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札幌地方裁判所 平成21年(ワ)4085号 判決 2014年1月09日

当事者

別紙当事者目録記載のとおり

なお、各当事者については、別紙当事者目録記載の略称で表示し、原告1ないし33を「原告ら」といい、

被告北洋銀行、被告ノースパシフィック、被告オリコ、被告セディナ及び被告ジャックスを「被告ら」といい、

被告ノースパシフィック、被告オリコ、被告セディナ及び被告ジャックスを「被告保証会社ら」という。

訴訟代理人

別紙訴訟代理人目録記載のとおり

主文

1  被告北洋銀行は、原告24に対し、8362円及びこれに対する平成25年1月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  原告24の被告北洋銀行に対するその余の請求を棄却する。

3  被告北洋銀行は、原告31に対し、289万3093円及びこれに対する平成21年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4  原告10、同15、同16、同20、同21及び同22の請求をいずれも棄却する。

5  原告1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同11、同12、同13、同14、同17、同25、同26、同27、同28、同29、同30、同32及び同33の主位的請求をいずれも棄却する。

6  原告18、同19及び同23の被告北洋銀行に対する請求をいずれも棄却する。

7  原告18及び同19の被告ノースパシフィックに対する主位的請求、原告23及び同24の被告オリコに対する主位的請求をいずれも棄却する。

8  別紙予備的請求認容目録(1)記載のとおり、それぞれ同目録記載の原告と被告との間で、原告が被告から同目録記載の請求を受けたときは、これを拒絶できることを確認する。

9  被告北洋銀行は、別紙予備的請求認容目録(2)記載のとおり、それぞれ同目録記載の原告に対し、同目録記載の金員を支払え。

10  原告20は、被告ノースパシフィックに対し、147万3988円及びこれに対する平成21年6月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。

11  原告21は、被告ノースパシフィックに対し、154万3418円及びこれに対する平成21年9月18日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。

12  被告ノースパシフィックのその余の請求をいずれも棄却する。

13  訴訟費用は、別紙訴訟費用負担目録記載のとおりの負担とする。

14  この判決は、第1項、第3項、第9項、第10項及び第11項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1  A事件、F事件及びG事件

別紙原告ら請求一覧表記載のとおり

2  B事件

主文第11項と同旨

3  C事件

原告26は、被告ノースパシフィックに対し、194万6402円及びこれに対する平成21年6月30日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。

4  D事件

原告25は、被告ノースパシフィックに対し、223万6242円及びこれに対する平成21年7月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。

5  E事件

主文第10項と同旨

第2事案の概要

1  A事件、F事件及びG事件は、有限会社a(以下「訴外会社」という。)から購入する自動車の売買代金等の資金について、それぞれ被告北洋銀行と消費貸借契約又は連帯保証契約を締結し、被告保証会社らと保証委託契約又は連帯保証契約を締結した原告らが、被告らに対し、別紙原告ら請求一覧表記載のとおり、それぞれ契約関係、支払状況等に応じ、既払金の返還、債務不存在の確認等を求め、予備的に、訴外会社に対して生じている事由による抗弁の対抗により請求を拒絶できることの確認、既払金の一部の返還等を求め、金員の支払について、原告31については被告北洋銀行へのA事件訴状送達の日の翌日である平成21年12月22日から、原告33については被告北洋銀行へのG事件訴状送達の日の翌日である平成24年10月10日から、その余の原告らについては被告北洋銀行への金員の支払日より後の平成25年1月11日から、それぞれ民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である(なお、原告24の被告北洋銀行に対する請求について、預金返還請求権に関する部分(8362円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分)は、被告北洋銀行による貸金返還請求権を自働債権とする相殺が抗弁で、貸金返還請求権の存否等は攻撃防御方法の問題であるため、主位的、予備的の関係が生じないものである。また、原告31の被告北洋銀行に対する預金返還請求権についても同様である。)。

B事件ないしE事件は、被告ノースパシフィックが、原告らの一部(原告20、21、25及び26)に対し、それぞれ上記各原告と被告北洋銀行との消費貸借契約についての保証委託契約に基づく求償金及びこれに対する約定利率年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金の支払を求めている事案である。

2  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の趣旨により容易に認定できる事実)

(1)  被告北洋銀行は、大正6年8月20日会社成立の、預金又は定期積金の受け入れ、資金の貸付け又は手形の割引並びに為替取引等を目的とする株式会社である。

(2)  被告北洋銀行は、平成20年10月14日、株式会社札幌銀行(以下「札幌銀行」という。)と、被告北洋銀行を存続会社として合併し、札幌銀行の権利義務を承継した(以下、合併前の札幌銀行についても、「被告北洋銀行」との略称を用いることがある。)。

(3)  札幌銀行のb1支店は、被告北洋銀行との合併に伴って、支店名がb支店に変更された(以下、同支店を「本件支店」という。)。

(4)  被告ノースパシフィックは、平成21年4月1日、札銀保証サービス株式会社(以下「札銀保証」という。)と、被告ノースパシフィックを存続会社として合併し、札銀保証の権利義務を承継した(以下、合併前の札銀保証についても、「被告ノースパシフィック」との略称を用いることがある。)。

(5)  被告セディナ(当時の商号:株式会社オーエムシーカード)は、平成21年4月1日、株式会社セントラルファイナンス(以下「セントラル」という。)と、被告セディナを存続会社として合併し、セントラルの権利義務を承継した(以下、合併前のセントラルについても、「被告セディナ」との略称を用いることがある。)。

(6)  札銀保証、被告ノースパシフィック、被告オリコ、セントラル、被告セディナ及び被告ジャックスは、いずれも信用保証等を業とする株式会社である。

(7)  訴外会社は、中古車販売を業とする有限会社であり、F(以下「亡F」という。)が代表取締役であったが、亡Fは、平成21年4月10日、自殺し、これにより、訴外会社は、事業を停止して、事実上倒産状態となった。

(8)  札幌銀行は、平成19年から平成20年当時、自動車の購入費用等の融資について、以下の内容(パンフレットによる。)のマイカーローン(以下「札銀マイカーローン」という。)を用意し、そのパンフレットに書き込み式の「ローン(仮)審査申込照会票」(以下「事前審査申込書」という。)の用紙が印刷されていた(乙共1)。

資金使途 車の購入、車検、修理、免許取得、自動車関連用品の購入に要する費用、他社のマイカーローンの借り替え資金、保証料「一括前払い」の保証料相当額、マリン対象費用

返済方法 毎月元利均等返済(ボーナス併用返済もできる。)

必要書類 運転免許証、健康保険証、購入見積書等

担保・保証人 原則不要

保証委託 次のいずれかの保証会社に保証委託する。

札銀保証、被告オリコ、セントラル、被告ジャックス、UFJニコス株式会社(以下、三菱UFJニコス株式会社も含め「ニコス」という。)

(9)  札幌銀行における札銀マイカーローンの取扱いは、平成19年から平成20年当時、前記(8)のほか、以下のとおりであった(乙共16)。

資金使途 車の購入資金について、個人売買は不可

車を買い換える場合、残債の上乗せを新たに購入する車両の標準購入価格の50%以内かつ50万円を上限として認める。

保証人 保証意思確認は、原則として面談により行う。

必要書類 原本を確認することとし、コピーのみの持参は不可

見積書、売買契約書については、記載内容として自動車登録番号(ナンバープレート番号)又は車台番号の記入を確認する。記載欄のない場合は、購入先に確認のうえ余白に記入し、記入者印を押印する。

住宅地図又は電話帳で見積書(売買契約書)上の販売元の所在又は電話番号を突合する。

遠隔地業者からの購入は不可

融資実行準備 融資が決定した申込人について、次のとおり実行を準備する。

金銭消費貸借契約証書、支払先・保証料振込先(保証料先払いの場合)の振込依頼書(振込承諾書兼保証料振込承諾書欄に同意署名捺印のある場合は、代筆可)等の実行書類の申し受け

預金口座の開設(新規取引の場合)

融資金は、支払先に振り込むことが条件であることから、申込人の指定した日に融資を実行する必要があり、十分に打ち合わせて実行日を決める。

融資実行 融資金は、全額借主の口座へ一旦必ず入金し、支払先の指定口座へ振り込む。振込承諾書兼保証料振込承諾書欄に同意署名捺印のある場合は、代金の振込・保証料の振込・印紙代の引き落としを払出請求書なしで可能とし、振込依頼書は代筆とする。

遅延損害金 年14%

(10)  札幌銀行は、平成19年から平成20年当時、札銀マイカーローンのほか、エコカーローン(以下「札銀エコカーローン」という。)も用意していたが、その内容、取扱い等は、資金使途が、新車のエコカーの購入とされ、この点に関連する事項が異なるほかは、札銀マイカーローンとほぼ同様であった(乙共16)。

(11)  被告北洋銀行は、平成20年から平成21年当時、自動車の購入費用等の融資について、以下の内容(パンフレットによる。)のマイカーローン(以下「北洋マイカーローン」といい、札銀マイカーローン及び北洋マイカーローンを「本件マイカーローン」という。)を用意し、そのパンフレットに書き込み式の「ローン(事前)審査申込書兼保証委託申込書」(以下、前記(8)の「ローン(仮)審査申込照会票」と同様に、「事前審査申込書」という。)の用紙が印刷されていた(乙共3)。

資金使途 マイカー、バイク、キャンピングカー購入及び購入に伴う諸費用、修理、車検、免許取得費用、自動車関連用品購入資金、金融機関、信販会社等からの車両購入資金の借り換え資金、マリン対象資金、これらにかかる前払い保証料相当額

返済方法 元利均等毎月返済方式(ボーナス併用返済もできる。)

