大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和36(オ)323 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人酒井信雄の上告理由について。

所論は、原判決が上告人の賃料として供託した金員を被上告人が受領したことを

認定しながら、右受領の趣旨は損害金としてであつたと判断して、被上告人が本件

家屋につき賃貸借契約解除の意思表示を撤回したとの上告人の主張を排斥したのは、

民法四九四条の解釈を誤まつたものであるという。

被上告人が昭和三〇年六月二九日上告人においてさきに本件家屋の賃料として供

託した金員を受領したことは原判決の確定するところである。しかし、被上告人は

昭和二六年上告人に対して賃料不払を理由に賃貸借契約を解除して本件家屋の明渡

を求める本訴を提起し、敗訴の一審判決を受けたが、控訴した上、原審において予

備的に、上告人が本件家屋を他に無断転貸したことを理由として昭和三〇年五月一

八日賃貸借契約を解除したと主張して本件家屋の明渡を求めたところ、原審は賃料

不払による契約解除を認めなかつたが、右無断転貸による契約解除を認めているの

である。従つて、原判決によれば、上告人および被上告人間の本件家屋賃貸借は右

契約解除のなされるまでは有効に存続していたわけであるから、前記供託金中右賃

借期間の賃料として供託された分につき被上告人においてこれを受領しうるのは、

もとより当然というべきであつて、右受領の事実をとらえて右契約解除の効果を云

為するにはあたらない。さらに、右契約解除の翌日である昭和三〇年五月一九日以

降の賃料として供託された金員の受領については、被上告人において右受領により

本件家屋の賃貸借の解除の効果を消滅せしめもしくはそのときに新たな賃貸借契約

を締結したものと認めるべき特別の事情でもあれば格別であるが、そのような事情

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は認められないばかりか、却つて、被上告人は前記のとおり右供託金受領の前後を

通じて本件賃貸借契約が解除されたことを主張して上告人に対し本件家屋の明渡を

求める本訴を維持しているのであるから、被上告人において本件家屋賃貸の対価と

して右供託金を受領する趣旨であつたとは到底解し得ないところであり、このよう

な事情に照せば、被上告人が右供託金を本件賃貸借契約解除後の損害金の趣旨で受

領したものとの原審の判断は、首肯するに足りるところである。従つて被上告人が

右供託金の受領により本件賃貸借契約解除の意思表示を撤回したとの上告人の主張

を排斥した原判決には、所論の違法はなく、論旨は採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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