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札幌地方裁判所 平成14年(行ウ)4号 判決 2005年2月28日

原告

有限会社X社

上記代表者代表取締役

上記訴訟代理人弁護士

池田雄亮

齊藤宏信

被告

奈井江町

上記代表者町長

北良治

上記訴訟代理人弁護士

佐々木泉顕

古山忠

中原猛

主文

1  本件訴えを却下する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第3 当裁判所の判断

1  争点<1>(本件指名停止の処分性)について

(1)  行政事件訴訟法3条2項は、「処分の取消しの訴え」について、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟と定めるところ、ここでいう取消訴訟の対象となる行政処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である。したがって、本件において、被告による競争入札指名停止及びその通知が取消訴訟の対象となる行政処分たり得るには、それが、法の認める優越的な地位に基づいた行政庁の権力的な意思活動であること、及びそれにより、個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす法的効果を有するものであることを要する。

(2)  そこで検討するに、競争入札により地方公共団体が締結することとなる契約は、対等な当事者間において締結される一般の私人間における契約と同様、私法上の行為にすぎない。したがって、地方公共団体が、契約の相手方となるべき者の意思の如何にかかわらず、一方的に契約を締結することとし、相手方に受忍を強制し得ないことは明らかである。そして、一般に、競争入札の指名停止は、このような私法上の契約を締結するに先立ち、その相手方としてふさわしくない者を排除する目的で行われるものであって、契約の準備段階における行為にすぎない。のみならず、契約の相手方となることを希望する者が、地方公共団体と契約を締結する権利や指名競争入札に参加する権利を当然に有しているということもできない。そうであれば、上記契約の準備段階において行われるにすぎない指名停止が、法の認める優越的な意思の発動として行われるものと解することはできないし、また、個人の権利又は法律上の利益に直接の影響を及ぼす法的効果を有するものでもない。

本件指名停止も、地方公共団体である被告が、その公共事業に係る契約の相手方として原告がふさわしくないとして、被告の行う指名競争入札一般について、事前に、原告との契約を締結しない旨の意思を表示したものであって、契約の締結に向けられた準備行為にすぎない。したがって、本件指名停止及びその通知が、取消訴訟の対象となる行政処分であるということはできない。

第4 結論

以上のとおり、本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく不適法として却下されるべきである。よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 原啓一郎 裁判官 今井和桂子 塚原洋一)

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