最高裁判所第二小法廷 昭和37(オ)1432 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人中村達の上告理由第一点について。
原判決が引用する第一審判決挙示の証拠によれば、被上告人を売主とする本件宅
地建物の買主は訴外Dである旨の認定は是認できる。しかして、原審が右認定にあ
たり、(1)本件登記申請の登記原因を証する書面として提出された売渡証(乙第
一号証)、(2)被上告人の実母訴外E名義の受領書(乙第二号証)は、いずれも
右認定を左右するに足る資料とし難いとし、また、甲第四号証(契約書)を右認定
の資料として採用すべきものとした判断も、また、首肯できる。叙上証拠の取捨判
断、事実の認定の過程に所論のような違法があるものとは認められない。所論は、
畢竟、証拠の取捨判断ならびに事実認定に関する原審の専権行使を非難するもので
しかなく、採用に値しない。
同第二点について。
(1)について。
原判決が引用する第一審判決挙示の証拠によれば、Dが本件宅地建物の代金のう
ち八万円の支払に宛てるため、該金員を上告人の夫訴外Fから借り受けた旨の認定
は是認できる。所論は、原審の専権に属する事実の認定を非難するものであり、採
用できない。
(2)について。
原判決の確定したところによれば、上告人は、単に、同人の夫が本件宅地建物の
買主たるDに対し、売買代金の支払に宛てるべき金員を貸与した立場にあるにすぎ
ない者であり、上告人自ら本件宅地建物を買い受けたのではないのに、勝手に、本
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件宅地建物につき自己名義に所有権取得登記を経由してしまつたというのであるか
ら、被上告人に対し右登記の抹消登記手続をなすべき義務があることは明白であり、
これと同趣旨に出でた原判決の判断はもとより正当である。しかして、上告人は被
上告人とD間の判示売買契約から生じた法律効果を基礎として本件宅地建物につき
新らたな権利を取得した者ではないから、前記売買契約の解除によりなんらかの権
利を害される第三者(民法五四五条一項但書参照)には該当しない。これと異なる
見地に立ち、上告人がかかる第三者であることを前提として、前示判断を非難する
所論は採用できない。
同第三点について。
原判決が、主文において、上告人は、本件宅地建物について、被上告人から八万
円の支払を受けると引き換えに、上告人名義の所有権取得登記の抹消登記手続、右
宅地の引渡、建物の明渡をなすべきことを命じだことは所論のとおりである。右判
決は積極的に上告人が八万円の債権を有する旨を肯認したものでこそないが、被上
告人が上告人に八万円を提供しなければ判決に基づく強制執行ができないという制
約を加えているという意味で、なお、上告人に利益な判決ということができる。さ
れば、右引換給付を命じた理由の不当を争つて原判決を非難することは、上告適法
の理由とし難い。�
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
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裁判官 石 田 和 外
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