必要書類 運転免許証、健康保険証、購入見積書等

連帯保証人 原則不要

担保 不要

保証委託 次のいずれかの保証会社に保証委託する。

札銀保証、被告オリコ、セントラル、被告ジャックス、ニコス

(12)  被告北洋銀行は、平成20年から平成21年当時、自動車の購入費用等の融資について、以下の内容(パンフレットによる。)のエコカーローン(以下「北洋エコカーローン」といい、北洋マイカーローン及び北洋エコカーローンを「北洋ローン」という。また、札銀エコカーローン及び北洋エコカーローンを「本件エコカーローン」といい、本件マイカーローン及び本件エコカーローンを「本件ローン」という。)を用意し、そのパンフレットに、前記(11)と同様の書き込み式の事前審査申込書の用紙が印刷されていた(乙共4)。

資金使途 低公害車(新車に限る。)購入及び購入に伴う諸費用、これにかかる前払い保証料相当額

返済方法 元利均等毎月返済方式(ボーナス併用返済もできる。)

必要書類 運転免許証、健康保険証、購入見積書又は契約書

連帯保証人 原則不要

担保 不要

保証委託 次のいずれかの保証会社に保証委託する。

札銀保証、被告オリコ、セントラル、被告ジャックス、ニコス

(13)  被告北洋銀行における北洋ローンの取扱いは、平成20年から平成21年当時、前記(11)及び(12)のほか、以下のとおりであった(乙共17)。

資金使途 個人間売買は不可

車を買い換える場合、残債の上乗せを新たに購入する車両の車両本体価格の50%かつ50万円以内を上限として認める。

資金使途確認資料 原本を確認のうえ、写しを申し受ける。

販売元の実在性を確認する(住宅地図、電話帳、名寄せ、コスモス等で実在性の確認を行う。)。

貸出金の処理 自動車関連用品購入資金で、車両購入資金と同時申込かつ車両購入資金の50%かつ50万円以内の場合を除き、振込を必須とする。

貸出実行日 随時の日

遅延損害金 年14%

契約手続 借主の使用印鑑は返済用預金口座届出印、連帯保証人は実印(印鑑証明書は不要)を使用する。

(14)  本件ローンでは、被告北洋銀行からの融資金は、借主(購入者等)が作成した振込依頼書に基づき、自動車の購入が目的の場合は、販売店の預金口座に、借換が目的の場合は、旧債務の債権者の預金口座に、融資(借主の預金口座への振込)後直ちに振り込まれることとされていた(ただし、前記(9)のとおり、振込承諾書兼保証料振込承諾書欄に同意署名捺印のある場合は、代金の振込・保証料の振込・印紙代の引き落としが、払出請求書なしで可能とされ、振込依頼書は代筆するものとされていた。また、一括払の保証料も、同様に、保証委託した保証会社の預金口座に振り込まれることとされていた。)。

(15)  原告1ないし27及び32(以下「原告主債務者ら」という。)は、訴外会社と、それぞれ別紙契約一覧表(1)の「売買契約」欄記載のとおり、売買契約を締結した(以下、それぞれ原告の番号に応じて「売買契約1」などといい(なお、原告7については、平成19年3月19日付けのものを「売買契約7A」といい、平成20年7月23日付けのものを「売買契約7B」という。)、売買契約1ないし6、7A、7B、8ないし27及び32を「本件各売買契約」といい、これらを一般的に「本件売買契約」という。また、本件各売買契約の対象とされた別紙契約一覧表(1)の「自動車名」欄記載の自動車を、それぞれ原告の番号に応じて「自動車1」などといい(なお、原告7については、売買契約7Aの対象とされた自動車を「自動車7A」といい、売買契約7Bの対象とされた自動車を「自動車7B」という。)、本件各売買契約の対象とされた自動車を一般的に「対象自動車」という。)。なお、自動車は、平成20年6月18日号外法律第74号による改正前割賦販売法(以下「割賦販売法」という。)所定の指定商品に該当する。

(16)  原告主債務者らは、被告北洋銀行と、別紙契約一覧表(1)記載の「金銭消費貸借契約」欄記載のとおり、消費貸借契約を締結した(以下、それぞれ原告の番号に応じて「消費貸借契約1」などといい(なお、原告7については、平成19年3月22日付けのものを「消費貸借契約7A」といい、平成20年7月24日付けのものを「消費貸借契約7B」という。)、消費貸借契約1ないし6、7A、7B、8ないし27及び32を「本件各消費貸借契約」といい、これらを一般的に「本件消費貸借契約」という。)。

(17)  原告28ないし31及び33(以下「原告保証人ら」という。)は、被告北洋銀行と、別紙契約一覧表(2)記載の「北洋連帯保証契約」欄記載のとおり、連帯保証契約を締結した(以下、それぞれ原告の番号に応じて「北洋連帯保証契約28」などといい、北洋連帯保証契約28ないし31及び33を「本件各北洋連帯保証契約」といい、これらを一般的に「本件北洋連帯保証契約」という。)。なお、原告28は、原告17の妻であり、原告29は、原告3の父であり、原告30は、原告23の兄であり、原告31は、原告16の母であり、原告33は、原告5の妻である。

(18)  原告主債務者らは、別紙契約一覧表(1)記載の「保証委託契約」欄記載のとおり、それぞれ被告保証会社らと、本件各消費貸借契約に基づく債務の保証委託契約を締結した(以下、それぞれ原告の番号に応じて「保証委託契約1」などといい、保証委託契約1ないし6、7A、7B、8ないし27及び32を「本件各保証委託契約」といい、これらを一般的に「本件保証委託契約」という。)。なお、保証委託契約20、21、25及び26の遅延損害金の約定利率は、いずれも年14.6パーセント(年365日の日割計算)である。

(19)  原告保証人らは、別紙契約一覧表(2)記載の「信販連帯保証契約」欄記載のとおり、それぞれ被告オリコと、連帯保証契約を締結した(以下、それぞれ原告の番号に応じて「オリコ保証契約28」などといい、オリコ保証契約28ないし31及び33を「本件各オリコ保証契約」といい、これらを一般的に「本件オリコ保証契約」という。)。

(20)  本件各消費貸借契約、本件各北洋連帯保証契約、本件各保証委託契約及び本件各オリコ保証契約は、いずれも本件支店を取扱店として締結され、被告北洋銀行の担当者は、平成20年夏ころまでは、G(以下「G」という。)、平成20年夏ころから平成21年3月ころまでは、H(以下「H」という。)、平成21年4月ころからは、I(以下「I」といい、G、H及びIを「本件担当者ら」という。)であった。

(21)  本件各消費貸借契約による被告北洋銀行からの融資金は、原告主債務者らの各預金口座に振り込まれた後、予め作成されていた振込依頼書等に基づき、直ちに訴外会社の預金口座に振り込まれた(なお、保証料先払の場合は、被告保証会社らの預金口座にも保証料として振り込まれた。)。

(22)  別紙契約一覧表(1)番号2、12、15及び18ないし26の「保証委託契約」欄記載の被告保証会社らは、被告北洋銀行に対し、それぞれ保証委託契約2、12、15又は18ないし26に基づき、同表の対応する番号の「代位弁済額」欄記載の金額を代位弁済した。

(23)  原告主債務者ら(ただし、原告27を除く。)は、被告北洋銀行に対し、訴外会社が対象自動車を引き渡さないことなどを理由として、債務の支払を拒絶する旨の通知(以下「抗弁書」という。)をした(なお、抗弁書の被告北洋銀行への到達日については、別紙契約一覧表(1)及び(2)の各「抗弁書到達日」欄記載のとおり、各原告の主張と被告らの主張とが一致して争いがないものと、一致しておらず争いがあるものとがある。)。

(24)  原告31は、平成21年8月17日、被告北洋銀行に対し、374万3209円の普通預金債権を有していた。

被告北洋銀行は、同日、原告31に対し、北洋連帯保証契約31に基づく原告31に対する債権289万3093円と、原告31の被告北洋銀行に対する上記普通預金債権とを対当額(289万3093円)で相殺するとの意思表示をした(以下「北洋相殺31」という。)。

(25)  原告24は、平成21年10月28日、被告北洋銀行に対し、8362円の普通預金債権を有していた。

被告北洋銀行は、同日、原告24に対し、消費貸借契約24に基づく原告24に対する債権と、原告24の被告北洋銀行に対する上記普通預金債権とを対当額(8362円)で相殺するとの意思表示をした(以下「北洋相殺24」という。)。

(26)  本件各消費貸借契約及び本件各北洋連帯保証契約についての、平成25年1月10日までの弁済の状況は、別紙契約一覧表(1)及び(2)の各「既払金」欄及び「代位弁済額」欄記載のとおりであり、原告主債務者らが、本件各消費貸借契約について、被告北洋銀行に対し、各原告主張の抗弁書到達日以前に支払った金員は、それぞれ別紙契約一覧表(1)の「既払金」欄の「抗弁書到達前」欄の「主債務者支払額」欄記載のとおりであり、各原告主張の抗弁書到達日より後に支払った金員(前記(25)の相殺分を含む。)は、同表の「既払金」欄の「抗弁書到達後」欄の「主債務者支払額」欄記載のとおりで、原告保証人らが、本件各北洋連帯保証契約について、被告北洋銀行に対し支払った金員(前記(24)の相殺分を含む。)は、それぞれ別紙契約一覧表(2)の「既払金」欄の「抗弁書到達後」欄の「保証人支払額」欄記載のとおり(支払は、いずれも各原告主張の抗弁書到達日より後)である。

(27)  被告北洋銀行の本件各消費貸借契約に基づく債権及びこれに相当する本件各北洋連帯保証契約に基づく債権ついて、原告ら又は被告保証会社らから支払われた金員(訴外会社又は亡Fが出捐した分を含む。)を控除した平成25年1月10日現在の残元金は、別紙契約一覧表(1)及び(2)の各未払金欄記載のとおりである。

3  争点

(1)  原告1ないし9、11ないし13、16、17、19、23ないし25及び32(以下「購入原告ら」という。)及び原告14と被告北洋銀行との間の本件消費貸借契約についての錯誤無効(争点(1))

(2)  本件各消費貸借契約について被告北洋銀行の債務不履行があったか(争点(2))

(3)  被告北洋銀行及び訴外会社の原告主債務者らに対する共同不法行為(争点(3))

