大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和36(し)54 決定

主 文

本件特別抗告を棄却する。

理 由

本件申立の趣意は、別紙特別抗告申立書と題する書面記載の通りである。

論旨は判例違反をいうが、原決定は所論の如く被疑者等に証拠隠滅の虞が全くな

いといえないという判断をしていないのであるから、論旨は前提を欠きとるをえな

いものである。

よつて刑訴四三四条、四二六条一項により主文の通り決定する。

この決定は、裁判官池田克の少数意見があるほか裁判官全員一致の意見によるも

のである。

裁判官池田克の少数意見は、次のとおりである。

被疑者A外八名に対する地方公務員法違反被疑事件につき、原裁判所が昭和三六

年一二月一二日にした準抗告棄却決定は、特別抗告申立書の解釈するが如き判断を

しているものとはいえず、従つて多数意見が同申立書の判例違反の主張をもつて、

その前提を欠き採るを得ないとすることに、異存はない。ただし、本件の如き特別

抗告についても、刑訴四一一条の準用があると解されるので、職権をもつて調査す

ることとする。

問題の所在は、本件に即していうと、被疑者等が刑訴六〇条一項二号の規定する

「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」に当るかどうかを判断す

る基準如何にある。

思うに、法文が勾留の理由として単に被疑者が罪証を隠滅する疑あるときとしな

いで、特にこれを疑うに足りる相当な理由があるときと規定していることに鑑みる

と、被疑者を目するに自己の罪証の隠滅を図るのが常であるとし、あるいは少くと

もそのことが推定されている者であるとする立場から、いやしくも罪証隠滅のおそ

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れがないとはいえないときは、すなわち罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由

があるときに当るとするが如きは、法意にそわない解釈であつて、私の採らないと

ころである。そして事は、人権と捜査との相関するところであり、いわゆる「相当

な理由」があるかどうかは、法律評価の問題であつてみると、その判断の基準は、

解釈上解明されなければならないところであつて、裁判所は「法に定める勾留の理

由が存在することを認めるべき資料」(刑訴規則一四八条一項三号)として検祭官

から提供された一件記録等の資料を基礎として検討を加え、それらの資料に示され

又はそれらの資料を通じて窺われる事情の下では、罪証を隠滅する事態を生ずる蓋

然性があると予測されるかどうかに、右判断の基準を求めるべきである。これが私

の解釈である。

そこで以上の解釈を念頭におきながら、本件被疑者等につき右の「相当な理由」

の存否を一件記録等の資料について検討すると、被疑者等が本件地方公務員法違反

の罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合に当ることは、原決定の認

めているところであり、検察官の提供にかかる基礎資料によれば、本件事案の性質、

態様並びに被疑者等がいずれも岩手県教員組合本部役員たるの地位にあること等か

ら、なお、相当の捜査をなすべき余地を存し、特に共謀の成立事情等について一層

明確にすることが必要と考えられるところ、これらの点についての捜査の状況と、

被疑者等の地位、組合内における統制力並びに被疑者等の捜査機関に対する供述態

度等その他諸般の事情を考えあわせると、本件勾留請求を却下して被疑者等を釈放

のままに放置すると、他の共謀者との通謀、或は参考人等を圧迫すること等により、

罪証を隠滅する事態を生ずる蓋然性があると予測されるところであるから、被疑者

等は、まさに法の定める勾留の要件を充足するものといわなければならない。

しかるに、原決定は、刑訴六〇条一項二号の定める勾留の要件たるいわゆる「相

当な理由」につき判断の基準を示さず、且つ、事実を誤認し、ただ、漫然被疑者等

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が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるものとは認められないとして、

本件勾留請求を却下しているのであつて、取消を免がれないものと思料する。

昭和三七年一月二六日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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