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札幌地方裁判所 平成16年(モ)10890号 決定 2004年8月03日

北海道●●●

申立人(原告)

●●●

同訴訟代理人弁護士

大賀浩一

東京都●●●

相手方(被告)

CFJ株式会社

同代表者代表取締役

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主文

相手方は,本決定送達の日から10日以内に,別紙「文書提出命令申立訂正書」の「文書の表示」に記載の文書を提出せよ。

理由

第1本件申立の概要

1  本件は,申立人が,別紙「文書提出命令申立訂正書」の「文書の表示」に記載の文書(以下「本件文書」という。)は,民事訴訟法220条3号の法律関係文書に該当するとして,相手方に対し,当裁判所に本件文書を提出するように求めるものである。

2  これに対する相手方の意見は,別紙「文書提出命令の申立に対する意見書」のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。

(1)  本件文書は,被告が貸金業法上の義務の遂行及び貸付の残高の確認を行うという被告の事務手続のために作成した文書に過ぎないから,法律関係文書に当たらない。

(2)  仮に,本件文書が法律関係文書に該当するとしても,本件文書に記載された情報は,申立人が受領すべき契約書,銀行振込書控え,領収書等に全て記載されており,これら書面の保管も容易である。申立人が,自己の怠慢と不注意によってこれら書面を紛失したにもかかわらず,文書提出命令の申立てによって,取引履歴の開示を受けようとすることは,訴訟制度を悪用した権利の濫用にあたる。

取引履歴の開示にかかる相手方の事務負担は大きく,当事者主義の観点からも,文書提出命令は認めるべきではない。

(3)  相手方が把握している取引履歴は,1992年(平成4年)4月22日から2002年(平成14年)9月6日までの取引及び1988年(昭和63年)12月21日から1990年(平成2年)11月20日までの取引に過ぎない。

第2当裁判所の判断

1  本件文書は,申立人と訴外アイク株式会社間の金銭消費貸借契約という法律関係について作成された文書に該当することは明らかであり,本件文書がもっぱら相手方内部の事務手続に利用するために作成された文書ということはできず,訴外アイク株式会社からその業務を承継し,本件文書を所持している相手方は,民事訴訟法220条3号に基づき,本件文書を当裁判所に提出する義務がある。

なお,相手方は,本件文書提出命令の申立が権利の濫用に当たる旨主張するが,消費者金融業者から金員を借り入れた者は,複数の金融業者との間で多数回の取引を繰り返している者が多く,その取引に関係する書類等を全て保管しておくことは期待し難い反面,相手方は,貸金業法の適用を受ける貸金業者として,帳簿の作成保管等を義務づけられていることに照らせば,申立人の本件文書提出命令の申立が権利の濫用に当たるとはいえない。

2  また,相手方は,昭和63年12月21日以降の取引履歴しか把握していないとも主張するが,相手方から申立人に対し現時点で開示されている取引履歴は,平成4年4月22日以降のものであるから(乙1),相手方は,申立人と訴外アイク株式会社間の取引に関する履歴情報を引き継ぎ,その一部を開示しながら,把握していると主張する取引の全てを開示することなく,また昭和63年12月21日以前の取引履歴が現存しない理由を明らかにすることなく,取引履歴の開示を拒絶しているものであって,昭和63年12月21日以前の取引履歴に相当する文書(電磁的データを含む。)は存在しないとする相手方の主張は,これを採用することはできない。

3  以上によれば,本件申立は理由があるから,主文のとおり決定する。

(裁判官 今井和桂子)

<以下省略>

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