大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和37(オ)858 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由第一点について。

原判決は、上告人は、訴外Dに対する一五五万円の貸金債務を担保するため、同

訴外人に対し、右債務を弁済期である昭和二九年一〇月二三日差でに完済しないと

きは、その債務の履行に代え、本件第一ないし第三土地の所有権を、県知事の許可

を条件として、同訴外人に譲渡し、それに要する移転登記手続委任状、農地法五条

所定の許可申請書を予め交付しておくこと、許可があつたときは右土地を明け渡す

旨の約定をしたのであるが、上告人が弁済期に債務元本の弁済をしないでいるうち、

Dは、昭和二九年一一月二二日、被上告人に対し、右代物弁済予約付債権を譲渡し、

昭和三元年二月二九日、上告人に対し、右譲渡の通知をし、さらに、同日、被上告

人より代物弁済予約完結の意思表示がなされたものであり、なお被上告人の職業は

医師であり非農家であるとの事実を認定したのである。

右事実関係によれば、上告人とD間においては、債務不履行の場合に代物弁済予

約に基づいて譲渡されるべき本件第一ないし第三土地は、これを農地以外のものに

転用するため権利を移転するとの約旨であつたこと明らかであり、さらに、上告人

は、代物弁済予約上の権利が非農家たる第三者に債権とともに譲渡され、その者に

対し債務を履行しないときは、右土地を農地以外のものに転用するため権利を移転

することを予め承諾していたものであり、被上告人もまたそのような約旨を含むも

のとして右代物弁済予約上の権利の譲渡を受けたものであるというのが原判決の趣

旨であると解される。されば、被上告人において、上告人の債務不履行を理由に代

物弁済予約完結の意思表示をした以上、上告人は、被上告人に完全な権利を取得さ

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せるため、本件第一ないし第三土地を農地以外のものに転用するための権利移転に

対する許可申請手続をする義務を負担するものというべく、このことは、上告人が

Dと被上告人間の代物弁済予約付債権の譲渡につき承諾を与えず、ただ通知を受け

たにすぎないからといつて、理を異にしない。結局叙上と同趣旨に出でた原判決は

正当であつて所論の違法はない。所論は独自の見解に立脚して原判決を非難するも

のであり、採用できない。

同第二点について。

原判決は、被土告人が上告人から本件第一の土地の権利の移転を受けるにつき昭

和三〇年七月五日愛知県知事から受けた農地法五条所定の許可には「本許可は申請

の事業(診療所および病院建築)に着手したときはじめてその効力を生ずるものと

し、許可の日より未着手のまま六ヵ月を経過したときは本許可は無効とする」との

条件が付せられていたところ、右県知事の許可は、上告人において被上告人の権利

を一切否認し、その後昭和三一年本訴提起に及んだような争いのため、被上告人が

事業に着手することができなかつたため失効するにいたつたと解して支障ないから、

上告人としては被上告人に対し依然として知事の許可が得られるよう協力する義務

がある旨認定判示したのである。しかして、原判決が、よるべき証拠を挙示するこ

ともなく、卒然として右のような認定に出でたことは、事案の解明にいささか尽さ

ざるものがあるとの憾を免れないが、上告人が負担する前示許可申請手続協力義務

は、被上告人に対して負担する債務の担保の実現手段として、債務の弁済に代え、

被上告人をして完全に本件土地の所有権を取得させるためにこそ約諾された義務に

ほかならないのであるから、反対に解すべき特段の意思表示が認められない以上、

不履行債務者たる上告人としては、いつたんは自己の協力のもとに県知事の許可が

得られても、右許可が失効してしまつたときは、被上告人とともに再度の許可申請

をなし、もつて被上告人に完全な権利を取得させるための手続に協力しなければな

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らないと解するのが相当であり、このことは、前の許可が所定期間内における事業

未着手の故に失効したことが、単に、被上告人側の事情に帰因するという一事によ

つて、結論を左右するものではないというべきである(もとより、被上告人が、前

の許可の失効を理由に上告人に対し再度の協力を請求することが、権利の濫用もし

くは信義則違背たるを免れないような具体的な事由があれば格別であるが、原審に

おいて、かような点が争われた形迹は認め難いから、当審において取り上げるべき

限りでない。)。されば、前の許可を失効させるにいたつた事情の如何に関する前

示認定上の瑕疵のごときはいまだ原判決を違法ならしめる理由にはあたらないとい

わなければならない。よつて、右認定をとらえ審理不尽理由不備理由そごの違法が

あるとする所論は採用するに由ない。

同第三点について。

原審が確定した事実関係のもとにおいては、本件代物弁済予約を公序良俗に違反

する無効のものとは認められないとした原審の判断は正当である。所論は独自の見

解に立脚して右判断を論難するものであり、採用できない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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