(4)  本件各消費貸借契約に割賦販売法30条の4第1項の適用があるか(争点(4))

(5)  原告10、15、20、21及び22(以下「名義貸原告ら」という。)、原告14、18及び26(以下「借換原告ら」という。)並びに原告6が割賦販売法30条の4第1項による抗弁権の対抗を主張することが信義則に反するか(争点(5))

4  争点に関する当事者の主張(なお、原告らの亡Fの欺罔及び被告北洋銀行との関係についての個別的な主張は、別紙個別事情記載のとおりである。)

(1)  争点(1)(錯誤無効)について

ア 購入原告ら(ただし、原告7は、消費貸借契約7Bについて)、原告14及び原告保証人ら

(ア) 購入原告らと被告北洋銀行との間では、いずれも購入原告らが対象自動車を購入することを目的として、本件消費貸借契約を締結したもので、訴外会社から対象自動車を購入することが表示されており、少なくとも共通の認識があった(以下、購入原告らと被告北洋銀行との間の本件消費貸借契約(ただし、原告7は、消費貸借契約7Bについて)を「本件各購入原告消費貸借契約」という。)。

消費貸借契約14は、別紙個別事情14記載のとおり、借換え事案であるところ、借換え目的であることは、被告北洋銀行担当者のHも認識していた。したがって、被告北洋銀行に対し、消費貸借契約14について、借換え目的であることの表示がされていた。

購入原告らは、いずれも訴外会社から購入した対象自動車の納入及び名義変更がされると思っていたが、亡Fは、購入原告らに対象自動車を引き渡す意思も自動車登録の名義を変更する意思もなかった(ただし、原告8については、自動車8は引渡し済みであり、亡Fは、名義変更する意思がなかった。)。購入原告らは、亡Fに対象自動車の引渡しや名義変更の意思がないことが分かっていれば、いずれも被告北洋銀行と本件消費貸借契約を締結することがなかったのであるから、購入原告らの動機は、消費貸借契約の主要な部分であり、法律行為の要素である。

また、原告14は、消費貸借契約14により、被告北洋銀行から日立キャピタルに対する日立残債務相当額を借り入れれば、亡Fないし訴外会社が日立残債務を一括返済して処理してくれると思っていたが、亡Fは、日立残債務の一括処理をする意思はなかった。原告14は、亡Fに日立残債務を一括処理する意思がないことが分かっていれば、被告北洋銀行と消費貸借契約14を締結することがなかったのであるから、原告14の動機は、消費貸借契約の主要な部分であり、法律行為の要素である。

そして、本件消費貸借契約は、被告北洋銀行の商品である「マイカーローン」又は「エコカーローン」という名称のいわゆる「目的ローン」であり、購入原告ら及び原告14と訴外会社との本件売買契約と、購入原告ら及び原告14と被告北洋銀行との本件消費貸借契約との間には、極めて強い手続的一体性があり、その実質は、信販会社における立替払契約と変わりがないほどであるから、本件各購入原告消費貸借契約についての購入原告らの錯誤及び消費貸借契約14についての原告14の錯誤が、要素の錯誤であることは明らかである。

したがって、本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14は、いずれも錯誤により無効である。

(イ) 前記(ア)のとおり、本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14はいずれも無効であるから、購入原告ら及び原告14は、被告北洋銀行に対し、それぞれ融資を受けた金員について不当利得返還義務を負い、被告北洋銀行は、購入原告ら及び原告14に対し、それぞれ返済された金員について不当利得返還義務を負う。購入原告ら及び原告14は、いずれも本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14を締結した当時、上記各契約の無効について善意であったから、現存利益の範囲内でのみ返還義務を負う。本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14の融資金は、いずれもそのまま訴外会社へ送金されているが、購入原告らに対象自動車が訴外会社から納入され名義変更される見込みはなく(原告8については、名義変更される見込みがない。)、前記(ア)の原告14の日立残債務が亡Fや訴外会社によって処理される見込みはないから、購入原告ら及び原告14にはいずれも現存利益がない。

(ウ) したがって、購入原告ら及び原告14は、本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14について、被告北洋銀行への既払金(相殺によるものを含む。)は、不当利得として返還を求めることができ、全額が返済されていない場合、被告北洋銀行に対する債務はない。

(エ) そして、それぞれ原告3、5、16、17及び23の連帯保証人である原告29、33、31、28及び30(原告保証人ら)についても、以上のとおり、主債務が存在しないから、本件北洋連帯保証契約に基づく債務も存在せず、被告北洋銀行への既払金(相殺によるものを含む。)は、不当利得として返還を求めることができ、全額が返済されていない場合、被告北洋銀行に対する債務はない。

(オ) また、以上のとおり、購入原告ら、原告14及び原告保証人らは、被告北洋銀行に対する債務がなかったのであるから、被告保証会社らに対する本件保証委託契約及び本件オリコ保証契約に基づく債務もない。

イ 被告ら(ただし、被告ジャックスを除く)

前記アの主張は、いずれも争う。

購入原告ら及び原告14と被告北洋銀行との間において締結された本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14について、いずれも錯誤はなく、契約は有効である。

購入原告ら及び原告14は、融資金の使途目的である訴外会社との間の自動車購入契約等にかかる訴外会社の履行意思の欠缺が錯誤の原因となる事実である旨主張するが、上記原告らが主張する事由は金銭消費貸借契約の要素にはあたらない。

本件各購入原告消費貸借契約及び消費貸借契約14は、いずれも契約当事者の合意内容どおりの融資が実行されているのであり、融資金額が約定と異なっていたり、返済条件が契約者の認識と異なっていたりするような金銭消費貸借契約における要素についての認識の齟齬は何ら存しない。

(2)  争点(2)(債務不履行解除)について

ア 原告ら

(ア) 被告北洋銀行は、原告主債務者らと本件各消費貸借契約を締結するに当たり、契約の当事者として、相手方である原告主債務者らに不測の損害を与えないようにする義務を負っていた。

すなわち、本件各消費貸借契約により、原告主債務者らに貸付けを行った被告北洋銀行は、融資金が問題のある者に送金され、これにより借主(原告主債務者ら)が不測の損害を被ることを知り又は容易に知り得た場合、問題の有無を調査する義務を負い、その結果、容易に問題が判明した場合は、送金してはならない義務を負っていた。また、被告北洋銀行は、送金手続が、借主にとって不測の損害となることが明らかな場合又はこれを容易に認識し得る場合には、改めて顧客の意向、送金についての同意、送金目的の達成等について確認すべき注意義務を負い、その結果、容易に問題が判明した場合には、送金をしてはならないという義務を負っていた。

被告北洋銀行の訴外会社のあっせんによる融資は、平成17年には年間2件、平成18年には年間6件であったのが、平成19年2月からは毎月行われるようになり、平成19年3月には5件、平成20年5月には11件にものぼった。本件担当者らは、訴外会社がその規模等からは不均衡に契約件数を急増させ、亡Fから緊急に現金を取得するために、通常の手続を逸脱する即日送金や翌日送金の要請が繰り返されるなどしていたのであるから、その不自然さに気付くべきであり、訴外会社の経営状況、本件各売買契約の債務が履行されるかどうか、原告主債務者らにどのような約束をしており、それが守られるのかどうか、本件各売買契約自体に法律上、事実上の瑕疵がないかなど、容易に疑念を抱くべき状況にあったもので、本件各消費貸借契約による融資金を訴外会社に送金した場合、訴外会社の債務不履行、約束違反、経営破綻等により、原告らに不測の損害を与える可能性があることを容易に予測することができた。

このような状況は、本件各消費貸借契約のうち最初に締結された消費貸借契約7A(平成19年3月)の時点で既に生じており、亡F死亡時まで続いていたから、被告北洋銀行は、平成19年3月以降、本件各消費貸借契約締結の際、いずれも上記注意義務を負っていたのである。そして、本件各消費貸借契約締結の際のこの点に関する特記すべき個別的な事情は、別紙個別事情の各②被告北洋銀行関係の主張欄記載のとおりである。

(イ) ところが、本件担当者らは、亡Fの指示どおり本件各消費貸借契約を成立させ、少しでも早く訴外会社に送金することを最優先にして、上記義務を履行せず、原告主債務者らが損害を被ることを防止する配慮を全く行わず、至急の手続を進めるなど、漫然と訴外会社への融資金の送金を続けた。

したがって、被告北洋銀行は、原告主債務者らに対し、債務不履行責任を負う。

(ウ) 原告主債務者ら(ただし、原告32を除く。)は、被告北洋銀行に対し、平成21年12月21日、それぞれA事件訴状の送達により、本件各消費貸借契約の解除の意思表示をし、原告32は、被告北洋銀行に対し、平成22年4月1日、F事件訴状の送達により、消費貸借契約32の解除の意思表示をした。

(エ) したがって、原告主債務者らは、本件各消費貸借契約について、被告北洋銀行への既払金は、それぞれ不当利得として返還を求めることができ、被告北洋銀行による北洋相殺24は無効であり、原告24の預金返還請求権は失われないし、本件各消費貸借契約について、全額が返済されていない場合には、被告北洋銀行に対する債務がない(ただし、原告27については、原告27が旧債務について自ら支払った96万4926円の限度で現存利益がなく、この限度で債務がない。)。

(オ) そして、原告保証人らについても、以上のとおり、主債務について契約が解除されたから、本件各北洋連帯保証契約に基づく債務も存在せず、被告北洋銀行への既払金は、不当利得として返還を求めることができ、被告北洋銀行による北洋相殺31は無効であり、原告31の預金返還請求権は失われないし、全額が返済されていない場合には、被告北洋銀行に対する債務がない。

(カ) 以上のとおり、原告らは、被告北洋銀行に対する債務が存在しないのであるから、被告保証会社らとの関係でも、原告主債務者らの本件各保証委託契約並びに原告保証人らの本件各オリコ保証契約に基づく債務は存在しない。

