最高裁判所第二小法廷 昭和55(あ)962 決定
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人杉井健二、同藤井抱一の上告趣意のうち、原判決が公訴権濫用の主張を認
めなかつたことの憲法三一条違反をいう点は、本件公訴が所論のように違法、不当
であるとは認められないから、所論は前提を欠き、旅券法一三条一項三号の違憲を
いう点は、同条項は一般旅券の発給等の制限に関する規定であるから、所論は本件
における被告人の処罰とは直接関連のない規定に関する違憲の主張であり、同法二
三条一項一号が憲法三一条、三八条一項、一九条に違反する旨をいう点は、旅券法
の右規定が構成要件の内容を所論省令にいわゆる白紙委任しているものでないこと
が明らかであるとともに右規定の構成要件が不明確であるということはできず、旅
券発給申請手続は刑事責任の追及を目的とする手続でも刑事責任追求のための資料
収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続でもなく(当裁判所昭和四四年(あ)
第七三四号同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五五四頁参照)、ま
た、旅券法の右規定は一定の思想、信条を理由として処罰しようとするものでない
ことが明らかであるから、所論はすべて前提を欠き、その余の点は、憲法三一条、
一九条、二一条違反をいう点を含め、その実質は事実誤認、単なる法令違反の主張
であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり決定する。
昭和五六年三月二七日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 木 下 忠 良
裁判官 栗 本 一 夫
- 1 -
裁判官 塚 本 重 頼
裁判官 鹽 野 宜 慶
裁判官 宮 崎 梧 一
- 2 -