大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)234 判決

主 文

原判決中上告人に抵当権設定登記の抹消登記手続を命じた部分を破棄す

る。

右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人安藤信一郎の上告理由について。

登記が有効であるためには登記の記載に符合した実体法上の権利関係が存在しな

ければならないが、登記の記載が実体関係と厳密に一致しない場合でも、登記の記

載と実体関係との間に同一性が認められるときは、なお有効であり、右登記の抹消

を請求することは許されない。これを本件についてみると、抵当権設定者および被

担保債権の内容につき本件登記の記載と実体関係との間に存する原判示の程度の不

一致をもつてしては、いまだ両者の同一性あることを否定するに足りないから、右

同一性がないという理由で被上告人らの本件抵当権設定登記抹消請求を認容すべき

ものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤つたものであり、該違法は後述する

原判決のかしとあいまつて、判決に影響を及ぼすこと明らかといわなければならな

い。

次に、抵当権の目的物件について、原審の判示によれば、上告人の被上告人Bに

対する六万円の貸金債権を担保するため本件(一)建物に抵当権を設定するにつき

両者の合意をみたというのであるが、甲第一四号証(固定資産課税台帳登録説明申

請書)の記載、証人Dの供述(記録一一五丁・二二一丁・二二四丁)など本件(二)

(三)建物が(一)建物の付属とされ従物であるかのごとく窺われる証拠がないわ

けではなく、しかも、抵当権設定の合意にあたつて本件(二)(三)建物を除外す

る旨の別段の意思表示をしたとの点は原判決の明示しないところであるから、民法

八七条二項の規定により、本件(一)建物に対する抵当権設定の合意は(二)(三)

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の建物についてもその効力を生じたるやも計り難いにかかわらず、原審は、本件(

二)(三)建物が前示従物であるかどうかの点につき、なんら、考慮を廻らした形

跡なく、本件(一)建物のみが抵当権の目的物であると断じ、この前提に立つて登

記の記載と実体関係との間に同一性がないとの理由のもとに本件抵当権設定登記の

抹消請求を認容したことは、前示前提判断において審理不尽・理由不備の違法ある

ものといわなければならない。�

のみならず、登記の記載と実体関係との間に同一性が認められないからといつて、

常に、該登記の抹消請求を認容することが適法となる筋合いのものではなく、本件

において、仮りに抵当権が設定されたのが本件(一)建物のみであり、したがつて、

右建物を主たる建物、本件(二)(三)建物を付属建物とし、これらを一体として

目的物と表示する抵当権設定登記の記載と実体関係との間に同一性を肯認すること

ができないとしても、本件(一)建物に対する抵当権設定の事実が厳存する以上、

抵当権設定登記は、本件(一)建物を目的物と表示する部分おいては一部実体関係

に符合しているわけであるから、本件(二)(三)建物を目的物と表示する部分に

おいて実体関係に符合しないからといつて、右抵当権設定登記の全部の抹消を求め

ることは、許されないものといわなければならない。しかして、このような場合、

実体関係に符合しない登記部分のみの抹消登記が許されないとすれば、原審におい

て、被上告人らが本件抵当権設定登記全部の抹消を求める請求に代えて、前示不一

致部分の是正を目的とする別途の登記請求を主張する意思がないかどうか、もし意

思があるとすればいかなる内容の請求をするかの諸点につき、趣意を釈明すること

は、本件請求の審理範囲に属することとしてもとより許されるところであり、むし

ろ、事実審裁判所として当然とるべき措置というべきである。しかるに、原審が、

一方において本件(一)建物が抵当権の目的物と合意された事実を確定しながら、

右建物を目的物として包含する本件抵当権設定登記全部の抹消を求める本件請求を

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全面的に認容すべきものと判断したことは、法令の解釈適用を誤り、延いて、審理

不尽、理由そごの違法を蔵するものといわなければならない。�

叙上いずれの点よりしても、論旨は結局理由あり、したがつて、原判決中上告人

に対し本件抵当権設定登記の抹消を命じた部分は破棄すべきものである。よつて、

民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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