イ 被告ら

前記アの主張は、いずれも争う。

原告らは、本件担当者らが、亡Fの原告らに対する金銭詐取の意図を認識し、あるいは、容易に認識し得たことを前提として被告北洋銀行の注意義務違反を主張する。

しかし、本件担当者らは、亡Fの原告主債務者らに対する金銭詐取の意図を認識していたことはなく、訴外会社による契約件数の割合が多いとか、増加傾向にあったという程度の認識はあったものの、原告主債務者らと訴外会社との間で、対象自動車が納車されていないなどのトラブルが生じていることの認識も全くなかった。

したがって、本件担当者らが、亡Fの原告らに対する金銭詐取の意図を認識することはできなかったのであり、原告らの主張はその前提を欠いている。

(3)  争点(3)(共同不法行為)について

ア 原告ら

(ア) 亡Fは、別紙個別事情の①亡Fの欺罔に関する主張欄記載のとおり、原告主債務者らに本件各売買契約及び本件各消費貸借契約を締結させて、原告主債務者らから金員を詐取し、原告主債務者ら(ただし、原告27を除く。)は、本件各消費貸借契約による融資金(本件保証会社らに手数料として支払われた費用を含む。)相当額の損害を被った。

また、原告27は、亡Fの上記不法行為により、自ら旧債務について支払った96万4926円の損害を被った。

(イ) 亡Fが売買代金等を詐取するためには、本件各売買契約の代金等について本件各消費貸借契約で原告主債務者らに融資する被告北洋銀行の存在が不可欠であり、被告北洋銀行が原告主債務者らに融資しなければ、亡Fが原告主債務者らから金員を詐取することはできなかった。他方、被告北洋銀行は、亡Fから、多数の本件ローンの顧客を紹介され、自らの営業努力だけでは確保できない収益を上げることができたもので、相互利用補充関係にあった。

そして、前記(2)ア(ア)のとおり、本件担当者らは、亡Fによるあっせんに不審な点が散見されること、亡Fの指示に従って手続を進め、漫然と訴外会社に送金すれば、原告主債務者らに多額の損害が生じ得ること、亡Fが原告主債務者らを欺罔して金員を詐取しようとしていることを容易に認識することができた。

(ウ) ところが、前記(2)ア(イ)のとおり、本件担当者らは、亡Fの指示どおり本件各消費貸借契約を成立させ、少しでも早く訴外会社に送金することを最優先にして、至急の手続を進めるなど、漫然と訴外会社への融資金の送金を続けたのであるから、その行為は、亡Fとの共同不法行為に該当する。

(エ) そのため、原告主債務者らは、前記(ア)のとおり、本件各消費貸借契約による融資金相当額(ただし、原告27は自ら旧債務について支払った96万4926円分)の損害を被ったのであり、被告北洋銀行は、原告主債務者らに対し、使用者責任に基づき、上記各損害を賠償する義務がある。

(オ) 原告主債務者ら(ただし、原告32を除く。)は、被告北洋銀行に対し、平成21年12月21日、それぞれA事件訴状の送達により、前記(エ)の損害賠償請求権をもって、被告北洋銀行の原告主債務者ら(ただし、原告32を除く。)に対する本件各消費貸借契約に基づく貸金返還請求権と対当額で相殺するとの意思表示をし、原告32は、被告北洋銀行に対し、平成22年4月1日、F事件訴状の送達により、前記(エ)の損害賠償請求権をもって、被告北洋銀行の原告32に対する消費貸借契約32に基づく貸金返還請求権と対当額で相殺するとの意思表示をした。

(カ) なお、原告主債務者らの既払額(北洋相殺24によるものを含む。)については、利息部分も含め支払った原告に損害が生じており、被告北洋銀行は、支払った原告に対し、それぞれにこれを賠償する義務がある。また、前記(オ)の相殺の意思表示後に、原告主債務者らが被告北洋銀行に支払った部分についても、いずれも支払停止による信用情報掲載のリスクを恐れて支払ったものであるから、被告北洋銀行は、支払った原告に対し、それぞれ不法行為による損害賠償義務ないし不当利得の返還義務がある。

(キ) 原告保証人らについては、前記(オ)の相殺により、主債務が消滅したから、本件各北洋連帯保証契約に基づく被告北洋銀行に対する債務も消滅した。

原告保証人らの既払額(北洋相殺31によるものを含む。)については、利息部分も含め支払った原告に損害が生じており、被告北洋銀行は、支払った原告に対し、それぞれこれを賠償する義務がある。また、前記(オ)の相殺の意思表示後に、原告保証人らが被告北洋銀行に支払った部分についても、いずれも支払停止による信用情報掲載のリスクを恐れて支払ったものであるから、被告北洋銀行は、支払った原告に対し、それぞれ不法行為による損害賠償義務ないし不当利得の返還義務がある。

(ク) 以上のとおり、原告らには、被告北洋銀行に対する債務が存在しないのであるから、原告主債務者らの本件各保証委託契約に基づく被告保証会社らに対する債務も、原告保証人らの本件各オリコ保証契約に基づく被告オリコに対する債務も存在しない。

イ 被告ら

前記アの主張は、いずれも争う。

被告北洋銀行は、原告主債務者らの申込によりそれぞれ本件各消費貸借契約を締結して本件ローンを実行したものであり、原告らの主張するような亡Fや訴外会社との間の相互利用補充関係はない。

そもそも被告北洋銀行や本件担当者らは、亡Fが原告主債務者らから自動車の売買代金等を詐取する目的で、原告主債務者らを欺罔し、本件売買契約を締結するなどしたとの事実を知らなかったし、これを容易に認識することができたものでもない。

(4)  争点(4)(割賦販売法30条の4第1項の適用)について

ア 原告ら

(ア) 本件各売買契約と本件各消費貸借契約との間には、以下のとおり、手続的一体関係、反復継続的関係及び相互依存関係があって、加盟店契約に類する密接な牽連関係が存在するので、本件各消費貸借契約については、割賦販売法2条3項2号所定の「個品割賦購入あっせん」に該当し、いずれも同法30条の4第1項の適用がある。

a 本件各売買契約と本件各消費貸借契約の事前審査申込は、同時又は近接した日時になされ、事前審査手続の確認後に注文書が作成されることもあり、事前審査手続の結果は亡Fを通じて原告主債務者らに伝えられ、保証人が必要な場合も亡Fを通じて連絡されるなどし、本件支店の営業時間外や店舗外での契約手続も含め、本件各消費貸借契約を締結する日時、場所等の連絡・調整は、亡Fが行っていた。

そして、本件ローンは、自動車購入目的の場合、自動車の注文書がなければ融資を実行できないものであるが、借主が契約時に注文書を持参しない場合、これと前後して、亡Fが被告北洋銀行に直接提出する運用になっていたり、本件各消費貸借契約の内容についても、契約する時点では、その内容がほぼ決まっていて、借主は、本件担当者らの指示する箇所に、言われたとおり記入し、署名押印するだけになっていた。また、本件担当者らも、亡Fが事前に借主に本件各消費貸借契約の契約内容を説明しているという認識であった。

さらに、本件ローンでは、本件各消費貸借契約を申し込む際に、融資金を訴外会社の預金口座に送金することをあらかじめ承諾しなければならず、原告主債務者らの預金口座に入金された融資金は、改めて原告主債務者らの同意等の手続を要することなく、訴外会社の預金口座等に送金されることとなっており、原告主債務者らは、融資金を自由に費消することはできず、自動車の購入先を訴外会社以外の販売業者に変更することもできないものであった。

このように、本件各消費貸借契約と訴外会社への送金依頼(準委任契約)とは、本来二つの契約であるのに、消費貸借契約とこれによる融資金を訴外会社へ振込送金する手続とが不可分一体とされていた。

以上のとおり、本件各売買契約と本件各消費貸借契約の締結は、手続的に一体として行われていたのである。

b 訴外会社の自動車販売等に関して被告北洋銀行で締結された金銭消費貸借契約は、すべて本件支店で締結され、平成19年3月から平成21年4月までの約26か月間に合計136件(1か月平均約5件)にのぼり、反復継続的関係があった。

c 被告北洋銀行は、事前審査書類や事前審査結果を販売店に通知する同意書の書式が入った本件ローンのパンフレットを、訴外会社に予め提供し、本件各消費貸借契約は、いずれも亡Fによってあっせんされ、本件支店が取扱店であった。

亡Fは、被告北洋銀行への融資希望者からの本件ローンの事前審査書類の提出について、FAX送信したり、持参したりして関与し、亡Fが事前審査書類を作成したこともあったし、本件各消費貸借契約締結の日時、場所等の連絡・調整は、亡Fが行い、書類の不備や不足の対応も亡Fが行っていた。

本件各消費貸借契約では、通常の融資実行よりも早い日程で被告北洋銀行から訴外会社に送金されている場合がほとんどであったが、いずれも亡Fの要請によるものであった。

被告北洋銀行は、訴外会社とともに、本件各消費貸借契約を含む本件ローンの成約によって、自らの営業努力だけでは得られない多大な利益を上げ、本件担当者らは、訴外会社を取引先と呼び、亡Fの死亡は、本件支店のミーティングで周知された。

以上のとおり、被告北洋銀行と訴外会社とは、利害を共通にし、相互依存関係があったのである。

(イ) 原告主債務者らは、訴外会社に対し、以下の抗弁を有しており、原告らは、これをもって被告北洋銀行からの請求及び被告保証会社らからの請求を拒絶できる地位にある。

a 錯誤無効(購入原告ら及び借換原告ら)

購入原告ら(ただし、原告7は、消費貸借契約7Bについて)は、いずれも対象自動車を手に入れられると誤信し、訴外会社とそれぞれ本件売買契約を締結したが、訴外会社は、原告らに対象自動車を引き渡す意思又は名義変更する意思がなく、これらを行う能力もなかった。

原告7は、新しく購入する自動車7Aの代金相当額を被告北洋銀行から借り入れれば、訴外会社が、下取りなどによって、原告7の以前購入した自動車に関する債務(旧債務)を直ちに弁済してくれると信じて、売買契約7Aを締結したが、訴外会社は、上記債務を直ちに弁済する意思はなかった。

