大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和39(オ)561 判決

主 文

原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人堀部市郎の上告理由第一点について。

原判決は、挙示の証拠により、

(一)上告人は、本件土地を時価相当額で他へ売却処分しようと考え、昭和三〇

年六月六日当時、名古屋市の土地区画整理審議会議員であつた訴外亡Dに対し、本

件土地の売却処分を委任し、同訴外人に対し右土地の売渡証書および白紙委任状を

交付した。右売渡証書の記載のうち、代金、契約年月日および買受人の欄は、いず

れも白地のものであつた。

(二)Dは、本件土地の買手を物色していたが、一方、判示のような経緯のもと

に被上告人から土地(判示代り地)の購入あつ旋方の依頼を受け、昭和三三年七月

二五日将来売買契約成立の際は代金の内金に充てる趣旨のもとに八〇万円の交付を

受けた。

(三)Dは、昭和三四年一二月一七、八日頃、上告人から授与されていた前記委

任による代理権に基づき、上告人を代理して、被上告人との間に、本件土地を代金

一二〇万円で売却すべき旨の売買契約を締結し、先に被上告人より預つていた八〇

万円は右代金の内金に充当した。との事実を認定し、右の各事実に徴すると、Dは、

本件土地の売買契約を締結した当時、上告人を包括的に代理して他と売買契約をす

る権限があり、右権限に基づき上告人の代理人たる資格で本件契約を締結したもの

と認めるとともに、「上告人は昭和三〇年六月六日Dに対し本件土地を売り渡す旨

の売買契約を締結したが、後に右契約を解除した」旨の上告人の主張に対しては、

右売買契約締結の事実を肯認できない旨判示したのである。

しかし、被上告人が原審に提出した甲第一一号証は、上告寺執事E名義、Dあて

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の五万円の領収証であり、日付は昭和三〇年六月六日と記載され、「但シa区b町

c番地のd宅地売却代金ノ内金」と付記されており、また、甲第一四号証の二は、

上同E名義、Dあての二〇万円の領収証であり、日付は昭和三一年一二月二〇日と

記載され、「b町c番ノe筆土地売却代金ノ内入」と付記されており、右各証の記

載および体裁からすれば、別異に解すべき特段の事情が認められない限り、すでに

昭和三〇年六月六日当時、本件土地について(なんびとが買主であるか、代金額は

いくらであるかはともかくとして)売買契約が締結され、右各金員はその代金の内

入として売主たる上告人に支払われたものであると認めるのが自然であり、書証の

通常の解釈である。しかも、被上告人が土地の購入あつ旋方を依頼した相手方Dに

対し、将来売買契約成立の際は代金の内金に充てる趣旨のもとに八〇万円を交付し

た日時が昭和三三年七月二五日であること原審確定のとおりであるとすれば、右甲

第一一号証や甲第一四号証の二からすでに昭和三〇年六月六日当時成立していたも

のと推認される本件土地の売買契約の買主として被上告人を擬することはできない

筋合である。叙上考察したところに徴すれば、甲第一一号証および甲第一四号証の

二の記載は、冒頭に摘記した事実、就中本件土地は、昭和三四年一二月一七、八日

頃に至つて、被上告人を買主として、その売買契約が締結された旨の原審の認定を

支えるものというよりは、むしろ右認定に対する有力な反証たるべき関係にあるも

のといわなければならない。さらに、また、右甲号各証の宛名人としてDの氏名を

表示した趣旨を審究し、これに右甲号各証の他の記載を総合すれば、上告人が昭和

三〇年六月六日本件土地を同人に売り渡した旨の上告人の主張事実があるいは認定

しえられるやも計り難いのである。

しかるに、原判決が、上告人がDを代理人として昭和三四年一二月一七、八日頃

被上告人との間に本件土地の売買契約を締結した旨認定判示するにあたり、その記

載および体裁上右認定と相容れない前示甲第一一号証および甲第一四号証の二を右

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認定に照応する証拠として挙示しているのは、右甲号各証が通常有する意味内容に

反して、これを事実認定の資料に供した違法を犯したものであつて、右違法は判決

に影響を及ぼすこと明白であると認められる。また、原判決が右甲号各証の宛名人

としてDの氏名を表示した趣旨如何について思いを巡らした形跡なく、なんら理由

を説示することなく、右甲号各証を前示上告人主張事実の認定資料として採用しな

かつたことは審理不尽、理由不備の違法を蔵するものといわなければならない。論

旨は理由があり、他の論点に関する判断をするまでもなく原判決は破棄を免れない。

よつて、民訴四〇七条一項により原判決を破棄し、本件を原裁判所に差し戻すこ

ととし、裁判官全員一致の意見をもつて、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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