大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)951 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由第一点について。

所論は、原審が破産者D商事株式会社(以下破産会社と略称する。)から被上告

人B1産業株式会社に枇杷・洋梨缶詰を引き渡した時期を昭和二六年三、四月頃と

したのは、当事者の主張しない事実を不法に認定したものであるというが、右認定

は、右缶詰引渡時期が昭和二六年一一月一八日であるとの上告人の主張に答え、こ

れを積極的に否定する意味で引渡時期を明らかにしたものというべきであるから、

主張しない事実を認定したものというにはあたらない。

次に所論は・原審が昭和二六年三、四月頃破産会社から被上告人B1産業株式会

社に引き渡されたものと認定した枇杷・洋梨缶詰は、上告人主張の枇杷・洋梨缶詰

とは全然別個のものであり、即ち原審は上告人主張の物件と無関係の物件につき判

断し、上告人主張の物件につき判断を遺脱した違法があるという。しかし、原判決

によれば、原審は上告人主張の枇杷・洋梨缶詰についてその引渡時期を昭和二六年

三、四月頃と認定しているのであり、所論は結局、原審の事実認定・証拠の取捨判

断を非難するものに帰する。

次に所論は、被上告人B1産業株式会社が破産会社から枇杷・洋梨缶詰の引渡を

受けた時期を昭和二六年三、四月頃とした原審の認定には、主張と証拠に基づかな

い違法があるという。しかし、右認定は同被上告人への右物件引渡時期が昭和二六

年一一月一八日であつたとの主張に対するものであること前記説示のとおりであり、

原判決挙示の証拠によれば、右認定は首肯できる。

更に所論は、原判決挙示の甲第一号証の一、二、同第二号証の一ないし五および

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証人Eの証言によると、原判決認定の事実とは別個の事実を認定し得べく、上告人

主張の物件は支払停止当時破産会社の手中に存したことが明らかであり、従つて右

物件が昭和二六年三、四月頃被上告人B1産業株式会社に引き渡されたと認定する

余地は全くない筈であるという。しかし、右証拠の外原判決挙示の各証拠を綜合す

れば、判示認定は首肯するに足り、所論は結局、原審の事実認定・証拠の取捨判断

を非難するものに過ぎない。

以上所論はいずれも採用できない。

同第二点について。

所論は、原審は、甲第一号証の二の記載事項につき、これをすべて昭和二六年一

一月一七日以前の発生事実を右同日に記載したものと認定したが、証人F、同Gお

よび同Eの各証言に照し、又同号証と甲第二号証の一ないし五との関係を精査すれ

ば、右甲第一号証の二の記載が昭和二六年一一月一七日現在の財産関係を記載した

ものであることが明白に認定できる筈であり、従つて原審は審理不尽理由不備の違

法があるという。しかし、原判決挙示の証拠によれば、所論原判示は首肯するに足

り、所論は結局、原審の事実認定・証拠の取捨判断を非難するに帰し採用できない。

同第三点について。

所論は、破産会社が支払を停止したのは昭和二六年一一月一七日であり、破産会

社が被上告人B1産業株式会社にマーマレード缶詰を引き渡したのはその前日の同

年同月一六日であつて、かかる支払停止直前に特定債権者に担保を供することが他

の一般債権者を害することとなるのは、経験則上当然の事理であり、破産会社の害

意は当然に推定されるから、上告人において害意の立証責任はないというべきであ

るのに、原審が上告人に対して破産会社の害意につき立証責任を負担せしめ、その

立証なしとして上告人の請求を棄却したのは、経験則に違反し、挙証責任の原則を

誤つた違法があるという。しかし、上告人の本訴請求は破産法七二条一号による否

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認権の行使に基づくものであるから、破産者の行為が支払停止の時期の前後如何を

問わず、破産者の詐害の意思の存在を立証すべき責任を負つているのであつて、右

行為が支払停止の直前であつたことは破産者の詐害の意思の存在を立証すべき有力

な間接事実ではあるが、右事実の存在のみを以て破産者の詐害の意思の存在を立証

し得たものとなすことはできず、結局所論は、独自の見解に基づき原審の判断を非

難するものに過ぎないから採用できない。

同第四点について。

所論は、被上告人B2商店が破産会社から搬出した商品を他に寄託後売却処分し

その代金を取得したことがあるようであるが、そのことから破産会社に詐害の意思

があつたものと認めるのは困難であるとした原審の判断は、詐害の意思の認定につ

き破産法七二条一号の解釈適用を誤つたものであるという。しかし、右商品の搬出

承諾につき破産会社に詐害の意思がなかつたことは原審の確定するところである以

上、その後右商品を搬出した被上告人B2商店においてこれを処分した事実があつ

ても、これを以て破産会社に詐害の意思があるものとはなし得ないとの原審の判断

は、首肯し得べく、その他所論は、結局独自の見解に基づき原審の判断を非難する

に帰するから、採用できない。

同第五点について。

所論は、原審が上告人の主張した被上告人らの処分行為の否認につき判断を遺脱

した違法があるという。しかし、破産会社から詐害の意思なくして取得した商品に

ついて、被上告人らのなしたその後の処分行為は、否認権行使の対象となるべきも

のではないから、所論の点につき原審が判断を加えなかつたとしても、違法を以て

論ずるにはあたらない。所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

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最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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