大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和54(さ)4 判決

主 文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理 由

記録によると、福岡簡易裁判所は、昭和五三年一〇月一三日公訴を提起されたA

に対する道路交通法違反被告事件について、同日、「被告人は、昭和五三年四月一

六日午後一時三五分ころ、公安委員会が道路標識により車両の通行を禁止した福岡

市a区bc丁目d番地B附近道路において、過失により右道路標識に気づかないで

普通乗用自動車を運転して右折進行した。」との事実を認定したうえ、昭和五三年

法律第五三号による改正前の道路交通法八条一項、四条一項、一一九条二項、同条

一項一号の二、同法施行令一条の二、刑法一八条、罰金等臨時措置法二条、刑訴法

三四八条を適用して、「被告人を罰金五〇〇〇円に処する。これを完納することが

できないときは金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。第

一項の金額を仮に納付することを命ずる。」との略式命令を発付し、右略式命令は、

昭和五三年一〇月二八日確定したこと、ところが、これより先の同年九月一一日に

被告人は右と同一の事実に基づき交通反則通告書により反則金五〇〇〇円を納付す

べき旨の通告を受け、その納付期限内である同月二一日に右反則金を納付している

ことが認められる。

そうすると、右公訴事実については道路交通法一二八条二項により公訴提起が許

されないのであるから、公訴提起を受けた福岡簡易裁判所としては、刑訴法四六三

条一項に従い、事件を通常の手続に移したうえ、同法三三八条四号により公訴棄却

の判決をすべきであつたにもかかわらず、右公訴事実につき有罪を認定して略式命

令を発したものであつて、右略式命令は法令に違反していることが明らかである。

よつて、本件非常上告は理由があり、しかも、原略式命令は被告人のため不利益

- 1 -

であるから、刑訴法四五八条一号但書により右略式命令を破棄し、同法三三八条四

号により本件公訴を棄却することとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判

決する。

検察官安田道夫 公判出席

昭和五四年一一月一九日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 鹽 野 宜 慶

裁判官 大 塚 喜 一 郎

裁判官 栗 本 一 夫

裁判官 木 下 忠 良

裁判官 塚 本 重 頼

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!