大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 平成17年(モ)11060号 決定 2005年11月28日

●●●

申立人(原告)

●●●

上記訴訟代理人弁護士

諏訪裕滋

中村歩

竹間寛

中谷敦

東京都目黒区三田1丁目6番21号

相手方(被告)

GEコンシューマー・ファイナンス株式会社

上記代表者代表取締役

●●●

上記訴訟代理人弁護士

●●●

●●●

主文

相手方は,本決定送達の日から14日以内に別紙文書目録記載の各文書を当裁判所に提出せよ。

理由

1(1)  基本事件は,申立人(原告)が,昭和56年1月20日から平成17年1月27日までの間に,相手方との間で,利息制限法上の制限を超える利率の約定で金員の借入れ及び返済を繰り返した結果,過払金が生じたと主張して,相手方に対し,過払金(不当利得)の返還等を請求し,相手方が,申立人の主張する取引経過を否認する等して争っている事案である。

(2)  申立人は,民訴法220条3号後段,4号に基づき,申立人と相手方との取引経過を立証するためとして,別紙文書目録記載の各文書(以下「本件各文書」という。)につき文書提出命令を申し立てた。

(3)  これに対し,相手方は,要旨,平成15年1月から同年10月までの間,10年を経過した取引履歴(別紙文書目録記載3の電磁的記録を指すものと解される。)のうち,倉庫業者に管理委託していた分については,記憶媒体であるカセットテープを物理的に粉砕し,相手方のデータセンターで保管していた分については,イレイザーという機械により磁気情報を消去した上で物理的に粉砕するか上書きして消去した,また,取引履歴のうち,相手方のデータセンターのVSMという大容量のハードディスクに保存されている分については,13か月を経過すると自動的に消去されるようプログラムされており,1年単位で管理される顧客の取引履歴情報についても,カセットテープを上記のとおり処理したのと同時に上書きの方法により消去した,このため,平成5年9月以前の取引履歴については所持しておらず,文書の提出は不可能であると主張した。

2(1)  そこで検討するに,まず,上記1(1)の争点にかんがみれば,本件各文書が,民訴法220条3号後段の法律関係文書に当たり,かつ,争点との関連性・証拠調べの必要性があることは明らかである。

(2)  相手方は,上記1(3)のとおり,平成5年9月以前の取引履歴(別紙文書目録記載3の電磁的記録)については,所持していない旨主張する。

しかし,相手方のような消費者金融各社は,多数の顧客から,過払金返還訴訟を提起され,その訴訟においては,貸付け及び返済の具体的経緯及び額が争点となっていることは,公知の事実である。そして,10年以上取引が継続している顧客との間で貸付け及び返済の経緯及び過払金の有無及び額を主張,立証するには,10年以上前の取引履歴についても保存しておく必要があることは明らかである。それにもかかわらず,相手方において,わざわざ手間や経費をかけて,10年を経過する毎に,記憶媒体を物理的に粉砕したり,上書きしたりして,取引履歴を消去する必要性や合理性は認められない。

また,本件記録によれば,相手方は,本件と同種事件である東京地方裁判所平成15年(モ)第5708号文書提出命令申立事件や,神戸地方裁判所平成15年(モ)第1406号文書提出命令申立事件においては,平成15年1月1日から,10年を経過した取引履歴については自動的にこれを消去するシステムにより,コンピューターから削除された旨,消去方法につき本件と矛盾する主張をしていたことが明らかである。

以上からすれば,相手方の上記1(3)の主張は,信用性に乏しく,相手方は,平成5年9月以前の取引履歴(別紙文書目録記載3の電磁的記録)についても所持しているものと推認せざるを得ない。

(3)  別紙文書目録記載1及び2の各文書については,相手方は,特段その所持を否認しておらず,これらを所持しているものと認められる。

3  以上によれば,申立人の本件申立ては相当であるから,これを認容することとする。

(裁判官 原啓一郎)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例