札幌地方裁判所 平成8年(ワ)2977号 判決
住所<省略>
原告
X1
住所<省略>
原告
X2
住所<省略>
原告
X3
同所
原告
X4
同所
原告
X5
同所
原告
X6
右二名法定代理人親権者父
X3
同母
X4
住所<省略>
原告
X7
同所
原告
X8
住所<省略>
原告
X9
同所
原告
X10
同所
原告
X11
右二名法定代理人親権者父
X9
同母
B
住所<省略>
原告
X12
住所<省略>
原告
X13
同所
原告
X14
原告ら訴訟代理人弁護士
藤田美津夫
住所<省略>
被告
Y1
住所<省略>
被告
Y2
右二名訴訟代理人弁護士
小野塚聰
右訴訟復代理人弁護士
森越壮史郎
住所<省略>
被告
Y3
住所<省略>
被告
Y4
住所<省略>
被告
Y5
右三名訴訟代理人弁護士
山本隆行
住所<省略>
被告
Y6
住所<省略>
被告
Y7
住所<省略>
被告
Y8
住所<省略>
被告
Y9
右四名訴訟代理人弁護士
橋本智
住所<省略>
被告
Y10
住所<省略>
被告
Y11
住所<省略>
被告
Y12
住所<省略>
被告
Y13
右四名訴訟代理人弁護士
伊東孝
水沼功
主文
一 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9は、原告らに対し、各自、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 原告X1に対し、一五〇万円
(二) 原告X2に対し、一五〇万円
(三) 原告X3に対し、九〇万円
(四) 原告X4に対し、九〇万円
(五) 原告X5に対し、五〇万円
(六) 原告X6に対し、九〇万円
(七) 原告X7に対し、九〇万円
(八) 原告X8に対し、九〇万円
(九) 原告X9に対し、五二万円
(一〇) 原告X10に対し、四万七五〇〇円
(一一) 原告X11に対し、四万七五〇〇円
(一二) 原告X12に対し、五二万五〇〇〇円
(一三) 原告X13に対し、五〇万二五〇〇円
(一四) 原告X14に対し、五〇万円
二 被告Y4は、左の原告らに対し、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 原告X1に対し、五〇万円
(二) 原告X2に対し、五〇万円
(三) 原告X3に対し、一〇万〇六〇〇円
(四) 原告X4に対し、一〇万〇六〇〇円
(五) 原告X6に対し、一〇万〇六〇〇円
(六) 原告X7に対し、一〇万〇六〇〇円
(七) 原告X8に対し、一〇万〇六〇〇円
(八) 原告X10に対し、四万七五〇〇円
(九) 原告X11に対し、四万七五〇〇円
三 原告らの被告Y4に対するその余の請求、被告Y3、被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13に対する各請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告らに生じた費用の一三分の七と、被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9について生じた費用を右被告らの負担とし、原告X1及び原告X2について生じた費用の三九分の二と、原告X3、原告X4、原告X6、原告X7及び原告X8について生じた費用の一一七分の五、原告X10及び原告X11について生じた費用の一三分の二と被告Y4に生じた一四分の三を被告Y4の負担とし、原告らに生じたその余の費用、被告Y4に生じた費用の一四分の一一と被告Y3、被告Y10、被告Y11、被告Y12、被告Y13に生じた費用を原告らの負担とする。
五 この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告らに対し、各自、次の金員とこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 原告X1に対し、一五〇万円
(二) 原告X2に対し、一五〇万円
(三) 原告X3に対し、九〇万円
(四) 原告X4に対し、九〇万円
(五) 原告X5に対し、五〇万円
(六) 原告X6に対し、九〇万円
(七) 原告X7に対し、九〇万円
(八) 原告X8に対し、九〇万円
(九) 原告X9に対し、五二万円
(一〇) 原告X10に対し、四万七五〇〇円
(一一) 原告X11に対し、四万七五〇〇円
(一二) 原告X12に対し、五二万五〇〇〇円
(一三) 原告X13に対し、五〇万二五〇〇円
(一四) 原告X14に対し、五〇万円
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
(一) 原告らは、a市民生活協同組合(以下「市民生協」という)の組合員及びその家族であり、市民生協に対し、平成三年四月一日以降、別紙一のとおりの組合債(貸金債権)を有している。
(二) 被告らは、次のとおり、市民生協の役員若しくは幹部職員であった者である。その詳細は、別紙二のとおりである。
(1) 被告Y1
昭和六三年度から理事長
(2) 被告Y3
平成六年度から副理事長
(3) 被告Y6
昭和六一年度から常務理事
平成七年度から専務理事
(4) 被告Y2
昭和六一年度から常務理事
(5) 被告Y9
昭和六三年度から常務理事
(6) 被告Y7
昭和六〇年度前から平成五年度まで専務理事
