが、
原判決の引用挙示する証拠を仔細に検討してみても、Eとの間において幇助犯の成
立することは格別、原判決認定のごとき共謀の事実、すなわち、被告人がA、Eと
の間に本件被害者に対する強盗乃至強盗致傷の犯罪を行うため、両名の行為を自己
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の行為の一部分として利用し、また自己の行為を両名の行為の一部分として利用せ
しめることを内容とする謀議をなしたとの事実は到底認めることはできないのであ
る。結局、原判決には証拠によらないで事実を認定した理由不備乃至は事実誤認の
違法があるに帰し、右違法は判決に影響を及ぼすものというべく、これを破棄しな
ければ著しく正義に反するものと認められる。
よつて、各論旨に対して判断するまでもなく、刑訴四一一条一号三号、四一三条
本文に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官 村上朝一公判出席
昭和三七年七月二七日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 池 田 克
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
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