大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和38(オ)75 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人植野周助の上告理由について。

所論は、被上告人がその所有株券の裏書人欄に捺印してこれを訴外Dに交付し、

或は右株券と共に自己の印鑑を同訴外人に交付していることが証拠上明らかであり、

このような場合は被上告人において右訴外人に対し右株券の処分を一任したものと

解すべきことが商法二〇五条の規定の解釈上明らかなところであるのに、原審が右

のような事実の存在を看過し、被上告人が訴外Dに対して代理権を授与した事実が

みとめられないと判断し、よつて基本代理権たるべき代理権の存在がみとめられな

い以上上告人の表見代理成立の主張を採用し難いとしてこれを排斥したのは、右法

条の解釈適用を誤つたものであるという。

よつて審案するに、被上告人が訴外Dに対して所有株券を交付するにあたつて所

論のように右株券の裏書人欄に捺印し、もしくは右株券と共に自己の印鑑をも交付

したことは、原審において認定されていないところである。しかし、原審がその挙

示の証拠に基づき確定したところによれば、訴外Dは訴外株式会社E銀行との取引

をするに際し、担保権設定のため被上告人から二回にわたりその所有のF燃料工業

株式会社の株式合計七〇〇〇株を借用したというのであり、担保権設定のため株式

を借用したとの原判決の右判示は、必ずしもその意味するところが明らかではない

が、訴外Dが訴外株式会社E銀行に対して負担する債務の担保に供することを承諾

して被上告人がその所有株式を訴外Dに貸与したという趣旨であれば、訴外Dとし

ては、右株式の譲渡を受ける等その処分権を取得したことの認定されていない本件

においては、被上告人の名において右株式につき担保権を設定することの承諾を得

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たことになるのであり、従つて、他に特段の事情のないかぎり、被上告人において

訴外Dに対して右株式につき担保権設定のための代理権を付与したものではないか

との疑を抱かざるを得ない。然るに、原審が、訴外Dにおいて被上告人からその所

有株式を担保権設定のため借用したことを認定しながら、なんら他に特段の事情を

判示することなく、被上告人が訴外Dに対して右株式に担保を設定するにつき代理

権を授与した事実が認められず、その他右訴外人が被上告人のためなんらかの代理

権を有していたことを認定するに足りないと判示し、結局基本代理権たる代理権の

存在がみとめられない以上表見代理の法理適用の余地がないものと判断したのは、

審理不尽理由不備もしくは理由そごの違法あるものというべく、原判決はこの点に

おいて破棄を免れない。しかして、本件については、右の点に関しさらに審理判断

を要するものと認められるので、本件を原審に差し戻すのが相当である。

よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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