札幌地方裁判所 平成2年(わ)1341号 判決 1991年2月26日
本店所在地
札幌市中央区南二条西五丁目六番地
北海道スクレーパ株式会社
右代表者代表取締役
佐藤久
本籍
札幌市中央区宮の森三条一三丁目八九九番地六
住居
同市同区宮の森一条一三丁目一番一号
会社役員
佐藤久
昭和六年四月一二日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官村上満男出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人北海道スクレーパ株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人佐藤久を懲役一〇月に処する。
被告人佐藤久に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人北海道スクレーパ株式会社は、札幌市中央区南二条西五丁目六番地に本店を置き、土木工事一般請負等を目的とする資本金一〇〇〇万円の会社であり、被告人佐藤久は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人佐藤久において、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注加工費を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、昭和六二年三月一日から同六三年二月二九日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億四八五四万八九四九円であり、これに対する法人税額が一億三二四万六一〇〇円であるにもかかわらず、同六三年四月二八日、同区大通西一〇丁目所在の所轄札幌中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七三二三万二四六七円であり、これに対する法人税額が、二九六一万三四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同月三〇日を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額との差額七三六三万二七〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人佐藤の当公判廷における供述
一 被告人佐藤の検察官に対する供述調書(二通)
一 石原廣吉及び小西久美子の検察官に対する各供述調書
一 札幌法務局登記官作成の登記簿謄本
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面
一 大蔵事務官作成の「外注費調査書」及び「賃借料調査書」と題する各書面
一 札幌中税務署長作成の「青色申告の承認の取消通知書」と題する書面(謄本)
一 押収してある法人税決議書一冊(平成三年押第二八号の1)
(法令の適用)
被告人佐藤久の判示所為は、法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。また被告人佐藤久の判示所為は、同被告人が被告会社の代表者として被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社に対しては法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑が科せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、その所定金額の範囲内で被告人を罰金一八〇〇万円に処することとする。
(量刑の理由)
本件は、被告会社の代表取締役である被告人佐藤が、昭和六二年度、被告会社が会社設立後初めて多額の利益をあげたことから、簿外資金の確保を企て、架空外注費計上、賃借料の水増し計上等の不正な行為により、当該事業年度において、被告会社の法人税合計七三六三万二七〇〇円を免れたという事案であるところ、そのほ脱額は多額であり、ほ脱率も約七一・三パーセントと高く、また犯行態様も、所得秘匿の為下請け会社等に働きかけて協力を求めるなど計画的かつ悪質であることに鑑みると、被告人らの刑事責任は軽視し難いものと言わなければならない。
しかしながら一方、本件が摘発された後、被告会社においては修正申告をなし、所得税、重加算税等合計約一億六〇〇〇万円を全額納付していること、青色申告の承認を取り消されたほか、札幌市などから指名停止の処分を受けるなど社会的制裁を十分受けていること、建設業法による一般建設業者としての許可を受けているところから、代表者たる被告人佐藤に対する刑事処分の如何によってはその許可を取り消され、経営自体が重大な影響を受けること、被告人佐藤においては本件犯行を認め国税当局の調査、捜査にも協力するなど反省改悛の情は顕著であり、これまで前科前歴がないことなど被告人らには有利な事情も存するので、これら諸般の事情を彼此勘案し主文のとおりの量刑をした。
(求刑 被告人会社につき罰金二〇〇〇万円、被告人佐藤久につき懲役一年)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 大山隆司)