借換原告らは、訴外会社が、借換原告らの以前購入した自動車に関する債務を、直ちに弁済してくれると誤信し、そのために必要なものを誤信して、本件売買契約を締結したが、訴外会社は、上記債務を直ちに弁済する意思はなかった。

したがって、購入原告ら及び借換原告らの本件売買契約は、いずれも錯誤により無効である。

b 詐欺取消(購入原告ら及び借換原告ら)

亡Fは、購入原告ら(ただし、原告7については、売買契約7Bについて)に対し、その意思がないにもかかわらず、自動車を引き渡すなどと欺罔し、また、借換原告ら、原告7(ただし、売買契約7Aについて)及び原告25に対し、旧債務の返済をしておくなどと欺罔し、訴外会社が以前購入した自動車に関する債務を弁済してくれると誤信させて、本件売買契約を締結させた。

購入原告ら及び借換原告らは、訴外会社に対し、本件売買契約を取り消すとの意思表示をした。

c 債務不履行に基づく解除(購入原告ら及び借換原告ら)

訴外会社は、購入原告ら(ただし、原告8を除く)に対して(ただし、原告7については、売買契約7Bについて)、自動車の引渡し、原告8に対して、自動車の名義変更を行うことがいずれも不可能であり、借換原告ら、原告7及び原告25に対して(ただし、原告7については、売買契約7Aについて)、他の借入債務の返済処理の履行を行うことがいずれも不可能である。

購入原告ら及び借換原告らは、訴外会社に対し、本件売買契約を解除するとの意思表示をした。

d 通謀虚偽表示(名義貸原告ら)

名義貸原告らと亡Fとは、それぞれ通謀して、売買契約10、15、20、21及び22を仮装することを合意した。

したがって、上記各売買契約は、通謀虚偽表示により無効である。

e 同時履行の抗弁権(購入原告ら)

購入原告ら(ただし、原告8を除く)は、訴外会社に対し、それぞれ本件売買契約(ただし、原告7は、売買契約7Bについて)の代金支払について、対象自動車の引渡し及び名義変更手続との同時履行の抗弁権を有しており、これを行使する。

原告8は、訴外会社に対し、売買契約8の代金支払について、自動車8の名義変更手続との同時履行の抗弁権を有しており、これを行使する。

f 債務不履行による損害賠償請求権(原告27)

原告27は、別紙原告ら個別主張27①記載のとおりの事実関係があり、訴外会社と、訴外会社が労金の旧債務の支払をすることを合意しており、原告27が自ら上記旧債務の支払をした96万4926円について、訴外会社に対する債務不履行による損害賠償請求権を有している。

(ウ) 被告北洋銀行は、抗弁書到達後に、本件消費貸借契約について、原告らの一部から支払を受けているが、これは不法行為ないし不当利得に該当し、被告北洋銀行は、これらの原告に対し、同額の支払義務がある。

(エ) 被告北洋銀行は、抗弁書到達後に、原告24及び31に対し、北洋相殺24及び31をしているが、いずれも無効であり、原告24及び31の被告北洋銀行に対する預金払戻請求権は失われない。

(オ) 被告保証会社らは、被告北洋銀行と密接な関係にあり、被告保証会社らによる代位弁済があったか否かによって、割賦販売法30条の4第1項による支払拒絶の可否の結論が左右されるのは不当であるから、原告らは、被告北洋銀行に対して同項による支払拒絶ができる場合には、被告保証会社らに対しても、同項による支払拒絶ができるというべきである。

イ 被告ら

(ア) 前記アの主張のうち、(イ)dは認め、その余はいずれも争う。

(イ) 原告らは、原告主債務者らと被告北洋銀行との間の本件各消費貸借契約において、訴外会社の原告主債務者らに対する対象自動車の販売が条件であったかのように主張するが、そのような事実は存しない。

被告北洋銀行が自動車購入予定者を対象として融資を行う本件ローンにおいては、自動車販売業者から自動車を購入しようとする融資申込者に対し、広く自動車販売業者との間の売買契約の成立を前提として融資を行うものであり、訴外会社という特定の自動車販売業者からの自動車購入を条件として締結されるものではない。

また、原告主債務者らと訴外会社との間の本件売買契約等の代金は、被告北洋銀行から訴外会社に対して直接支払われたものではなく、原告主債務者らに渡された融資金から、原告主債務者らが訴外会社に対して支払ったものである。

本件各売買契約と本件各消費貸借契約は、同一機会、同一場所において締結されたことはなく、書式も同一ではない。本件各消費貸借契約の締結に亡Fが立ち会ったことはなく、本件各売買契約に本件担当者らが関与したこともない。また、訴外会社から自動車を購入しようとする場合、被告北洋銀行で融資を受けなければならない関係にはないから、両契約がともに存在するかしないかで片方の契約のみでは存在し得ない関係にはない。

被告北洋銀行と訴外会社との間に、提携契約やあっせん・仲介に関する委託契約は一切ない。仮に、亡Fが、原告主債務者らに、本件支店における本件ローンの申込みを勧めたとしても、被告北洋銀行との間であっせん・仲介料等の対価関係が生じるものではなく、事実上顧客が紹介されたという以上の関係はない。

また、事前審査申込書類があらかじめ訴外会社に交付され、訴外会社を通じた事前審査の申込みや結果通知が行われていたとしても、顧客の便宜のため一般的に行われている方法であり、事前審査手続は与信契約そのものではなく、その前段階の手続であるから、このような取扱いがされているからといって、販売業者等が継続的に金融機関等に顧客をあっせん・仲介等していることにはならない。

そして、北洋ローンの契約書式は、「ローン契約書(金銭消費貸借契約証書)」であり、札銀マイカーローンの契約書式は、「札幌銀行ローン申込書(兼金銭消費貸借契約証書)兼保証委託申込書(兼保証委託契約書)」であるが、いずれも消費貸借契約締結時に本件担当者らから原告主債務者らに交付されており、訴外会社には渡されていない。

以上のとおり、本件各消費貸借契約と本件各売買契約との間に密接牽連性はなく、本件各消費貸借契約は、「特定の販売業者が行う商品の販売等」を条件として締結されたものではないし、被告北洋銀行が「商品等の対価の全部又は一部に相当する金額を販売業者に交付」したものでもないから、本件各消費貸借契約は、割賦販売法2条3項2号所定の「個品割賦購入あっせん」にはあたらない。

したがって、原告らが主張する割賦販売法30条の4第1項による抗弁の対抗は、理由がない。

(5)  争点(5)(抗弁の対抗が信義則に反するか)について

ア 被告ら

(ア) 名義貸原告ら及び原告6は、亡Fとの間の通謀により、自動車購入予定がないにもかかわらず、それぞれ売買契約6、10、15、20、21及び22を仮装して、消費貸借契約6、10、15、20、21及び22を締結したものであり、これらの行為は、いずれも通謀虚偽表示にあたる。

(イ) 借換原告らは、実際はローンの借換目的であるのに、ローン契約書に自動車購入目的である旨記載して、本件担当者らをその旨信じさせたうえで、それぞれ消費貸借契約14、18及び26の申込を行ったもので、資金使途を偽った契約申込を行った。

(ウ) 前記(ア)及び(イ)のとおり、自動車購入目的が存しない名義貸原告ら、原告6及び借換原告らについては、信義則上、いずれも被告らに対して抗弁の対抗を主張し得ない。

イ 名義貸原告ら、原告6及び借換原告ら

(ア) 前記アの主張について、(ア)のうち名義貸原告らに関する部分は認めるが、その余はいずれも争う。売買契約6は、仮装されたものではない。

(イ) 名義貸原告ら及び借換原告らが被告北洋銀行との本件消費貸借契約に至ったのは、いずれも亡Fが主導し、亡Fの欺罔行為によって錯誤に陥り行われたもので、これによって名義貸原告ら及び借換原告らは利益を得ていない。名義貸原告ら及び借換原告らの関与は、受動的なものにすぎず、借換原告らが詐欺、錯誤等を、名義貸原告らが通謀虚偽表示を、それぞれ割賦販売法30条の4第1項の抗弁として主張することは、信義則に反するものではない。

第3当裁判所の判断

1  前記前提事実のほかに、以下の各事実が認められる。

(1)  本件ローンの手続等

前記前提事実に証拠(甲共21ないし23、乙共11ないし15、証人G、証人H、証人I)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件消費貸借契約を含む本件ローンの手続等はおおむね以下のとおりであったことが認められる。

ア 事前審査の手続

被告北洋銀行は、自動車購入を検討している者から、本件ローンの事前審査の申込みを受けると、これを保証会社に連絡し、保証会社は、申込者が希望する融資額・返済方法による融資について保証が可能かどうかを判断して、これを被告北洋銀行に連絡し、被告北洋銀行は、これを申込者に連絡する。この事前審査の申込みは、ファックスやインターネットによることも可能で、事前審査結果の申込者に対する連絡も、販売店を通じて行うことが可能とされていた。また、事前審査は、上記のとおり、保証会社が行い、被告北洋銀行の裁量で審査基準を緩やかにすることはできなかった。

本件各消費貸借契約の事前審査については、亡Fが、被告北洋銀行からあらかじめ交付されていたパンフレット及び事前審査申込書の用紙を使用して、原告主債務者らに作成させ、あるいは自ら作成し、必要書類をファックス送信するなどして本件支店に提出し、事前審査の結果も、亡Fを通じて原告主債務者らに伝えられ、本件各消費貸借契約の事前審査手続について、本件担当者らが、申込者である原告主債務者らと直接接触することはなく、申込から審査結果連絡までの全てを、亡Fを通じて行っていた。

イ 消費貸借契約締結の手続

本件ローンについて、事前審査が通った場合、消費貸借契約締結の手続として、借主は、被告北洋銀行との消費貸借契約関係の書類及び保証会社との保証委託契約関係の書類を作成することとなるが、これらの書類の作成については、借主自身が必要な部分を担当行員の面前で自書する扱いであった。

