最高裁判所第二小法廷 昭和41(行ツ)81 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人福岡宗也、同田畑宏の上告理由第一点について。
論旨は、原判決が、上告人の本件登録意匠(以下本件意匠と称する。)と引用の
特許第一五五九三八号明細書(昭和一八年四月三〇日特許局発行)掲載の図面中に
現わされた巻糸機送糸転子の意匠(以下引用意匠と称する。)と対比し、その形状
がともに円筒形に漸次広くなつたところや狭くなつたところのある溝を一側の一端
を起点とし右回りおよび左回りの二つの溝を斜方向に走らせたものであることを、
両者の酷似する点の一として挙げたのに対し、それは、両者とも物品が糸捲機ドラ
ムであるため、その性質上、用法上当然有すべき基本的形状であるから、この点を
除外して両者の類否を考察すべきものと主張する。
しかし、本件意匠は、原判決引用の審決の認定とおりのものと認められ、それは、
単純に所論のような基本形状の物品のうえに表出されたものではなく、その溝の配
置、広狭の形状によつて円筒面に構成されるもの自体が、その意匠の主要部分をな
すことは明らかである。されば、そのような構成の溝を有する円筒形であることが、
右物品が糸捲機ドラムとしての機能をもつうえで必要であるからといつて、意匠の
面で、右の点を除外して類否を判定すべきものとする理由はない。
論旨は、なお、本件意匠は引用意匠に比すれば、模様が簡潔で機能的な感じが強
く、溝のない部分の菱形は正方形に近く、また安定感を示し、これらを総合すれば
両者は美的、感覚的に異なつた印象を与えるものとして、両者の意匠を類似と認め
た原判決を非難する。
本件意匠は、長さが直径の略二倍ある円筒形につき溝がその周囲を一周半してい
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るのに対し、引用意匠は、長さが直径の二倍半ある円筒形につき溝がその周囲を三
周している。しかし、意匠の考案としてみれば、原判示のように、本件意匠は、引
用意匠に現われた同じ構成の繰り返しの一部を現わしているものにほかならず、両
者が同一の構想に属することは到底否定しがたい。その円筒の形態や溝の巻き数の
相違に基づき、両者は溝の交叉によつて形成される溝のない部分の形状、あるいは
その意匠から受ける感じにおいて多少の相違は存するにしても、意匠として全体的
に考察すれば、所論の相違点をもつて、両者を非類似と認定するに足りない。諭旨
がこれと趣旨を同じくする原判決を、意匠の類似点を量的に取り上げた判断と非難
するのは失当であり、本件意匠を旧意匠法三条一項二号該当と断じた原判決に、法
律の解釈適用の過誤は存せず、論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は、原判決が本件審決と理由を同じくしたことをもつて理由不備といい、ま
た、原審において上告人が援用した先例を、なんら理由を付せずに排斥したのを失
当と非難する。
しかし、審決の認定判断が正当であるならば、右審決と同旨の理由をもつて審決
を支持するのは当然であり、それを、判決として理由不備ということはできない。
また、原判決は、上告人援用の先例についても、それは物品およびその意匠を全く
異にするのみならず本件についての判断を左右するに足る資料となしがたい旨を説
示しているのであるから、所論の非難はあたらない。論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 草 鹿 浅 之 介
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裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
裁判官 色 川 幸 太 郎
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