大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)1323 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人西田敬介の上告理由第一点について。

所論は、原審の認定した事実から、本件乳牛の売買が上告人・被告人との間に成立

したものと認定したのは経験則に違反するという。しかし、原審判決が適法に認定

したところによると、本件乳牛はもと訴外Dの所有に属し、同人は昭和二九年一月

上告人に対し、その売却の意向のあることを告げ、価格については自己の手取額を

金一七万円ないし一七万五〇〇〇円とし、上告人が之を他に転売して差額を取得す

ることと合意し、その結果上告人は同月下旬被上告人に購入をすすめ、同人をD方

に伴つて乳牛を見せ、現在妊娠中で同年三月下旬に分娩の見込であり、分娩後は一

日一斗四、五升あて搾乳できる旨を告げたこと、そのあと上告人は一たん被上告人

とともに引き揚げたうえ、二度にわたり単独でD方に赴き代金減額の交渉をしたす

えDの言い値で買い取ることとし、手付金二〇〇〇円を渡して牛を引き取り之を被

上告人に引き渡して代金一八万二〇〇〇円を受け取つたのであつて、Dに対する残

代金の支払も上告人がなしたこと、ならびに売主Dとしては上告人が買手を連れて

来ない場合にも上告人に売却することを約したわけではなかつたが、上告人が買主

として連れて来た被上告人との間には、なんら値段その他売買の交渉をしたわけで

はなく、Dが被上告人の氏名を知つたのも売却後二週間を経た後のことであり、D

の売値を知つている者も上告人のみであつたことというのであり、右認定事実から、

原審が、上告人が本件乳牛を前記Dから買い受けたうえ、被上告人に売却したと認

定したことは、是認することができ、なんら経験則に違反するものではない。経験

則違反を主張する所論は、採用しがたい。

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同第二点および第三点について。

買主が売買契約の解除にもとづいて代金の返還を求める訴において、売主がたん

に売買の事実を否認し原告の請求を棄却する旨の判決を求めるにすぎないときには、

たとえ、みぎ売買契約の解除の事実が認められ代金の返還債務が買主のさきに受領

した目的物の返還債務と同時履行の関係にあるものと認められたとしても、買主に

おいてみぎ代金の返還と目的物の返還と引換給付すべき旨のいわゆる同時履行の抗

弁を提出しないかぎり、裁判所は、進んで引換給付の判決をすべきものではなく、

また、みぎ同時履行の抗弁の提出を促すべく釈明をする義務を負うものではない(

最高裁判所第一小法廷判決昭和二七年一一月二七日民集六巻一〇号一〇六二頁参照)。

それゆえ、所論は、独自の見解であつて、採用しがたい。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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