本件各消費貸借契約について、訴外会社の事務所でこれらの契約書類が作成されたことはなく、消費貸借契約7Aを除き、契約書類作成時に亡Fが立ち会ったことはなかったが、銀行窓口の営業時間外に、借主が本件支店に行って契約書類を作成することも多く、本件担当者らが借主の自宅や職場へ出向き、そこで契約関係の書類が作成されることもあった。

本件ローンについて、消費貸借契約の締結には、販売業者への自動車の注文書が必要であったが、原告主債務者らのうち、契約手続の際、訴外会社への注文書を持参しなかった者については、亡Fが、契約手続の前後に、被告北洋銀行に直接対象自動車の注文書を提出していた。

ウ 融資の実行日

本件ローンでは、原則として消費貸借契約の申込日(書類作成日)から2日後に融資を実行することとされていた。

しかし、本件各消費貸借契約については、営業時間内に来店した場合には当日中に、営業時間外に手続をした場合には翌日に、融資が実行されることが多かった。

エ 送金先の指定

本件ローンでは、自動車購入目的の場合、借主は、融資金を販売店の預金口座に送金することを、あらかじめ承諾しなければならず、原告主債務者らは、本件各消費貸借契約の申込み(書類作成)の際、本件担当者らの指示により、訴外会社の銀行口座を記載したり、訴外会社宛の振込依頼書を作成したりした。また、振込承諾書兼保証料振込承諾書欄に同意の署名捺印がある場合は、被告北洋銀行の側で代筆することが可能とされ、このような処理がされた者もあった。

オ 訴外会社関係の契約件数の増加

被告北洋銀行の訴外会社を販売店とする本件ローンの契約件数は、平成19年2月までは毎月1件程度で、多くても毎月2件くらいであったが、平成19年3月に5件、同年6月からは1か月に3ないし6件となり、平成20年5月には11件となって、その後平成20年末までの間、少ない月でも6件、多い月では11件となり、平成21年1月には3件、同年2月には4件、同年3月には6件となっていた。この当時、訴外会社を販売店とする本件ローンは、本件支店において契約した無担保ローンの約7割を占めており、本件担当者らもこれを認識していた。

(2)  原告らに対する亡Fの欺罔及び原告らと被告北洋銀行との関係について

前記前提事実及び前記(1)の認定事実に、証拠(甲共9の1・2、10の1~3、11の1~6、12の1~6、13、14の1~24、15ないし17、甲1の1、2の2、3の2、4の1~3、5の3、6の2、7の1、8の2、9の2、10の1~13、11の1、12の2~14、13の3、14の3~5、15の2、16の2、17の2、18の1~9、19の2~6、20の3・4の1~3、21の1、22の1・2の1~4、23の2~4、24の1、25の3、26の3、27の1・4・5、32の4、乙共11ないし15、原告1本人、同2本人、同4ないし10各本人、同12ないし14各本人、同16ないし24各本人、同26本人、同27本人、同32本人、証人G、同H、同I。ただし、陳述書、当事者本人の供述及び証人の証言については、以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると、別紙個別事情記載①及び②ⅰの各事実が認められる(ただし、以下アないしエに記載するとおり、一部の点については、これを認めることができない。)。

また、上記証拠等によれば、訴外会社は、平成19年ころから資金繰りが苦しくなり、しかも、これが次第に悪化していて、購入原告らに対象自動車を引き渡したり、対象自動車の登録名義を変更したりできる見込みも、名義貸原告ら及び借換原告らの債務を処理できる見込みもなかったこと、亡Fは、このような訴外会社の状況を十分認識していたこと、訴外会社は、不正な取引を行ってもなお、いわゆる自転車操業状態で、そのために、亡Fは、本件消費貸借契約の締結を急がせたり、融資の実行日をできるだけ早く指定したりさせていたことが認められる。

ア 原告3は、消費貸借契約3の契約手続は、本件支店の窓口営業が終了した時間外に行われた旨主張する。

しかし、Iは、これを否定する証言をしており、窓口営業時間外に手続が行われた場合には、即日融資を実行することはできないところ、消費貸借契約3については契約手続が行われた日に即日融資が実行されており、上記主張を認めることはできない。

イ 原告14は、消費貸借契約14締結の際、本件支店の窓口で、妻のJがHから固定電話を借りて、Hのすぐ横で亡Fに電話し、日立キャピタルに対するローンの返済について尋ねており、Hは、これを聞いていたから、消費貸借契約14が借換えのための契約であることを知っていた旨主張する。

そして、証拠(証人J、同H)及び弁論の全趣旨によれば、消費貸借契約14締結の際、本件支店の窓口で、原告14の妻Jが、Hから固定電話を借りて、Hの近くで亡Fに電話し、日立キャピタルに対するローンの返済について尋ねたことは認められる。しかし、これによって直ちにHが上記電話の内容を把握していたと認められるものではなく、Hは、記憶がない旨証言しており、Hが消費貸借契約14が借換えのための契約であることを知っていたと認めることはできない。

ウ 原告15は、消費貸借契約15の契約書と売買契約15の注文書の印影が銀行届出印の印影と異なっていたため、このままでは手続を進めることができず、Jが銀行届出印を本件支店に持参して書類に押印した旨主張する。

証拠(証人J、同H)によれば、消費貸借契約15の契約書と売買契約15の注文書の印影が銀行届出印の印影と異なっており、そのままでは手続を進めることができなかったことが認められる。ただし、その後、銀行届出印を本件支店に持参したのがJであったか否かは明らかでなく、これを認めることはできない。

エ 原告24は、契約書の記載欄の一部については自書しておらず、予め記入されていた旨主張し、本人尋問においても同趣旨の供述をしている。

しかし、Gは、これを否定する証言をしており、直ちに原告24の上記主張を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(3)  抗弁書の到達日について

証拠(甲2の1、5の1、8の1、12の1の1・2、13の1、14の1の1・2、15の1の1・2、16の1、17の1の1・2、20の1、23の1、25の1、26の1、32の1の1・2、乙13の5、32の5)及び弁論の全趣旨によれば、被告北洋銀行への抗弁書の到達日は、原告13(平成21年5月1日と認められる。)、原告32(平成21年5月27日と認められる。)及び原告27(抗弁書到達についての主張がない。)を除き、争いがあるものについても、いずれも原告らの主張のとおりであることが認められる。

2  前記前提事実及び前記1の認定事実をもとに、以下、各争点について判断する。

(1)  争点(1)(錯誤無効)について

ア 購入原告ら、原告14及び原告保証人らは、本件消費貸借契約の錯誤無効を主張する。

そして、本件消費貸借契約は、本件ローンによるもので、いわゆる目的ローンであり、資金使途が、本件マイカーローンでは、自動車の購入等に限定され、本件エコカーローンでは、さらに、低公害車(新車に限る。)の購入に限定されていたものである。

イ しかし、資金使途である自動車の購入についての売買契約と、その資金を融資する消費貸借契約とは、あくまで別個の契約である。そして、本件ローンは、目的ローンであるが、本件各購入原告消費貸借契約について、訴外会社からの自動車の購入という購入原告らの目的(資金使途)自体には、錯誤がない。資金使途の契約である売買契約について、売主が債務を履行する意思があることや債務を履行する能力があることは、当該売買契約の要素であったとしても、消費貸借契約の契約内容ではないし、消費貸借契約の当事者である借主の資金の使途自体でもなく、消費貸借契約の当事者である借主を当事者とする別の契約の相手方の問題であって、これらの契約が資金使途という点で関連するものではあっても、消費貸借契約の貸主と売買契約の売主とは直接の関係はないのであるから、消費貸借契約との関係では要素とはいえないものである。

したがって、購入原告ら及び原告保証人らの錯誤無効の主張は理由がない。なお、消費貸借契約の貸主と売買契約の売主との特別な関係等は、後記の抗弁の対抗との関係で検討されるべきものである。

ウ また、原告14は、消費貸借契約14について、Kが日立キャピタルに対して負っていた日立残債務を訴外会社が一括処理することが動機であり、これが表示されていた旨主張する。

本件ローンは、目的ローンであり、消費貸借契約による融資金の使途が限定され、契約書にも融資金の使途が記載され、表示されるもので、融資金も、自動車購入目的の場合には、販売店の預金口座に送金され、借換目的の場合には、旧債務の債権者の預金口座に送金されるのであって、借主が資金使途を偽った場合には、貸主に対する詐欺となる可能性もあるものであり、融資金の使途は、消費貸借契約の要素というべきである。

前記1(2)の認定のとおり、原告14は、Kの日立残債務の借換えが目的であったのに、そのための手続であると誤解して、自動車14の購入を目的とする消費貸借契約14を締結したことが認められる。しかし、原告14は、自動車14の購入を目的とする契約を締結し、融資金が訴外会社の預金口座に送金されることを認識していたものと認められ、この点において錯誤はない。そして、原告14に錯誤があったのは、亡Fが、訴外会社の預金口座に送金された融資金で、日立残債務の弁済をする意思があったか否かについてであり、結局は、前記(1)の購入原告らと同様に、資金使途である自動車の購入についての売買契約の売主の意思について錯誤があったにすぎないもので、要素の錯誤があったということはできない。原告14は、Kが日立キャピタルに負っていた日立残債務を訴外会社が一括処理することが動機として表示されていた旨主張するが、原告14は、契約書に自動車14の購入が目的である旨の記載をしているのであって、原告14の上記主張を認めるに足りる証拠はない。また、前記1(2)イのとおり、Jは、本件支店において、Hから固定電話を借りて亡Fと日立キャピタルに対するローンの返済について話をしていたことが認められるが、Hがその内容を認識していたと認めることはできないものである。

(2)  争点(2)(債務不履行解除について)

原告らは、被告北洋銀行には、原告主債務者らと本件各消費貸借契約を締結するに当たり、契約の当事者として相手方である原告主債務者らに不測の損害を与えないようにしなければならないという付随義務について、債務不履行があったから、本件各消費貸借契約を解除した旨主張する。

