大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和38(あ)856 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人本人の上告趣意について。

所論は事実誤認の主張を出でないものであつて適法な上告理由に当らない。

弁護人秋山秀男の上告趣意第一について。

所論は、被告人は所論証人A外七名の証人尋問につき全然尋問する機会を与えら

れなかつたのであるから、かかる尋問の機会を与えない証人の尋問調書を証拠とし

て有罪の認定をした第一審判決及びこれをそのまま支持した原判決は、憲法三七条

二項に違反するものであるというにある。しかし記録によると、第一審裁判所はそ

の第一回公判期日において右証人等を含む合計一六名の証人を昭和三七年一〇月三

日静岡県磐田郡a村所在磐田警察署において尋問する旨の決定をしたこと、その決

定に基づき同日同警察署において、被告人及び弁護人立会の上、逐次証人の尋問が

行われたが第八番目の証人Bの尋問の際、第一審裁判官は、同証人が被告人の面前

では威迫を受ける虞れがあり証言することがてきないものと認め被告人に退席を命

じたところ、被告人は右Bに対する証人尋問立会権を放棄するとともに、残余の証

人A以下七名に対する証人尋問立会権をも放棄して任意退席したこと、弁護人は証

人全員の尋問に立会つたこと、これらの各証人尋問調書については第一審第二回公

判期日において適法な証拠調が施行され、これに対し被告人及び弁護人から何らの

異議申立もなされなかつたことが明らかである。されば被告人は所論証人A以下七

名の証人について尋問する機会が与えられなかつたということはできないのである

から、所論違憲の主張はその前提を欠くものというべく、所論の実質は単なる訴訟

法違反の主張に帰し(原判決の支持する第一審判決に訴訟法違反のかどは何ら認め

られない)適法な上告理由に当らない。

- 1 -

同第二について。

所論は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて適法な上告理由に当らない。

同第三について。

所論は量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により裁判官全員一致

の意見で主文のとおり決定する。

昭和三八年七月一〇日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!