(7) 被告Y8
昭和六三年度から常勤理事
平成三年度から平成五年度まで常務理事
(8) 被告Y4
平成七年度から常勤理事
(9) 被告Y10
平成二年度から監事
(10) 被告Y11
平成四年度から監事
(11) 被告Y12
平成四年度から監事
(12) 被告Y13
平成六年度から監事
(13) 被告Y5
昭和六三年度から参事・管理副本部長
平成三年度から参事・管理部長
2 市民生協の粉飾経理と組合債発行
(一) 市民生協は、昭和五〇年代から昭和六〇年代にかけて、慢性的な赤字経営に陥っていた。昭和六〇年から昭和六三年までの間に、営業店舗を子会社に売却して赤字を補てんした。しかし、従前からの赤字四億円を解消しえず、貸借対照表上に架空資産を計上した。また、右店舗売却代金のうち三億八〇〇〇万円は回収不能であった。しかし、そのまま未収債権として計上した。昭和六三年の会計決算において、合計七億八〇〇〇万円の架空資産を計上した。
(二) 市民生協は、平成元年度以降、利益の過大計上、経費の過少計上などの経理操作により、あるいは同一物件についての多重リース契約の締結などにより、表面上の利益を捻出し、本来赤字であるのに利益を生じているかのような粉飾経理を行った。平成元年度からの六年間で、粉飾額は、三三億八八〇〇万円に及んだ。
(三) 市民生協は、建物付属設備等の償却資産につき、法定耐用年数による適正な減価償却をせず、決算書類上資産価値が残存しているかのような虚偽の会計処理を行った。平成七年三月時点で、減価償却不足は合計八億〇三〇〇万円に達した。
(四) 右のような粉飾経理により、平成七年三月時点で、粉飾額の総額は四九億七一〇〇万円に達した。市民生協は、毎年の総代会において、虚偽の決算報告を行い、経営の破綻を隠ぺいしてきた。
(五) 組合債は、組合員のみを対象とし、組合の信用のみに基づく無担保の借入金である。日本生活協同組合連合会の指導基準において、組合債について、施設などの投資目的に資すること、発行残高は余力担保能力の七〇パーセント以内とすること、組合債の保有資格は一定額以上の出資者に限定すべきことが定められている。厚生省の昭和四五年七月一六日付け通達も、組合債の使途を明確に限定し、償還が実質的に保証される範囲内に留めるべきとしている。
市民生協は、右基準を無視し、組合債の発行による資金で市民生協の欠損を補てんするため、毎年度の理事会及び総代会において、新規店舗の建設等の投資目的のため組合債の発行が必要である旨虚偽の提案をし、平成二年度から平成六年度までの間に合計三一億四九〇〇万円の組合債を発行した。
組合債の発行残高に対する担保余力額の割合は、粉飾された資産額の六〇ないし七〇パーセント程度に過ぎなかった。かかる粉飾決算を続ければ、やがて市民生協の経営が破綻し、組合債の償還が不能となるにもかかわらず、市民生協は、組合債の発行を続けた。
3 和議手続
(一) 市民生協は、平成八年三月四日、釧路地方裁判所に和議開始を申し立てた。釧路地方裁判所は、平成八年六月二四日、和議開始を決定した。平成八年一〇月三〇日、和議を認可した。和議認可決定は、平成八年一一月二九日、確定した。
(二) 認可の和議条件において、組合債債権者に対する弁済方法は、次のとおり定められた。
(1) 組合債債権者は、市民生協に対し、和議債権元本及び利息のうち二五パーセントを免除し、市民生協は、組合債債権者に対し、和議開始決定日の前日までに支払期が到来している債権については、平成一三年一月二二日限り支払い、その他の債権については、約定の償還期限から五年を経過したときに支払う。
(2) 本件和議開始決定日以降の金利は、年一パーセントの割合とし、元本償還時に付加して支払う。
4 被告らの不法行為責任
(一) 被告らは、それぞれ理事長、副理事長、常任理事、常勤理事、監事、管理部長の立場で、市民生協の粉飾決算に関与し、市民生協が多額の累積欠損により経営が破綻して組合債の償還が不能となることを十分に認識しつつ、あるいは予見可能であったにもかかわらず、原告ら組合員に対し、虚偽の決算報告を行い、組合債による資金を赤字のてん補にあてることを隠し、新規投資のために必要である旨の虚偽の説明を行い、償還の可能性の乏しい組合債を安全確実で有利な投資であるかのように誤解させる組合債の発行決定及び募集手続に関与し、原告らに対し、市民生協の倒産により無価値となる組合債を取得させる損害を被らせた。
(二) 被告らの不法行為の具体的な態様は、次のとおりである。
(1) 平成五年以前の粉飾経理は、専務理事であった被告Y7及び常務理事であった被告Y8が中心となり、参事職・管理副本部長であった被告Y5に具体的な会計書類を作成させる方法によって行われた。右被告らは、自ら、粉飾決算を行って、原告らに損害を被らせた。
(2) 被告Y7が中心となって作成された粉飾決算は、常勤理事会又は拡大常勤理事会にかけて決定された。常勤理事会を構成する理事長、常務理事、常勤理事は、それぞれ市民生協の各事業本部長を兼務し、財務に関する案件を検討していたから、市民生協の経営実態が悪化していることを熟知していた。常勤理事会に利益配当の出る決算書類が提出されている以上、決算書類の内容が虚偽であることにつき認識があった。
常務理事らは、右のような経営状況、決算状況を把握していたのであるから、これを理事会に報告し、連合会や監督官庁に相談して、抜本的な経営改善策を図るべきであったのに、これを怠り、原告らの組合債の償還が不能になる損害を被らせた。
