大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和38(オ)565 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人田万清臣、同三木一徳、同小林劼の上告理由第一点について。

原判決は、被上告人は、訴外Dが被上告人のため代理権なくして訴外Eないしは

同Fから既に受領ずみの昭和二七年九月分および同年一〇月分の本件家屋の賃料に

ついてはこれをやむを得ないものとして右領収を認めたが、同年一一月分以降の賃

料については、訴外Eに対し、信用のおけない訴外Dを介することなく直接被上告

人に現金郵送されたい旨申し入れて、訴外Eもこれを諒承し、同訴外人が同年一一

月分以降の賃料を約定どおり郵送していたことを認定しているのであつて、右認定

事実によれば、訴外Dが信用し難いものとして訴外Eに対する賃料取立から排除さ

れたとの原審の判断は、首肯しうる。論旨は、原審の認定しない事実を主張して、

原審の適法になした事実認定判断を非難するに帰し、採用できない。

同第二点について。

訴外Dが被上告人のため所論(3)ないし(6)記載のとおりの代理権を有して

いたことは、原審の認定しないところである。論旨は、原審の認定しない事実を前

提として、原審の判断を非難するに帰し、採用できない。

同第三点について。

所論は、原判決には民法一一〇条の解釈を誤まり、上告人の表見代理に関する主

張について審理を尽くさない違法があるという。原判決が上告人の表見代理の主張

を排斥するにあたり、訴外Gに対する賃貸借の締結や賃料取立の代理権は訴外E関

係の表見代理の基本代理権にはならない旨判示しているとは、論旨指摘のとおりで

ある。しかし、代理権を有する者のなした権限外の行為がその代理権となんら関係

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のない場合でも、相手方において代理人に権限があると信ずる正当な理由があると

きには民法一一〇条の適用があるものというべきであり、従つて、訴外Dが被上告

人のため訴外Gとの間に法律行為をなす代理権を有するものとすれば、右代理権は

訴外Eに対する関係において表見代理の成否を論ずるにつき基本代理権となりうる

ことは明らかであるが、原判決によれば、本件土地売買契約の当時、訴件Dは被上

告人と訴外Eとの間において信用し難いものとして本件家屋の賃料取立に関与する

ことさえも排除されていたというのであり、その他原審の確定した事実関係に照ら

せば、訴外Eにおいて訴外Dが本件土地売買契約につき被上告人のため代理権あり

と信ずるにつき正当な理由がないとした原審の判断は首肯するに足りる。従つて、

所論表見代理の主張を排斥した原判決は正当に帰し、論旨は結局理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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