最高裁判所第二小法廷 昭和36(オ)1050 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人松岡松平、同大庭登の上告理由第一点について。
原判決は、その判文上明らかなとおり、上告人の所論不法行為の結果、被上告人
は左耳が遠くなり、また現在でも時々腰がひどく痛み肉体的精神的に非常な苦痛を
感ずる状態にあることを認めているのであるから、右不法行為と傷害苦痛との間に
因果関係の認定のないことをいう所論は当らず、右因果関係のないことをいう所論
は、原審の専権たる事実認定の非難にすぎず採用できない。
又所論「左耳が遠くなり」「時々腰痛がある」との事実について、被上告人が原
審で主張しなかつたことは、所論のとおりであるが、原判示の如き上告人の不法行
為による肉体的精神的苦痛に対する被上告人の慰籍料請求を理由あらしめる事実と
して、当事者の主張のない右所論事実関係の認定が許されない理はなく、右の点に
関し原判決に理由そごは存しない。よつて所論は、すべて採用できない。�
同第二点について。
原判決が挙示の証拠関係によつて認定した諸般の事情を斟酌して慰籍料額を二〇
万円と判定したことは首肯できる。控訴判決が第一審判定の慰籍料額以上の額を相
当と判定をするには、控訴審においてさらに特段の事情ないし新たなる事実の主張
並びに立証がなければならないとする所論は、独自の見解を述べるにすぎず採用の
限りでない。
同論点の四は、原審認定にそわない事実を掲げて原判決を非難するに帰着し採用
できない。
以上要するに、原判決には所論のような理由不備はなく、所論はすべて採用でき
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ない。
同第三点について。
所論は、原判決の経験則違反、採証法則違反をいうが、原判決には所論違法は存
しない。所論の実質は、原審の適法になした事実の認定、証拠の取捨判断につき異
を唱えるにすぎず採用できない。
同第四点について。
原判決が本件慰籍料の額を二〇万円と判定したことの首肯できることは前示のと
おりであり、その間に社会通念違反は存しない。この点に民法七一〇条違背がある
との所論は独自の見解を述べるにすぎないし、所論挙示の判例はすべて本件に適切
でないから、所論は採用できない。
同第五点について。
論旨は、原判決が二つの主文を掲げているとして民訴法一九一条の違反をいうが、
原判決二丁七行目の「主文」は「事実」の誤記と認められ、原判決に所論違法は存
しないから該論旨は採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
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