最高裁判所第二小法廷 昭和40(し)102 決定
主 文
本件抗告を棄却する。
理 由
特別抗告の申立をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならないこと
は、刑訴法四三四条、四二三条に明定するところであり、また被告人がする抗告の
申立書には、被告人が署名押印しなければならないことも、刑訴規則六〇条に規定
するところであつて、ここにいう署名が自己の氏名を自書することを意味すること
はいうまでもないところである。
ところが、本件について差し出された抗告申立書には「氏名不詳一九六五年七月
九日から七月一六日まで名古屋拘置所一階三五房三七九号の男」という記載がある
だけであつて、被告人の署名は存在しない。
被告人の氏名について、黙秘権がないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二七
年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日判決、集一一巻二号八〇二頁)とするとこ
ろであり、法が抗告の申立を前記のように要式行為としている理由は、手続を厳格
丁重にして過誤のないようにしようとするためであり、被告人が訴訟の主体として
誠実に訴訟上の権利を行使しなければならないことも同規則一条二項の明定すると
ころであつて、氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、これらの
規定に違反して、申立人の署名のない申立書によつてなされた本件抗告は、無効な
ものと解するのが相当である(昭和三九年(あ)第二〇二九号同四〇年七月二〇日
第三小法廷決定参照)。
そうすると、本件申立は、法令上の方式に違反するものであるから、刑訴法四三
四条、四二六条一項前段により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
昭和四一年二月三日
最高裁判所第二小法廷
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裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
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