ところで、原告らの主張する上記付随義務は、仮にそのような義務があったとしても、被告北洋銀行は、本件各消費貸借契約の資金を約定どおり入金済みであり、その後で原告らの主張する付随義務を履行するということは考えられないから、既に履行不能となっているものといえる。

そうすると、被告北洋銀行は、本件各消費貸借契約の貸金を約定どおり交付済みであり、仮に原告らが主張するような付随義務があって、これが履行不能になったとしても、契約の本質的でない一部の履行不能というべきものであるから、その性質上、本件各消費貸借契約を解除することはできないといわざるを得ない。

したがって、原告らの上記債務不履行解除の主張は理由がない。

(3)  争点(3)(共同不法行為について)

原告らは、本件各消費貸借契約について、被告北洋銀行(本件担当者ら)の行為は、訴外会社との共同不法行為に該当する旨主張する。

そして、前記1のとおり、被告北洋銀行は、亡Fから本件ローンの借主の紹介を受けていたこと、訴外会社を販売店とする本件ローンの契約件数が急激に増加し、本件支店における無担保ローンの約7割を占めるまでに至っていたこと、本件担当者らも、これを認識していたことが認められ、原告らの多くが、本件支店の窓口営業時間外又は本件支店の店舗外で本件消費貸借契約又は本件連帯保証契約の手続をしていること、事前審査書類を自書していなかったり、注文書を持参しなかったりした者もあったことなど、前記1(2)のとおりの個別的な事情も認められる。

しかし、被告北洋銀行や本件担当者らが、訴外会社が行う本件売買契約等の自動車の販売に関与するなどした事実は認められないし、被告北洋銀行や本件担当者らが、訴外会社の財務内容を知っていたことを認めるに足りる証拠はないのであり、亡Fの金銭詐欺の意図を認識し、あるいは、容易に認識し得たということはできず、上記各事実があったからといって、訴外会社が行う売買契約についての履行の可能性を調査すべき義務等が生じていたとは認められない。その他、原告らの主張する事情等を勘案しても、被告北洋銀行や本件担当者らの原告らに主張する義務があったということはできない。

したがって、原告らの共同不法行為の主張は理由がない。

(4)  争点(4)(割賦販売法の適用)について

ア 割賦販売法の適用について

割賦販売法2条3項2号によれば、割賦購入あっせんとは、証票等を利用することなく、特定の販売業者が行う購入者への指定商品若しくは指定権利の販売又は特定の役務提供事業者が行う役務の提供を受ける者への指定役務の提供を条件として、当該指定商品若しくは当該指定権利の代金又は当該指定役務の対価の全部又は一部に相当する金額を当該販売業者又は当該役務提供事業者に交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)し、当該購入者又は当該指定役務の提供を受ける者から二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して当該金額を受領することをいう。

本件ローンは、自動車購入目的の場合、融資金が一旦は借主の預金口座に振り込まれるものの、借主がこれを自由に使用することはできず、ローン契約において予定されている販売業者(売買代金について)及び保証会社(保証料について)以外の者に融資金が交付されることがない仕組みとなっており、ローン契約(消費貸借契約)の成立時に、融資金の使途が限定され、与信業者(被告北洋銀行)、購入者及び販売業者も具体的に特定されるものである。さらに、本件ローンでは、購入者が、保証会社に保証委託することを要求しており、ローン契約の成立時に、保証会社も具体的に特定されるものである。そして、事前審査の手続として、与信業者(被告北洋銀行)は、事前審査申込書を保証会社に送信し、保証会社は、事前審査申込書に基づき、購入者の信用状況を調査し、契約できるか否か、保証人による保証を要求するか否かを判断して、与信業者(被告北洋銀行)に連絡することとされていた。

また、本件ローンでは、事前審査申込書が与信業者(被告北洋銀行)に提出される時点において、必要書類として購入見積書等の提出を要求するなど、既に、販売業者も具体的に特定されるものである。そうすると、本件ローンの取扱いとして、販売業者については実在性のみの調査を行い、信用状況等の調査は行われていなかったことが認められるものの、与信業者(被告北洋銀行)及び保証会社は、本件ローンの契約(消費貸借契約)締結前に、販売業者について、信用状況等を調査することも、不可能ではなかったものと認められる。

そして、本件では、与信業者(被告北洋銀行)は、本件ローンのパンフレット及び事前審査申込書を、販売業者である訴外会社に、あらかじめ交付していた(事前預託があった。)。ところで、与信業者(被告北洋銀行)は、販売業者に本件ローンのパンフレット及び事前審査申込書を交付する前に、これを交付するか否かを判断するために、販売業者について、信用状況等を調査することが可能である。また、この段階で販売業者の信用状況等を調査しておけば、時期が近接していれば、購入者から事前審査申込書が提出された後に販売業者の信用状況等を調査する必要がないし、時期が近接していない場合でも、販売業者の信用状況等の調査は容易であるから、与信業者(被告北洋銀行)に、販売業者の信用状況等を調査することを要求しても、円滑な契約締結の妨げとなることはない。

他方、購入者の側からすれば、金融機関のローン契約のパンフレット及び事前審査申込書が、与信業者から販売業者に、あらかじめ交付されている場合には、与信業者を販売業者から紹介されるという点において、与信業者が信販会社である場合と差異はない。

また、いわゆる保証委託型クレジットと対比すると、保証委託型クレジットでは、金融機関からの貸付金の交付及び販売業者への売買代金の支払が信販会社を通じて行われ、金融機関への貸付金の返済も信販会社を通じて行われるのに対し、本件ローンでは、貸付金の交付及び売買代金の支払が購入者の預金口座を通じて行われ、貸付金の返済も購入者から直接金融機関(被告北洋銀行)に対して行われるものであるが、その他の点では、両者とも、購入者、販売業者及び金融機関のほか、信販会社が関与し、購入者と販売業者との間で売買契約、購入者と金融機関との間で消費貸借契約、購入者と信販会社との間で保証委託契約が締結されるもので、大差のないものである(なお、割賦販売法2条3項2号によれば、代金に相当する金額の販売業者への交付については、「販売業者以外の者」を通じた販売業者への交付を含むものであり、上記「販売業者以外の者」は、信販会社等である必要はなく、購入者自身であっても差し支えないものというべきである。)。

そして、仮に、本件ローンについて、購入者からの抗弁の対抗を受けないとすると、与信業者(被告北洋銀行)及び保証会社は、本件ローンのパンフレット及び事前審査申込書を販売業者に交付して、契約希望者の紹介を依頼し、これに基づき、販売業者から与信を希望する購入者の紹介を受けるという利益を受けながら、販売業者に関するリスクは免れることとなるのであって、購入者との関係で、はなはだ不公平な事態となる。なお、本件ローンのパンフレット及び事前審査申込書は、販売業者以外の被告北洋銀行の取引先等に交付して備え置くなどしてもらうことも考えられるものであり、このような扱いが一般的に行われていたとしても、販売業者に交付される場合とは、実質的な趣旨が異なっているものと評価される。

以上によれば、本件ローンについて、被告北洋銀行がパンフレット及び事前審査申込書を事前に交付している販売業者から、与信を希望する購入者を紹介された場合には、与信業者(被告北洋銀行)及び保証会社は、顧客を紹介されるという利益を受けているのであり、契約締結前に販売業者の信用状況等を調査することについても、実際には行っていなかったとしても、パンフレット及び事前審査申込書を交付する時点や事前審査の時点でこれを行うことが可能だったのであるから、購入者から抗弁の対抗を受けることも不相当とはいえないのである。本件においては、本件ローンのパンフレット及び事前審査申込書が、与信業者(被告北洋銀行)から、あらかじめ販売業者(訴外会社)に交付されていた(事前預託があった)のであり、これに基づいて販売業者(訴外会社)から与信希望者を紹介されていたのであるから、販売業者(訴外会社)と与信業者(被告北洋銀行)との密接な関係が継続的に存在していたのであって、訴外会社は、「特定の販売業者」に該当するということができ、訴外会社から紹介を受けた本件ローンは、「割賦購入あつせん」に該当するというべきである。

さらに、前記1のとおり、本件では、事前審査申込書の作成に販売業者(訴外会社)が関与し、事前審査申込書は、販売業者(訴外会社)から与信業者(被告北洋銀行)に提出され、購入者への与信審査結果の連絡も販売業者(訴外会社)を通じて行われていたこと、契約手続を行う日時、場所等は、営業時間外や借主の自宅や職場で行うものも含め、亡Fから本件担当者らに伝えられ、本件担当者らは、これに従って本件各消費貸借契約締結の手続を行っていること、契約に必要とされる注文書の提出が、亡Fによって追完されることもあったこと、契約件数も長期にわたり非常に多かったことからすると、消費貸借契約締結に至るまでに要する労力の相当部分を訴外会社ないし亡Fが引き受けていたもので、販売業者(訴外会社)と与信業者(被告北洋銀行)との関係は、より密接かつ継続的なものであったということができ、自動車の販売契約(本件売買契約)とその購入資金の消費貸借契約(本件消費貸借契約)との関係も極めて密接なものであったということができるのであって、このような事実関係の下では、被告北洋銀行は、購入者から割賦販売法30条の4第1項所定の抗弁の対抗を受けることを免れることはできないものというべきである。

そして、本件ローンでは、被告保証会社らは、本件消費貸借契約について、与信業者(被告北洋銀行)から購入者の信用調査を任され、被告保証会社らの信用調査で与信が可とされた場合に、与信業者(被告北洋銀行)は本件消費貸借契約を締結し、被告保証会社らは本件保証委託契約を締結することとされ、本件保証委託契約締結の手続(契約書の作成手続)については、与信業者(被告北洋銀行)が行っていたものである。

