大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和41(オ)1175 判決

主 文

原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。

右部分について本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人成田芳造の上告理由について。

原審は、本件土地の売買代金額が、昭和三七年一〇月二七日、当事者間の合意に

よつて金三〇〇万円に減額された旨の上告人の主張につき、この趣旨にそう第一・

二審における証人Dおよび上告人本人の各供述を信用しえないとしたほか、「乙第

一号証の一〇の記載をもつてしても、いまだ右主張事実を認めるには足りないし、

他に右減額の合意のあつた事実を認めるに足りる証拠は見当らない。」と判示して、

右主張を排斥している。

しかし、乙第一号証の一〇は、その余の同号各証とともに、いずれも本件土地代

金の受領証として被上告人から上告人に交付されたものであることは、被上告人も

争わない趣旨であつたことを記録上うかがうにかたくないところ、右乙第一号証の

一〇にだけは、とくに「売買完了」という記載がなされている。もつとも、被上告

人は右記載部分の成立のみは否認しているけれども、同証中他の部分は、被上告人

の氏名の記載および捺印部分を含めて、その成立について争いがないのであるから、

反証のないかぎり、右「売買完了」なる記載を含む文書全体が真正に成立したもの

と推認しうべく、原審も右記載部分の成立を必ずしも否定しない趣旨と解される。

ところが右記載部分を併せると、同証は、昭和三七年一〇月二七日に被上告人が上

告人から金一三〇万円の支払を受け、これによつて本件土地の売買代金全額の支払

が完了された旨を記載して上告人に交付した書面と解するのが経験則上相当であり、

したがつて、右金一三〇万円の支払の前提として、当初の約定代金額四〇〇万円を

金三〇〇万円(支払ずみ代金額が右金一三〇万円を合わせて金三〇〇万円となるこ

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とについては、当事者間に争いがない。)に変更する合意があつたことをうかがわ

せる有力な根拠となりうべきものといわなければならない。しかるに、原審が、前

叙のように判示するのみで、首肯するに足りる特段の事由を示すことなく、同証の

記載をもつてしても上告人の主張事実を認めえないとしたのは、事実の認定判断に

つき、証拠の解釈を誤り、あるいは審理を尽くさず、その結果理由不備の違法を犯

すに至つているものといわざるをえない。

また、乙第二号証は、その記載上、被上告人が昭和三八年四月三〇日に上告人か

ら金五万円の金員を借用した証書であることが明らかであるが、もし原判示のよう

に本件売買代金減額の事実がなく、上告人から被上告人に対する未払代金が残存し

ていたとすれば、右証書によつてうかがわれるような上告人から被上告人への金員

の交付が、残代金に対する内入れとしてでなく、新たな貸借としてなされるという

ことは、通常首肯しがたいところであるから、右乙第二号証の成立が認められると

きは、同証は、他の証拠とあいまつて、代金減額に関する上告人の主張を裏付ける

うえに、これまた特段の事由なきかぎり無視することを許されない有力な根拠とな

りうべきものである。しかるに、原審は、同証については特に言及することなく、

したがつて、右書面の成立が認められないとするのか、それとも、その実質的証明

力を否定すべき特段の事情があるというのかも明らかにしないまま、他の証拠と一

括してたやすく排斥しているのであつて、この点においても、原判決には、重要な

証拠についての判断を遺脱し、ひいて理由不備におちいつた違法があるといわなけ

ればならない。

以上説示したような違法は、原判決に影響を及ぼすべきことが明らかであつて、

論旨は理由がある。よつて、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、さらに叙上の点に

ついて審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すべきものとし、民訴法四〇七条

一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

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最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

裁判官 色 川 幸 太 郎

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