(3) 被告Y7及び被告Y8が平成五年に退任した以後、被告Y1、被告Y6及び被告Y2が中心となり、常任理事ら全員で、実態を反映した決算書類と粉飾した決算書類の双方を前にしながら、ほぼ毎月、粉飾方法の検討がなされ、粉飾が重ねられた。副理事長であった被告Y3も常勤理事会に出席している。
右決算に関与した被告らは、原告らに生じた損害を賠償する責任がある。
(4) 被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13は、監事であり、毎事業年度に四回監査を行い、組合財産の状況や理事らの業務執行について不正の有無を調査してそれを報告すべき責任があったにもかかわらず、粉飾経理の事実を知りながら、又は不十分な調査によりこれを看過し、各年度の総代会において、決算書類が生協会計基準に準拠し、組合の財政状態及び経営成績を正しく示している旨の虚偽ないし誤った監査報告をした。
監事である被告らは、その不十分な監査により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。
(5) 被告Y5は、市民生協の参事・管理副本部長として、市民生協の粉飾経理の実情を知悉しながら、組合債の募集事務の管理者となり、組合債が銀行預金と同程度に安全確実かつ高利回りで有利であるとして勧誘する事務の指揮を執った。
被告Y5も、償還不能な組合債を取得した原告らに対し、損害賠償の責任を負う。
(三) 被告らのうち、原告らが組合債を購入後に役員等に就任した者も、就任後に、粉飾経理の実態を理事会や総代会等で検討、報告し、監督官庁に報告するなどの措置をとっていれば、原告らは、組合債を解約して払い戻しを受けるなどの方法がとれたから、原告らが組合債を購入した後に役員に就任した被告らも、就任前に組合債を購入した原告らに対し、損害賠償の責任を負う。
5 損害額
原告らは、和議認可決定により、それぞれ所有する組合債の元本及び利息の二五パーセントが免除されることになり、少なくとも元本の二五パーセントに相当する金銭を失う損害を被った。
原告らの組合債のうち、被告らが役員等に就任する前に預け入れられて更新されたものについても、期間満了のたびに再度預け入れられたものであり、従前の組合債とは同一性がなく、預入れの際に、組合の財産状況を考慮して、預入れを継続するか否かの検討を行っており、被告らが粉飾経理を行っていることが分かれば、預入れを継続せず、払戻しを受けていた。
6 よって、原告らは、それぞれ、被告ら各自に対し、請求の趣旨のとおり、共同不法行為に基づく損害賠償として、組合債の元本額の二五パーセントに相当する金員及び不法行為の日以後の日である平成八年一一月二九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する答弁
(被告Y1及び被告Y2。以下あわせて「被告Y1ら」という)
1 請求原因1(一)のうち、原告らが市民生協の組合員及びその家族であることは認める。(二)のうち、被告Y1及び被告Y2の役職は認める。
2 請求原因2は否認する。
3 請求原因3は認める。
4 請求原因4は争う。
5 請求原因5は否認する。
6 被告Y1らの主張
(一) 被告Y1
被告Y1は、昭和六三年に理事長に就任して以来、昭和五〇年代からの経理操作の慣行を踏襲した。具体的な会計処理の内容についてはほとんど知らされず、利益対策についても報告を受けなかった。部下に対し、会計処理について、指示命令することは、不可能であった。
仮に、会計処理に不適切な点があったとしても、市民生協の経営状況を向上させるべく虚偽の決算処理を意図的に策したものではないので、違法性及び故意・過失がない。
(二) 被告Y2
常勤理事会はトップダウン方式で決定されていた。被告Y2が会計処理について積極的に関与できる立場にはなかった。
仮に、不適切な利益操作があったとしても、市民生協の経営状況を向上させるべく虚偽の決算処理を意図的に策したものではないので、被告Y2に違法性及び故意・過失がない。
(被告Y3、被告Y4及び被告Y5。以下あわせて「被告Y3ら」という)
1 請求原因1(一)は認める。(二)のうち、被告Y3及び被告Y4の役職、被告Y5が参事職として財務を担当していたことは認める。
2 請求原因2は否認する。
3 請求原因3は認める。
4 請求原因4は争う。
5 請求原因5は否認する。
6 被告Y3らの主張
(一) 会計処理
市民生協の経理は、会計処理として違法性を有する利益操作ではなく、継続して存続していく組合を前提とした経営判断としてなされたものであり、許容範囲内である。
(二) 権利侵害
生活協同組合には、商法二六六条の三等の規定の適用がない。その役員等の不法行為責任は、市民生協に対する職務としての善管注意義務ではなく、個々具体的な市民生協の債権者で第三者である原告らに対する注意義務が問題となる。
被告Y3らは、原告らが組合債を購入するに当たり、原告らに対し、組合債の募集行為を行ったことはないし、市民生協の経営内容について虚偽の内容を説明したものでもない。被告Y3らは、原告らと市民生協との間の取引行為に何ら関与していないし、それに基づく注意義務もない。
(三) 因果関係
