大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和58(あ)1059 判決

主 文

原判決中「当審における未決勾留日数中六〇日を右刑に算入する。」と

ある部分を破棄する。

その余の部分に対する本件各上告を棄却する。

理 由

検察官の上告趣意及び弁護人中村悳、同小林明隆の上告趣意第一点について

本件記録によれば、被告人は、昭和五八年二月二五日本件恐喝未遂の罪により起

訴されるとともに勾留状の執行を受け、同年三月一六日保釈許可により釈放された

が、同月二二日第一審裁判所において懲役一年の実刑判決が言い渡された結果、保

釈失効により即日収監され、以来勾留を継続されているものであるところ、右同日

第一審弁護人から控訴の申立がなされ、原審裁判所は、同年七月七日「原判決を破

棄する。被告人を懲役八月に処する。当審における未決勾留日数中六〇日を右刑に

算入する。」との判決を言い渡したことが認められる。そして、原判決が右のとお

り控訴審における未決勾留日数中六〇日を本刑に算入する旨言い渡した点は、その

理由中の記載に照らし、第一審弁護人の控訴申立後控訴審判決言渡の前日までの未

決勾留日数の一部を刑法二一条により裁量によつて算入した趣旨であることが明ら

かである。

しかし、本件のように控訴審が第一審弁護人の控訴に基づいて第一審判決を破棄

する場合には、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法四九五条二項二号により、判

決が確定して執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであつて、控訴裁

判所には、右日数を本刑に通算するか否かの裁量権がゆだねられておらず、刑法二

一条により判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきで

ないことは、所論引用の当裁判所の判例(昭和四五年(あ)第一七七六号同四六年

四月一五日第一小法廷判決・刑集二五巻三号四三九頁、昭和四九年(あ)第五二一

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号同年七月五日第二小法廷判決・裁判集一九三号一五頁、昭和五二年(あ)第一九

四四号同五三年五月二日第三小法廷判決・裁判集二一〇号一頁)の示すところであ

る。したがつて、原判決中控訴審における未決勾留日数の一部を本刑に算入した部

分は、右判例に違反して刑法二一条を適用したものであり、この点に関する論旨は、

いずれも理由がある。

弁護人両名のその余の上告趣意について

同第二点は、憲法三一条違反をいうが、その実質は事実誤認の主張であり、同第

三点は、憲法三一条違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であつて、

いずれも適法な上告理由にあたらない。

なお、原判決中その余の部分に対する検察官の上告は、上告趣意としてなんら主

張がなく、したがつてその理由がないことに帰する。

よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決

中「当審における未決勾留日数中六〇日を右刑に算入する。」とある部分を破棄し、

その未決勾留日数を算入しないこととし、原判決中その余の部分に対する各上告は、

同法四一四条、三九六条により棄却することとし、裁判官全員一致の意見で、主文

のとおり判決する。

検察官米田昭 公判出席

昭和五八年一〇月二八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 宮 崎 梧 一

裁判官 木 下 忠 良

裁判官 鹽 野 宜 慶

裁判官 大 橋 進

裁判官 牧 圭 次

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