大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)1283 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人高木健助の上告理由について。

隠れたる取立委任裏書の場合には、手形上の権利は通常の裏書におけると同様裏

書人から被裏書人に移転し、取立委任の合意は単に当事者間の人的抗弁事由となる

に止まるものと解すべきこと、所論のとおりである。�

しかしながら、原判決が確定した事実によれば、Dは、満期における支払の拒絶

後、本件手形の返還を受けたというにあるところ、手形上の権利が裏書により一旦

被裏書人に移転した場合でも、その後裏書人が被裏書人から当該手形の返還を受け

たときは、さきの裏書を抹消すると否とにかかわらず、裏書人は再び手形上の権利

を取得するものと解するのが相当であるから、Dから裏書譲渡を受けた被上告人は、

現に本件手形の権利者たる地位にあるものというべきである。

もつとも、DからE銀行に対する裏書が本件手形上に残存する以上、被上告人は

たとえ実質的権利を有しかつ手形を所持していても、裏書の連続を欠くため、本件

手形上の権利につきいわゆる形式的資格あるものとすることはできない。しかし、実

質的権利者が形式的資格を具備しない場合であつても、債務者に対し進んでその権

利を証明するときは、その権利の行使はもとより適法であつて、債務者は、請求者

が資格を欠くことを理由として支払を拒否することは許されないものと解すべきで

ある(昭和三一年二月七日第三小法廷判決、集一〇巻二号二七頁参照)。

しからば、被上告人が本件手形につき実質的権利を有すること前記のとおりであ

る本件において、振出人たる上告人に対し手形金の支払を求める被上告人の本訴請

求の理由のあることは明らかである。原判決には上記の判断と相反する説示もみら

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れるけれども、被上告人の本訴請求を認容したその終局の判断においては正当であ

るから、これを非難する論旨は、結局理由なく、採用しえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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