市民生協は、組合債の募集に関し、利率改定時に生協組合員情報にその旨を店頭表示するのみで、組合員に対して特に募集広告を行っていない。組合債が安全確実で有利な投資であるかのように誤解される発行はしていない。原告らは、市民生協の決算報告に依拠して組合債を購入したのではなく、原告らの損害と被告らの行為との間に因果関係はない。
仮に、市民生協における経理処理の一部に不適当な処理があったとしても、粉飾経理そのもの自体で市民生協の財政状態が悪化したり、支払不能の財政状態に陥ったりするものではなく、被告らが主張している粉飾経理にかかる被告らの行為と原告主張の損害との間に因果関係はない。
(四) 各被告らに関して
(1) 被告Y3
被告Y3は、平成六年五月に副理事長に就任したが、非常勤であった。その具体的職務内容も労務管理の指導であり、経理関係及び組合債募集に関する業務には従事していない。さらに、脳梗塞により療養中であり、市民生協の経理に関与して監督することは不可能であった。
(2) 被告Y4
被告Y4は、平成七年五月に常勤理事に就任した。それまでは決算に役員として関与していない。具体的な職務内容は、営業全般の統括であり、経理関係及び組合債募集に関する業務には従事していない。原告らが組合債を取得した時期は、最も遅いのが平成七年一一月二二日であり、原告らの組合債取得と被告Y4が関与した決算とは因果関係がない。
(3) 被告Y5
被告Y5は、管理部長であり、経理及び電算室の統括が職務内容である。市民生協の従業員であって(参事職は役員ではない)、担当理事の指示に基づき、従業員として市民生協の利益操作をする会計処理の事務作業を担当したに過ぎない。市民生協の決算について意思決定権はなく、原告らが主張するような注意義務はない。常勤理事会は、常勤理事のみが出席する。被告Y5は、常勤理事会には出席していない。また、被告Y5は、原告らに対し、虚偽の内容を説明し、組合債の募集行為を行ったことはない。
被告Y5は、市民生協の従業員として雇用契約に基づく服務義務があり、被告Y5の会計処理による第三者に対する責任は中断されるし、右行為を回避する期待可能性はない。
(被告Y6、被告Y7、被告Y9及び被告Y8。以下あわせて「被告Y6ら」という)
1 請求原因1(一)は認める。ただし、原告らの組合債は更新されたものが含まれる。その詳細は、別紙三のとおりである。
請求原因1(二)のうち、被告Y6らに関する部分は認める。
2 請求原因2は否認する。
3 請求原因3は認める。
4 請求原因4は争う。
5 請求原因5は否認する。
6 被告Y6らの主張
(一) 会計処理
市民生協の経理は、企業継続中の決算評価及び資産内容の評価としては、何ら違法ではない。仮に、会計上不適切な処理であっても、市民生協の経営を継続させるためにされたものであり、法的には許容範囲内であって違法ではない。
(二) 因果関係
被告らの会計処理と原告ら主張の損害との間には因果関係がない。組合債の募集について、特段の募集広告は行っておらず、組合債が安全確実で有利な投資であるかのように誤解される発行はしていない。
原告らは、市民生協の決算報告に依拠して組合債を購入したわけではない。被告Y6及び被告Y9は、組合債の募集に直接関与したことはない。役員として役員会で報告を受け、組合債の募集額の決定等について議決したにとどまる。
(三) 権利侵害
市民生協においては、消費生活協同組合法の適用がある。同法には商法二六六条の三の規定の準用がない。市民生協の役員の不法行為責任は、市民生協に対する職務としての善管注意義務ではなく、個々具体的に市民生協の債権者で第三者である原告らに対する注意義務が問題となる。被告Y6らは、原告らが組合債を購入するに当たり、原告らに対し、虚偽の事実を開示した組合債の募集行為をしたことはないし、組合債の満期にあたって解約を思いとどまらせて更新させる等の行為をしたことはない。
(四) 被告Y6らには、次のとおり、原告らの損害発生に向けられた加害行為はなく、故意・過失もない。
(1) 被告Y9
被告Y9は、常務理事として店舗外事業を担当していた。組合債の募集に直接関与したことはない。理事として、理事会で報告を受け、組合債の募集額の決定等につき議決したにとどまる。
(2) 被告Y6
被告Y6は、常務理事として店舗運営、商品本部及び店舗開発を担当していた。平成七年五月に専務理事に就任後、営業統括を担当した。組合債の募集に直接関与したことはなく、理事として理事会で報告を受け、組合債の募集額の決定等につき議決したにとどまる。
(3) 被告Y8
被告Y8は、経理部門担当理事として、組合債への依存の危険性を役員会で指摘した。
(被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13。以下あわせて「被告Y10ら」という)
1 請求原因1(一)は認める。ただし、原告らが取得した組合債は更新されたものがある。その詳細は、別紙三のとおりである。
(二)のうち、被告Y10らの役職は認める。
2 請求原因2は不知。
3 請求原因3は認める。
4 請求原因4は争う。
5 請求原因5は否認する。
6 被告Y10らの主張
(一) 会計処理の違法性
(1) 調査報告書記載の利益操作には、会計処理として違法性を有するものと妥当ではないが違法性はないものとがある。損害賠償が問題となるのは、前者のみである。和議において提出された報告書には損害賠償の対象たり得ない後者に該当するものが多く含まれている。