そうすると、被告保証会社らは、与信業者(被告北洋銀行)と役割分担して相互に補充し合う一体の地位にあったのであって、与信業者(被告北洋銀行)とともに、購入者から割賦販売法30条の4第1項所定の抗弁の対抗を受けるものというべきである。

イ 訴外会社に対する抗弁について

(ア) 前記1(2)のとおり、訴外会社は、自動車の売買契約を締結しても、その売主として対象自動車を仕入れて買主に引き渡し、移転登録する債務を履行できる経営状況にはなかったのに、亡Fは、このような訴外会社の経営状況を知らない購入原告らに対し、これを秘して、本件売買契約を締結させていったものであり、購入原告らは、上記のような訴外会社の経営状況を知っていれば、いずれも売買契約を締結することはなかったものと認められ、購入原告らの本件売買契約は、いずれも訴外会社の詐欺によって締結されたものであるし、購入原告らには、本件売買契約について、いずれも要素の錯誤があったというべきである。

本件ローンは、借換えを行うのであれば、訴外会社との売買契約を締結するのではなく、融資金も訴外会社ではなく、元の貸主に振り込まれることとなるのに、前記1(2)のとおり、亡Fは、借換原告らに対し、訴外会社が被告北洋銀行からの融資金を取得する目的で、借換えのために訴外会社との売買契約が書類上必要であるかのように欺き、これを誤信した借換原告らに、本件売買契約を締結させていったもので、借換原告らは、上記のような事情を知っていれば、本件売買契約を締結することはなかったものと認められ、借換原告らの本件売買契約は、いずれも訴外会社の詐欺によって締結されたものであるし、借換原告らには、本件売買契約について、いずれも要素の錯誤があったというべきである。

なお、購入原告ら及び借換原告らは、訴外会社に対し、詐欺による取消しの意思表示をした旨主張するが、意思表示をした日も特定されておらず、これを認めるに足りる証拠はない。

(イ) 前記1(2)のとおり、名義貸原告らと訴外会社との本件売買契約は、通謀虚偽表示によるものであったと認められる。

(ウ) また、前記前提事実によれば、前記1(2)で認定した亡Fが原告主債務者らに約束した内容について、少なくとも亡Fの死亡時には、訴外会社がこれを履行することは不能となったものと認められる。

しかし、原告らは、訴外会社に対し、解除の意思表示をした旨主張するが、意思表示をした日も特定されておらず、これを認めるに足りる証拠はない。ただし、原告2及び6については、前記1(2)の認定のとおり、亡Fの死亡前に、訴外会社の履行遅滞を理由に、それぞれ売買契約2及び6を解除したことが認められる。

(エ) 購入原告ら(ただし、原告8を除く)は、訴外会社に対し、それぞれ本件売買契約(ただし、原告7は、売買契約7Bについて)の代金支払について、対象自動車の引渡し及び名義変更手続との同時履行の抗弁権を有しており、原告8は、訴外会社に対し、売買契約8の代金支払について、対象自動車の名義変更手続との同時履行の抗弁権を有しており、いずれもこれを主張している。

(オ) 原告27は、前記1(2)の認定のとおり、訴外会社に対し、原告27自ら旧債務の支払をした96万4926円について、債務不履行による損害賠償請求権を有していることが認められる。

(5)  争点(5)(信義則違反)について

ア 被告らは、名義貸原告ら、借換原告ら及び売買契約6を仮装した原告6が、割賦販売法30条の4第1項により抗弁を対抗することは、信義則に反する旨主張する。

イ 原告6について、Hは、亡F死亡後、原告6が本件支店に来店し、売買契約6が仮装されたものであることを述べていた旨証言する。しかし、原告6はこれを否定する供述をしており、上記Hの証言を直ちに採用することはできず、他に売買契約6が通謀虚偽表示であったことを認めるに足りる証拠はない。

ウ 名義貸原告らについては、いずれも訴外会社と売買契約等の取引を行う目的も、旧債務の借換えをする目的もなく、被告北洋銀行からの融資金を必要とする事情はなかったもので、亡Fとともにこれを仮装するものであることを認識しながら本件売買契約及び本件消費貸借契約を締結したのであるから、名義貸原告らが認識していた事実のとおりであったとしても、被告北洋銀行に対する詐欺行為となるものであって、このような仮装行為が、亡Fが主導したもので、名義貸原告らはそれに協力しただけで、名義貸原告らが、これによって自ら利益を得ていたり、自ら利益を得る目的があったりはせず、名義貸原告らに違法性の意識がなかったとしても、信義則上、売買契約が通謀虚偽表示であったこと、債務の弁済の約束など一部訴外会社に騙された部分があったことなどを、割賦販売法30条の4第1項により対抗することは許されないというべきである。

エ これに対し、借換原告らについては、本件ローンでは、自動車の購入のほか旧債務の借換えも可能とされており、借換原告らは、借換目的で本件ローンを締結することもできたのであって、借換原告らが、融資金の使途を自動車購入として本件消費貸借契約を締結したのは、亡Fの欺罔によるもので、これが正されなかったことについては、本件担当者らが、亡Fの紹介する内容に疑いを持たず、確認が不十分であったことも大きく影響しているものと認められ、借換原告らが錯誤無効等を抗弁として対抗することが信義則に反するということはできない。

オ 以上によれば、原告6及び借換原告らは、それぞれ債務を負担する被告らに対し、錯誤による無効等を対抗することができるが、名義貸原告らは、通謀虚偽表示による無効を対抗することはできないというべきである。

3  結論

以上のとおり、本件消費貸借契約についての、購入原告ら及び原告14の、錯誤無効(争点1)の主張、原告らの、被告北洋銀行の債務不履行(争点2)及び共同不法行為(争点3)の主張はいずれも理由がないが、原告らの、割賦販売法30条の4第1項の適用(争点4)の主張は理由がある。

また、被告らの、名義貸原告ら、借換原告ら及び原告6による割賦販売法30条の4第1項所定の抗弁の対抗の信義則違反(争点5)の主張は、名義貸原告らについては理由があり、借換原告ら及び原告6については理由がない。

したがって、購入原告ら、借換え原告ら及び原告保証人らは、本件売買契約の錯誤による無効、原告2及び6は、本件売買契約の解除、購入原告ら(ただし、原告8を除く)は、本件売買契約(ただし、原告7は、売買契約7Bについて)の対象自動車の引渡し及び名義変更手続との同時履行の抗弁権、原告8は、自動車8の名義変更手続との同時履行の抗弁権を、それぞれ関係する被告らに対抗することができるが、名義貸原告らは、通謀虚偽表示による無効を、いずれも関係する被告らに対抗することができない(A事件、F事件及びG事件)。

そうすると、本件消費貸借契約についての、抗弁書到達後の被告北洋銀行への支払は、いずれも法律上の原因のないものであり、被告北洋銀行は、これらを不当利得としてそれぞれ返還する義務があり、抗弁書到達後に被告北洋銀行が行った北洋相殺24及び31は、いずれも無効であり、原告24及び31は、被告北洋銀行に対する各預金返還請求権を失わず、これらを有している(A事件、F事件及びG事件)。

また、原告27は、訴外会社に対する96万4926円の債務不履行による損害賠償請求権を、被告北洋銀行及び被告オリコに対抗することができる(A事件)。

そして、被告ノースパシフィックの請求については、名義貸を行った原告20及び21については、割賦販売法30条の4第1項による抗弁の対抗が認められず、いずれも理由があるが、原告25及び26については、割賦販売法30条の4第1項による抗弁の対抗が上記のとおり認められ、いずれも理由がない(B事件ないしE事件)。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長谷川恭弘 裁判官 黒田真紀 裁判官戸畑賢太は、てん補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 長谷川恭弘)

【別紙】当事者目録

[A(平成21年(ワ)第4085号)事件]

原告 X1~X31

被告 株式会社北洋銀行(略称「被告北洋」)

同代表者代表取締役 A

被告 ノースパシフィック株式会社(略称「被告ノースパシフィック」)

同代表者代表取締役 B

被告 株式会社オリエントコーポレーション(略称「被告オリコ」)

同代表者代表取締役 C

被告 株式会社セディナ(略称「被告セディナ」)

同代表者代表取締役 D

被告 株式会社ジャックス(略称「被告ジャックス」)

同代表者代表取締役 E

[B(平成21年(ワ)第3592号)事件]

原告 ノースパシフィック株式会社(被告ノースパシフィック)

被告 X21

[C(平成21年(ワ)第3701号)事件]

原告 ノースパシフィック株式会社(被告ノースパシフィック)

被告 X26

[D(平成21年(ワ)第3592号)事件]

原告 ノースパシフィック株式会社(被告ノースパシフィック)

被告 X25

[E(平成21年(ワ)第3703号)事件]

原告 ノースパシフィック株式会社(被告ノースパシフィック)

被告 X20

[F(平成22年(ワ)第866号)事件]

原告 X32

被告 株式会社北洋銀行(被告北洋)ノースパシフィック株式会社(被告ノースパシフィック)

【別紙】訴訟代理人目録

原告ら訴訟代理人弁護士 中村誠也

伊藤考一・猪野亨・太田宏樹・小川里美

黒川貢・小林由紀・佐藤昭彦・佐藤真吾

島田度・竹之内洋人・下矢洋貴・中島正博

畠山興一・松本佳織・村越仁・吉田友樹示

被告北洋訴訟代理人弁護士 諏訪裕滋

中村歩

被告ノースパシフィック訴訟代理人弁護士 髙橋和央

深村真人

被告オリコ訴訟代理人弁護士 神﨑浩昭

髙石博司・高橋直

横山順一・若山和秀・松本宗道

被告セディナ訴訟代理人弁護士 水原清之

愛須一史・瀧澤啓良

同訴訟復代理人弁護士 福岡宏保

被告ジャックス訴訟代理人弁護士 薄木宏一

河口直規

同訴訟復代理人弁護士 放上鳩子

【別紙】予備的請求目録(1)、(2)<省略>

訴訟費用負担目録<省略>

原告ら請求一覧<省略>

契約一覧表(1)、(2) <省略>

個別事情<省略>

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