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最高裁判所第二小法廷 昭和50(行ツ)105 判決

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主 文

原判決を破棄する。

被上告人の請求を棄却する。

訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理 由

上告参加人代理人堀家嘉郎、同木梨與松、同合田昌英の上告理由、上告参加人辻

本正C1、同C2、同C3、同C4の上告理由、上告代理人盛一銀二郎、同越島良

三、同松原政雄、同前川健弥の上告理由について

論旨は、原審が所論の投票一四票を候補者辻本正C1の有効得票と認めることが

できないとしたのは、その効力の判断を誤つたものと主張する。

思うに、候補者制度をとる現行の公職選挙法(以下 「法」という )のもとに、 。

おいては、選挙人は候補者に投票する意思をもつて投票を記載したと推定すべきで

あり、また法六七条後段及び法六八条の二の規定の趣旨に徴すれば、選挙人は真摯

に選挙権を行使しようとする意思、すなわち適法有効な投票をしようとする意思で

投票を記載したと推定すべきである。したがつて、多数の選挙人の中には故意にあ

るいは無知から候補者以外の者の氏名等を記載する者もないとはいえないという理

由で、選挙人が真摯でない態度で投票したのではないかと推測して、その投票の効

力を否定したりするようなことは許されるべきではない。もつとも、この投票を有

効とする推定にも合理的な限界があり、例えば、投票の記載によつては必ずしも投

票意思を明確にしがたいものを、その記載と特定の候補者の氏名との間に若干の類

似性があるからといつて、これを手がかりとしてたやすく右候補の有効得票と解す

ることは許されないというべきである。

以上のような見地に立つて論旨の各投票の効力についてみると、次のとおりであ

る。

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一 原判決別表 2 の投票について( )

右投票の記載のうち第一字及び第二字は「辻本」と記載したものと認められ、第

三字及び第四字は「正C1」を草書で記載したものと判読できないことはない。そ

うすると、右投票は候補者辻本正C1の氏名を記載したものとして同候補の有効得

票と認めるべきであり、これを「辻本バカ」と記載されているものとして無効とし

た原判決には、法六七条、法六八条五号の解釈適用を誤つた違法があるというべき

である。論旨は理由がある。

二 原判決別表 3 の投票について( )

選挙人は候補者に投票する意思をもつて投票を記載したと推定すべきものである

から、投票に記載された氏名と同じ氏名をもつ者が同一選挙区内に実在する場合で

も、投票の記載がその実在人を指向するものと認められるためには、その者が地方

的に著名であるなどその記載が特に当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情

があることを要すると解すべきである(最高裁昭和三〇年(オ)第九八五号同三一

年二月三日第二小法廷判決・民集一〇巻二号一九頁、同昭和三一年(オ)第一〇三

七号同三二年三月五日第三小法廷判決・民集一一巻三号四二九頁、同昭和三三年

(オ)第六三号同三三年四月八日第三小法廷判決・民集一二巻五号七〇一頁、同昭

和三九年(行ツ)第六九号同四〇年二月九日第三小法廷判決・民集一九巻一号一三

六頁各参照 。)

そうすると 「辻本C5正」と記載された右 3 投票につき、辻本C5正なる者、 ( )

が同一選挙区内に実在し、選挙運動用ポスター掲示責任者であつた辻本C6の実弟

である事実を認定するのみで、他に特段の事情のあることを認定することなく、右

投票の記載は実在人たる同人を指向するものと認めることができるとした原判決に

は、法六七条、法六八条二号の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならな

い。

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そして 「辻本C5正」という投票の記載に徴し、右投票は、候補者辻本正C1、

の氏名のうち三字までを共通にし同候補者を指向したものとして、これを同候補の

有効得票と認めるのが相当である。論旨は理由がある。

三 原判決別表 5 の投票について( )

右投票の記載は、結局、稚拙な平仮名文字で「すつじもり」と記載したものと認

められる。そして、この記載と候補者辻本正C1の氏と比較すると 「つじも」の、

三字が共通であり、このことに右記載がきわめて稚拙な文字でなされていることを

あわせ考えると、右投票の記載は全体として候補者辻本正C1を指向しているもの

と解するのが相当である。

してみれば、右投票には「すづも(モ)り」あるいは「すじも(モ)り」と記載

され、候補者辻本正C1へ投票する意思が表明されているものとは認めがたいとし

た原判決には、法六七条、法六八条七号の解釈適用を誤つた違法があるものという

べく、論旨は理由がある。

四 原判決別表 8 ・ 9 ・ 10 の投票について( ) ( ) ( )

右投票は 「づじもり 「つじもり (ただし第二字は「づ」を訂正して「じ」、 」、 」

としたもの 「つづもり (第二字の濁点は一つ)と記載されたものであり、これ)、 」

らの記載と候補者辻本正C1の氏の「つじもと」と比較すると、第四字を除き四字

中三字までがほぼ一致しており、このことに右記載がいずれも平仮名でなされ、学

力、筆力の低い選挙人による投票であることが窺われることをあわせ考えると、右

各投票の記載は、いずれも候補者辻本正C1に投票する意思を表示しているものと

認めるのが相当である。原審は、同一選挙区内に辻森姓の者が二一、二名実在し、

その中には町収入役の辻森D、小学校長の辻森Eがいる事実を確定したうえ 「多、

数の選挙人の中には現実の立候補者に対する批判の意図、もしくは不まじめな意図

あるいは無知からそれらの者の一人を記載する可能性のあることを否定できない」

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として、右各投票はその記載自体から候補者辻本正C1に対して投票する意思が表

明されているものとはいいがたいとしているが、右のような候補者に対する批判の

意図等を考慮して、候補者以外の実在人に投票しようとしたものと推定してその投

票の効力を否定すべきものでないことは、前示判示のとおりである。原判決には法

六七条、法六八条七号の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならない。論

旨は理由がある。

五 原判決別表 1 ・ 11 ないし 17 の投票について( ) ( ) ( )

右各投票を無効とした原審の判断は正当として是認することができる。原判決に

所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

なお、上告参加人辻本正C1外三名がその上告理由第九点において主張する「辻

本C6」と記載された投票(乙第一号証別表14)は、原審において審判の対象と

なつていないのであるから、当審においてその効力を判断するに由ない。

以上当裁判所の判断によれば、原判決が無効とした投票のうち六票(原判決別表

2 ・ 3 ・ 5 ・ 8 ・ 9 ・ 10 の各投票)は候補者辻本正C1の有効得票に( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

算入すべきものであるから、同候補の有効得票は三四〇一票となつて被上告人の有

効得票三三九九票を二票上廻ることになり、被上告人の当選はこれを無効とすべき

である。してみれば、上告人委員会が本件裁決において被上告人の当選を無効とし

たのは、結局正当であつて右裁決を取り消した原判決には法令の解釈適用を誤つた

違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決は破棄を免

れない。そして叙上によれば、右裁決の取消しを求める被上告人の本訴請求は失当

、 、 、 、であるから これを棄却することとし 行政事件訴訟法七条 民訴法四〇八条一号

九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 本 林 讓

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裁判官 岡 原 昌 男

裁判官 大 塚 喜 一 郎

裁判官 吉 田 豊

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