(2) 特に、子会社に対する債権の回収可能性は、和議申立て時点では、市民生協が倒産したときに牽連して倒産する子会社に対する債権の回収可能性を、事後的に非常時貸借対照表的に判断するのである。通常の決算(企業継続を前提にする、いわゆるゴーイングコンサーン決算)では、子会社の生死は、市民生協の政策的判断によるもので、事業継続を前提とする限り、回収不能な債権ではない。
(3) 利益操作といわれているうちには、認容される利益操作がある。
経費や収益の計上基準として、従来の発生主義による会計処理を現金主義に変更しても、妥当な会計処理基準内での変更である。
(4) 組合債金利や賞与について、引当金計上不足が指摘されている。それは非常時貸借対照表的観点からの指摘であり、ゴーイングコンサーン決算では必ずしも認容されないものではない。
(5) 減価償却における法定耐用年数は、法人税法において、税の画一的公平負担のため、損金計上の耐用年数を定めたもので、本来企業の資産ごとに耐用年数を見積もり償却計算すべきである。法人税法により計算した償却費と比較して不足があっても、企業会計処理として認容されないものではない。
(二) 監査状況
被告Y10らの監査状況は、次のとおりである。
(1) 監事会監査を年四回行った。決算諸表、会計伝票、理事会議事録、契約書、稟議書等の棚卸監査を行った。
(2) 理事の業務執行の監督として、毎月開催される理事会に出席し、事業報告・決算状況・理事会案件の聴取、理事会の業務執行状況の監査を行った。その他、決算・予算を審議する臨時理事会にも出席した。
(3) 経営委員会に出席し、事業報告・決算状況・理事会案件の聴取、理事の業務執行状況の監督をした。更に決算・予算審議、重要案件を理事会に提出する事前審議をする臨時経営委員会にも出席した。
(三) 被告Y10らの主張
被告Y10らは、原告ら主張の粉飾経理の事実を知らなかった。市民生協の利益操作は極めて巧妙にされていた。非営利団体である市民生協の組合員のうちから選出された非常勤監事には、発見不可能である。被告Y10らに過失はない。
加えて、市民生協は、消費生活協同組合法に基づいて設立されたものであり、役員の第三者に対する責任については商法二六六条の三の規定の適用はない。被告Y10ら監事は、市民生協に対しては委任契約に基づく善管注意義務違反により損害賠償責任を負うものの、当該義務違反が直ちに市民生協の債権者である第三者に対する損害賠償責任を発生させるものではない。被告Y10らの原告らに対する注意義務は、市民生協に対する職務としてではなく、個々具体的に原告らに対する関係で問題となる。しかし、被告Y10らは、原告らが組合債を購入、継続するに当たって、原告らに対し、市民生協の経営内容について虚偽の内容を報告したものではなく、注意義務違反はない。
理由
第一 事実関係
当事者間に争いがない事実に、本件証拠(甲一ないし八、九の1、2、一〇ないし二九、三〇の1ないし81、三一ないし三六、三七の1ないし6、三八、三九の1、2、四〇、四一、乙イ一、乙ロ一、証人A、原告X1、被告Y7、被告Y5、被告Y2、被告Y10)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。
一 市民生協について
1 a市民生活協同組合(市民生協)は、昭和二六年に設立されたa1職域生活協同組合を沿革とし、二度の名称変更を経て、昭和五二年二月、現在のa市民生活協同組合と名称を改めたものである。
a市を中心とする組合員を対象に主に食料品の供給を事業としていた。平成八年三月当時、a市内の一一店舗を含めた一三店舗と四ヵ所の配送センターの施設を持っていた。従業員数は、平成七年一二月一五日現在、職員二一一名、パート及び嘱託職員九三八名であった。
組合員数は、平成七年三月二〇日現在で、五万四七二三名であり、出資金総額は、九億二七六二万〇四五五円であった。
組合員からの借入金である組合債の総額は、平成七年一一月一一日現在で、五四億四二六一万四一七七円に及び、債権者数は、世帯数で二四三七世帯になる。
2 市民生協の定款は、次のとおり定める。
(一) この組合は、協同互助の精神に基づき、民主的運営により、組合員の生活の文化的経済的改善向上を図ることを目的とし(定款一条)、右目的を達するため、組合員の生活に必要な物資を購入し、これを加工若しくは加工しないで又は生産して組合員に供給する事業等を行い(定款三条)、この組合の区域はa支庁管内(市部を含む)及びb支庁管内(市部を含む)とする(定款四条)。
(二) この組合の区域内に住所を有するものは、この組合の組合員となることができる(定款六条)。組合員は出資一口以上を有し、最低五口まで増資に努めるものとする(定款一四条)。
(三) この組合には、二〇人以上三五人以内の理事、三人以上五人以内の監事の役員を置く(定款二六条)。役員は、役員選挙規約に基づいて役員選考委員会を設けて組合員のうちから候補者を選び、総代会において選挙する(定款二七条)。役員の任期は、二年とし、前任者の任期満了の日の翌日から起算する(定款二九条)。役員は、法令に基づいてする行政庁の処分・定款・規約及び総代会の議決を遵守してこの組合のために忠実にその職務を遂行しなければならない(定款三〇条)。
