大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)1479 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人北山六郎の上告理由について。

原判決は、「控訴人(上告人)は、賃借人Dから本件家屋の賃借権を譲受けた当

時、右DからEを本件家屋の管理人として紹介され、控訴人は賃借権の譲渡につい

ては家主は知つているかと問い、右Eから予め家主の承諾を得ている旨聞知し、こ

れを信じて本件家屋に居住するに至つたことが認められ、かつ借家管理人には賃借

権の譲渡転貸の承諾をなす権限のないのが通例とする事実を合せ考えると、控訴人

においては右Eの承諾を与えた当初から同人には独断で賃借権譲渡の承諾をする権

限のないことを知つていたものと推認すべきである。」旨判示した。しかしながら、

賃借権の譲受人が借家管理人に対し判示のような質問をしたからといつて、直ちに

借家管理人に承諾をする権限のないことを知つていたものと推認すべきものである

とは断じ難く、むしろ、管理人にかかる権限があると信じている場合でも、その権

限につき念を押したものと認めるのが相当であることもあり、しかも本件において

控訴人は借家管理人より前示の如く家主から予め承諾を得ている旨の返答をえたと

いうのであるから、賃借権譲受人たる控訴人としては借家管理人にその権限がある

ものと信じたものとみるのが相当であり、反対にその無権限を知つていたとするこ

とは、一般の借家管理人の権限に関する判示の事情に照してもなお早計であるとい

わねばならない。そうすると、前示の事実関係だけから直ちに控訴人においてEが

被控訴人を代理して賃借権譲渡の承諾をなす権限を有しないことを知つていたもの

と断定した原判決は、経験法則の適用を誤つて事実を認定した違法があるものとし

て破棄を免れない。本件は、なお控訴人においてEが賃借権譲渡の承諾をなす代理

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権を有するものと信じたかどうかおよびそのように信ずるについて正当の事由があ

るかどうかについて審理判断する必要があるから、本件を原審に差戻すべきである。

よつて、その余の論点に対する判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員

一致の意見で主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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