最高裁判所第二小法廷 昭和36(あ)1198 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人Aの弁護人小松不二雄の上告趣意第一点について。
所論は、要するに、本件貨物につき無為替輸入の承認がなされていることを前提
として、右承認が仮装により得られたものであるとしても、その取消がなされてい
ない以上、その代金の決済が円貨で居住者間においてなされる本件の如き場合には、
外国為替及び外国貿易管理法二八条七〇条外国為替管理令一一条の適用がないもの
であると解すべきであるにかかわらず原判決がその適用ありとしたのは、憲法二九
条に違反するというに帰着する。
しかしながら、原判決の認定するところによれば、本件貨物につきなされた輸入
の承認は、輸入貿易管理令八条一項一号所定の承認であつて、同条同項一号の二所
定の承認でないことが明らかである。してみれば、所論の無為替輸入の承認とは、
同条一項一号の承認を指称することに帰するが、同号所定の承認の有無、その効力
の如何にかかわらず、同条一項一号の二所定の承認が存しない限り、本件の如き代
金決済が外国為替及び外国貿易管理法二八条等の支払管理の対象から除外されない
ことはその規定の文言自体に照らして明らかであるから、所論は主張の前提に関す
る法令解釈を誤解するものとして、採用することができない。
同第二点について。
所論は、原判決が被告人の公平な裁判を受ける権利を侵害したとして、憲法三七
条違反を主張するが、憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは偏頗
不公平のおそれのない組織と構成と権威による裁判を意味するものであつて、所論
の如き場合を指称するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第四
八号同二三年五月二六日大法廷判決、集二巻五号五一一頁)とするところであるか
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ら、論旨は理由がない。論旨その余の主張は、、事実誤認、単なる法令の解釈適用、
単なる訴訟手続に対する論難であつて、上告適法の理由に当らない。(なお、所論
の一については、記録によれば、本件においてはBの知情の有無にかかわらず、同
人を本件支払の受領者としての地位を有する者と認めるのを相当とするから、本件
の支払につき、いわゆる共犯者間の金銭の授受と目し得ない旨の原判断は、その結
論において正当として是認できる。また、所論の二については、刑訴法四〇二条に
いう「原判決より重い刑を言い渡す」とは、判決主文における科刑を原判決にくら
べて重くすることを意味するのであるから、原判決が本件支払額を第一審判決より
少く認定しながら、同判決と同一の刑を言い渡したことは、何ら同条に違反するも
のではない。)
同第三点について。
所論の一は、外国為替及び外国貿易管理法二八条にいう[外国に在る財産」の意
義を争い、同条所定の支払時における不特定物はこれに当らないと主張し、所論の
二は、原判決には同条にいわゆる「代償支払」の解釈を誤り、これを「関連支払」
と同一意義に解した違法があり、その結果理由不備の違法を来し判例に違反すると
主張する。
所論のうち、判例違反をいう点は、原判決が何ら所論の点に関する法令解釈を示
していないことが明らかであるから、論旨は、その前提において失当であり、その
余の主張は、単なる法令違反をいうものであつて、以上すべて適法な上告理由に当
らない。(なお、所論の一については、「本件の場合は、右支払当時貨物は特定し
ていたと認められるばかりか、外国為替及び外国貿易管理法二八条にいう外国にあ
る財産は特定し得るものであれば足り、必ずしも支払時において特定していること
を要しない」旨の原判断は正当である。所論の二については、同条にいわゆる関連
支払の禁止は、代償支払禁止の補完的規定であるから、外国にある財産取得の過程
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が証拠上不明である原認定の如き事実関係につき原判決が、関連支払を以て問擬し
た措置は、正当であつて、所論の如き違法は存しないものというべきである。)
被告人Cの弁護人辻市衛門の上告趣意について。
所論は、単なる訴訟法違反と事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当らな
い。
被告人Dの弁護人内田仙次の上告趣意について。
所論は、単なる訴訟法違反と事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理
由に当らない。(なお、第一審判決の本件パインジユース一五〇〇ケースの原価は
金三七二万円である旨の認定は正当である。)
また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和四〇年一一月二六日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
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