(四) 理事長一名を理事会において互選する。必要に応じ副理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若干名を互選することができる。理事長は、理事会の決定に従ってこの組合の業務を総括し、この組合を代表する。副理事長は、理事長に事故あるときは、その職務を代行する。専務理事は、理事長、副理事長に事故あるときは、その職務を代行する。常務理事は、理事長、副理事長、専務理事ともに事故あるときは、あらかじめ理事長が定めた順序に従ってその職務を代行する。常勤理事は、理事長、副理事長、専務理事、常務理事ともに事故あるときは、あらかじめ理事長が定めた順序に従ってその職務を代行する。理事は、理事長、副理事長、専務理事、常務理事、常勤理事ともに事故あるときは、あらかじめ理事長が定めた順序に従ってその職務を代行する。
(五) 理事会は、理事をもって構成し(定款三三条)、定款に特別の定めのあるもののほか、次の事項は、理事会の議決を経なければならない(定款三四条)。
(1) この組合の財産及び業務の執行に関する重要な事項
(2) 総会及び総代会の招集並びに総会及び総代会に付議すべき事項
(3) この組合の財産及び業務執行のための手続その他この組合の財産及び業務の執行について必要な事項を定める規則の設定、変更及び廃止
(4) 取引金融機関の決定
(5) 前号各号のほか、理事会において必要と認めた事項
理事会は、理事の過半数が出席しなければ議事を開き議決をすることができない。理事会の議事は、出席した理事の過半数で決する(定款三五条)。
(六) 理事は、定款、規約、総会及び総代会の議事録、組合員名簿、その他組合の財産及び業務の執行について重要な事項を記載した書類を主たる事務所に備えて置かなければならない。理事は、通常総代会の開催日の七日前までに、事業報告書・財産目録・損益計算書・付属明細書・貸借対照表及び剰余金処分案又は欠損金処理案を監事に提出し、これらを事務所に備えて置かなければならない。事業報告書には、損益の計算並びに借入又は償還した金額及び借入金の利率、法定準備金及び各種積立金、事業の状況等を記載しなければならない(定款三七条)。
(七) 監事は、毎事業年度四回以上組合の財産及び理事の業務執行の状況を監査しなければならない。監事は、右の監査を行ったときはその結果を総代会に報告し、かつ、意見を述べなければならない。監事は、右の監査を行ったとき及び必要があると認めるときは、理事会に出席して意見を述べるものとする(定款三八条)
(八) この組合には、総会に代わるべき総代会を設ける(定款四一条)。総代会の議決を経る事項としては、毎事業年度の予算及び事業計画の設定及び変更、借入金額の最高限度、事業報告書・財産目録・損益計算書・付属明細書・貸借対照表及び剰余金処分案又は欠損金処理案等を定める(定款五二条)。
(九) この組合の事業年度は、毎年三月二一日から翌年三月二〇日までとする(定款六三条)。組合員と同一世帯に属するものは、この組合の事業については組合員とみなす(定款六四条)。
3 市民生協の理事会規程は、次のとおり定める。
(一) 理事会は、この規程並びに総代会又は総会の議決に基づいてこの組合の業務の執行及び運営に関する重要事項を審議決定する(理事会規程三条)。
(二) 理事会は理事をもって構成する(理事会規程四条)。理事会は定款三二条に定める理事会役員の下に職務を遂行する。常勤する理事の職務分担は、次のとおりである(理事会規程五条)。
理事長 経営執行について全統括、常勤理事会、部長会議の招集
専務理事 理事長を補佐し業務を分担統括する。
常務理事 専務理事を補佐し業務を分担統括する。
常勤理事 専務理事を補佐し業務を分担統括する。
(三) 理事長は、原則として月一回理事会を開催する。
(四) 理事会では、年次、月次事業計画及び予算、年次、月次事業結果及び決算等について議決を経なければならない(理事会規程一〇条)。理事長は、理事会に月次店別損益計算書、月次店別部門供給予算実績比較表、月次店別効率分析表、月次、累計総合損益計算書(予算実績比較)、月末時貸借対照表、月次資金繰予算実績比較表等の事項について、理事会に報告しなければならない。右報告は報告書を提出することを原則とする(理事会規程一一条)。
(五) 常勤する理事は常勤理事会を構成し、理事会の決定に基づき日常の組合の業務を執行する(理事会規程一六条)。
4 市民生協の監査規約は、次のとおり定める。
(一) 監事は、組合の組織事業の執行を監査する(監査規約一条)。
(二) 監事は、監査の重要事項についての合意及び相互連絡協調のために、監事会を設置する(監査規約三条)。監事会は、年次、月次の業務遂行及び成績の評価、重要執行事項に関する評価、執行システムの採否に関する評価、監査手続、実施計画の決定等の事項を審議する(監査規約六条)。
(三) 監査は、定款三八条の定めに従い毎事業年度四回以上の区分で実施する(監査規約七条)。
(1) 年度監査は、事業年度終了の日から二か月以内に行い、通常総代会に報告する。
(2) 中間監査は、毎四半期決済終了の日から一か月以内に行い、定例理事会に報告する。
(3) 臨時監査は、理事会で決め、理事会又は必要により総代会に報告する。
5 市民生協は、組合員から、店舗及び設備の改善を目的する資金を調達するため、金銭を借り入れている(いわゆる組合債)。
