大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)681 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人岩崎光衛の上告理由第一点について。

論旨は、本件手形は上告人が訴外Dに対して砂利・砂の買入代金債務を負担して

いたので、その支払方法として振り出したものであり手形受取人を右Dとすべかり

しを誤つて被上告人宛振り出したるものであるから、振出につき要素の錯誤がある

と言うにある。しかし、上告人が本件手形を被上告人を受取人として振り出す意思

をもつて被上告人宛に振り出したるものであることは原判決の認める処であり、そ

の主張する所謂錯誤は縁由の錯誤にすぎない。原判決がこれを採用しなかつたこと

に違法は認められない。

同第二点について。

原審は、上告人がDに対し支払つたと主張する九、○○○円が本件手形金債務の

支払となるべき特段の事情につき立証がないとしたのであり、原審の証拠関係に照

らせば、右認定は是認できる。所論は、原審が適法にした証拠の取捨判断ないし事

実認定を非難するものであり、採用できない。

同第三点について。

原審は、被上告人が本件手形に白地式裏書をしたまま、これを訴外E自動車株式

会社に交付したが、その後手形金を支払つて手形を右会社から取り戻した旨の事実

を認定したのであり、右事実関係のもとにおいては、被上告人が現に本件手形上の

権利者であるとした原審の判断は、当裁判所も正当としてこれを是認する。被上告

人が手形上の権利を再取得するには戻裏書の方法にのみよるべきであるとの前提に

立つ所論は失当である。また、所論中裏書の連続を云為する部分は、たとえ、被上

- 1 -

告人のした白地式裏書が抹消されずに残つている関係で、被上告人が本件手形上の

権利につきいわゆる形式的資格あるものとすることができないとしても、前叙のと

おり実質的権利が証明された以上、その権利行使はもとより適法であり、上告人は

被上告人が形式的資格を欠くことを理由として履行を拒否することはできないので

あるから(昭和三一年二月七日第三小法廷判決、民集一〇巻二七頁参照)、これま

た採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判長裁判官藤田八郎は出張につき署名押印することができない。

裁判官 池 田 克

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!