大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和36(オ)1022 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人指定代理人古藤保正、同志賀光雄、上告人補助参加人代理人竹内俊平の上

告理由第一点について。

論旨は、原審が本件土地は「昭和二三年本件買収処分当時には、その水深は潮の

干満により約二尺程度の差が認められるが満潮時において約四尺乃至五尺程度を示

し、葦簇生し、魚類さえ游泳棲息する全域池沼の様相を呈していた」との第一審判

決の事実認定をそのまま是認引用したとなし、そのことを前提として、本件買収処

分当時における本件土地の状況に関する原審の事実認定に採証法則違反ないし実験

則違反の違法があるという。

しかし、右摘示にかかる第一審判決の事実認定部分は、原審において、「補助参

加人Cが本件買収処分当時本件土地の一部を埋め立て農耕した」と判示したことに

より、その限度で訂正されていることは、判文上明らかであるから、原判決には所

論の違法はなく、論旨は、その前提を欠くに帰し、採用し得ない。

また、論旨は原判決が本件土地を非農地と認定したことが、自作農創設特別措置

法三条の規定の解釈を誤まつたものであるというが、右論旨は、原判示に副わない

事実に基づくか、本件買収処分後に生じた事情を基礎として右の違法をいうもので

あつて、採用の限りでない。

同第二点について。

論旨は、原判決が本件土地は非農地であるにかかわらず、これを農地と誤認して

なした本件買収処分の瑕疵は重大かつ明白であると判断したことに法令違背の違法

があるという。

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しかし、原審が本件買収処分成立当時の事情に基づき、右処分にはその成立当初

から重大かつ明白な瑕疵があつたと判断していることは、原判決およびその是認引

用する第一審判決の記載に照らして明らかであつて、所論判例に違反する違法はな

い。また、原判決の確定した事実によれば、本件土地は昭和九年頃から補助参加人

において賃借り耕作してきたが、もともと海に近く、また炭鉱地帯にあるため、昭

和一一年頃から石炭採掘の影響で、その一部の地盤が沈下或いは傾斜して海水が湧

出するようになり、殊に昭和一七年の台風で附近の堤防が決潰し、近隣一帯の土地

とともに海潮の浸入を受けて水没し、爾来畦畔の他は僅か一地域を除き、海水を冠

つたまま排水もされないで放置されていたばかりか、地盤沈下による浸水の度合も

次第に激しくなり、昭和二三年本件買収処分当時には、全地域にわたり池沼の様相

を呈していた。もつとも、当時その一部で、補助参加人が耕作していたことはあつ

たが、それは同人において埋立工事をしたことによるものであり、その耕作も翌二

四年にいたり断念せざるを得なかつた程である、というのである。しからば、かよ

うな事情の下において、原審が、農地でないことの客観的に明白である本件土地を

農地と誤認してなした本件買収処分の違法は重大かつ明白であると判断したことは、

正当であつて、是認することができる。

論旨は、原判決を正解しないでその違法をいうか、原審の専権に属する事実の認

定、証拠の取捨選択を非難するに過ぎないものであつて、採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

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