(一) そのため、組合債借入証書が発行される。その生協組合債券約款は、次のとおり定めている。
(1) 本借入債券は、当年度総代会決議事項に従い、その目的とする資金に充てるために期間を定め、組合員を対象に募集した組合員借入債の証として発行します。
(2) 現証書の利息は表面記載の期間及び利率によって計算します。自動継続期間中の利率は、それぞれ継続時点における公示利率が適用されます。書替継続(銘柄変更等)の場合は、継続時点における公示利率が適用されます。
(3) この債券は、継続停止のお申し出がない場合、表面記載の償還日に引き続き同一の期間にて自動継続させて頂きます。
(4) この債券を解約又は書替継続する場合は、償還日の一週間前までに店舗カウンターにて所定の手続をおとり下さい。
(二) 平成八年一月一月から受け付ける組合債の募集要領によれば、組合債の内容は、次のとおり定められている。
(1) 目的 店舗及び設備の改善
(2) 内容 一口一万円以上、二〇〇万円まで
(3) 条件 組合員及び組合員家族に限る。出資金三万円以上の組合員か、三万円以下でも積立増資に参加している組合員もしくは今後参加する組合員に限る。
(4) 組合債の種類は、満期利率一・〇〇パーセントの一年満期、満期利率二・五〇パーセント(年利一・二五パーセント)の二年満期、満期利率五・二五パーセント(年利一・七五パーセント)の三年満期、満期利率一二・七五パーセント(年利二・五五パーセント)の五年満期の四つが用意されている。
(三) 組合債の取扱いには、次のような指導がある。
(1) 日本生活協同組合連合会の指導基準によれば、組合債は施設などの投資目的に資すること、発行残高は余力担保の七〇パーセント以内にすること、組合債の保有資格は一定額以上の出資者に限定すべきことが定められている。
(2) 厚生省社会局長の昭和四五年七月一六日付け通知によれば、組合は、組合員の出資金を主体として運営されるのが建前であるが、やむを得ず組合債を発行する場合には、使途を明確に限定し、その募集は組合員のみに限定するとともに、償還が実質的に保証される範囲内に止めるように十分留意することを求めている。
二 原告らについて
原告らは、市民生協の組合員ないしその家族である。原告らは、市民生協の募集に応じて、別紙一のとおりの組合債を有する債権者である(ただし、更新・書替えの関係は、別紙三のとおりである)。
原告らは、組合債の利率が通常の銀行預金よりも有利であることはもちろん、自らが組合員である市民生協を援助することも考えて、組合債の募集に応じたものである。組合債の債権者になるに当たって、市民生協でいわゆる粉飾決算が行われていることは知らなかったし、償還が不能になるおそれがあることも知らされてはいない。
三 被告らについて
被告らは、市民生協の役員又は幹部職員であった。その詳細は、別紙二のとおりである。
常務理事及び常勤理事は、管理本部長、事業本部長、組合活動本部長、商品本部長、開発本部長等の各業務部門の長として、市民生協の業務を分担統括していた。参事職は、職員ではあったが、副本部長として、各業務部門を監督ないし統括する職務を行っていた。
四 市民生協の破綻及びいわゆる粉飾決算について
1 市民生協は、昭和五〇年代後半から慢性的な赤字経営に陥っていた。このため、決算対策として、経費の繰り延べ、減価償却費の過少計上、子会社との利益操作などの手法で、決算書上の利益を捻出し、黒字を装い続けた。
しかし、昭和六〇年度の時点で、通常の会計処理では赤字を隠ぺいし得ない事態になった。
2 昭和六〇年度から昭和六三年度までの間、財務対策として子会社であるa2株式会社に不動産を売却し、その売却益を持って赤字の補てんを図った。しかし、これによっても、四億円の赤字を解消できなかった。また、その売却代金のうち三億八〇〇〇万円は、回収不能なものであった。
昭和六三年度の決算において、合計七億八〇〇〇万円の架空資産を計上した。
3 平成元年以降は、数字の裏付けのない経理を複雑に操作して利益を捻出し、粉飾決算を続けていった。
具体的には、利益の過大計上、費用の過少計上、資産・負債各科目の金額の根拠のない書替えまたは振替え、架空リベートの計上、多重リース契約等の方法がとられた。
平成七年三月の時点での粉飾額は、総額四九億七一〇〇万円に達した。
4 右のような粉飾決算を行う具体的な手続過程は、次のとおりであった。
(一) 粉飾決算は、専務理事である被告Y7が中心となって、常務理事であった管理本部長の被告Y8及び管理副本部長の被告Y5に指示して行わせていた。具体的には、被告Y5が被告Y7らの意向に従った会計書類を作成していた。
被告Y7は、右のように粉飾した決算書類を常勤理事会に提出した。被告Y5も必要に応じて常勤理事会に出席した。他の常任理事らは、具体的にどこをどのように粉飾したかの説明は受けていない。しかし、出来上がった決算書類が数字を操作したもので事実と異なる内容であることを認識できたが、これに異議を述べることはなかった(少なくとも、各業務部門の長である常任理事は、被告Y7が提出する決算書類上の数字が実際の数字とは掛け離れた粉飾決算であることを認識することが可能であった)。
(二) 被告Y7及び被告Y8は、平成五年度の終了をもって辞職した(ただし、辞職の理由が粉飾決算と関係があることは公表されてはいない)。被告Y7が辞職後も、市民生協の粉飾決算は続けられた。具体的には、被告Y5が従前どおり粉飾した会計書類と真実の会計書類とが毎月開催される常勤理事会に提出されて、出席した常勤理事らが粉飾した決算書類を検討の上、これを理事会及び総代会に報告した。
(三) 理事会及び総代会には、粉飾した決算書類が提出され続けた。理事会及び総代会において、粉飾である旨の説明はなかった。粉飾決算はかなり巧妙になされたものであり、粉飾決算であることを指摘されることもなかった。監事の監査によっても、粉飾決算が発見されることはなかった。
5 平成七年八月末、多重リース契約が発覚し、その後リース会社から契約解除、一括返済及び担保設定が要求されたことにより、粉飾決算の問題が表面化した。
6 市民生協は、和議手続をとった。和議手続の経過は、次のとおりであった。
(一) 市民生協は、自力による事業継続が困難であると判断し、平成八年三月四日、釧路地方裁判所に和議開始決定を申し立てた。
(二) 和議申立書によると、資産総額は一〇五億九二四八万六〇〇〇円、負債総額は一六一億〇九二六万一〇〇〇円であり、平成三年三月の決算では、税引き前利益九〇〇〇万円となっているのに実際は三億六〇〇〇万円の欠損であり、平成四年度三月の決算では、税引き前利益が一億五〇〇〇万円となっているのに実際は五億一〇〇〇万円の欠損であり、平成五年三月の決算では、税引き前利益が一億六〇〇〇万円となっているのに実際は三億三〇〇〇万円の欠損であり、平成六年三月の決算では、税引き前利益が一億三〇〇〇万円となっているのに実際は六億円の欠損であり、平成七年三月の税引き前利益が四〇〇〇万円となっているのに実際は八億四〇〇〇万円の欠損であり、累積欠損額は六八億円になる、としている。
(三) 整理委員が平成八年六月六日付けで提出した意見書によれば、市民生協の決算の実態は、次のとおり報告されている。
(1) 平成三年度の決算において、利益は一億五三〇〇万円となっていたが、実際は五億一七〇〇万円の欠損であり、六億七〇〇〇万円の粉飾があった。平成四年度の決算において、利益は一億六八〇〇万円となっていたが、実際は三億三三〇〇万円の欠損であり、五億〇一〇〇万円の粉飾があった。平成五年度の決算において、利益は一億三四〇〇万円となっていたが、実際は六億一〇〇〇万円の欠損であり、七億四四〇〇万円の粉飾があった。平成六年度の決算において、利益は四七〇〇万円となっていたが、実際は八億四三〇〇万円の欠損であり、八億九〇〇〇万円の粉飾があった。
(2) 平成七年三月二〇日現在の粉飾額は、四九億七一〇〇万円以上になる。内訳は、昭和六三年以前に発生した粉飾額七億八〇〇〇万円と平成元年以降に発生した粉飾額三三億八八〇〇万円と減価償却不足額八億〇三〇〇万円からなる。
(3) これだけの不足額があれば、事業を相当期間継続することは不可能であるはずである。しかし、平成元年度から平成六年度までに調達した資金五七億三二〇〇万円のうち、銀行借入額が二五億八三〇〇万円あり、組合員借入金(組合債)が三一億四九〇〇万円あって、組合債が大幅な赤字を抱える市民生協を支えてきた。
(4) このような粉飾決算は、単に決算利益を捻出するためだけでなく、市民生協の財務内容がいかに健全であるかを示すために様々な経理操作を駆使して行われていた。
(5) 常勤役員は、このような経営の実態を理事会、総代会に報告せず、経理操作により赤字を隠ぺいし、粉飾決算を続けたことにより、不採算店舗の閉鎖提案が遅延し、欠損金の累積が一層進む結果となった。
(6) 債権債務相殺後の資産合計は九一億一八四三万円であり、負債合計は一四〇億七五八〇万円になる。
(7) 破産に移行した場合の配当率は、二・七二パーセントになると予想される。
(四) 釧路地方裁判所は、平成八年六月二四日、和議手続の開始決定を行い、同年一〇月三〇日、和議認可決定を行った。右認可決定は、平成八年一一月二九日確定した。
(五) 右認可の和議条件は、次のとおりである。
(1) 金融機関債権者は、和議債権元本及び利息のうち五〇パーセントを免除し、右免除額を控除した残元本及び利息を本件和議認可決定確定の日から三年を経過した日を第一回とし、以降一年を経過する毎に第七回まで各七分の一ずつ支払う。本件和議決定日以降の金利は年一パーセントの割合で支払う。
(2) 組合債債権者は、和議債権元本及び利息のうち二五パーセントを免除し、本件和議認可決定日の前日までに支払期が到来している債権については、平成一三年一月二二日限り支払い、その他の債権については約定の償還期限から五年を経過したときに支払う。本件和議決定日以降の金利は年一パーセントの割合とし、右元本償還時に付加して支払う。
(1) 和議債権者のうち、右債権者を除く債権者は、和議債権元本の六五パーセントを免除し、和議債権元本から右免除額を控除後の額につき、本件和議認可決定確定の日以降三ヵ月以内に支払う。右債権者は、遅延損害金を免除する。
ただし、免除の割合につき、有する債権額が、一〇万円以下のときは〇パーセント、一〇万円を超え五〇万円以下のときは五〇パーセント、五〇万円を超え一〇〇万円以下のときは六〇パーセントとする。
7 平成八年五月三〇日の総代会において、次のとおり、役員等の経営破綻に対する弁済の申し出があった。
(一) 常勤役員について
(1) 被告Y1 三三六〇万円
(2) 被告Y6 二二八〇万円
(3) 被告Y2 二〇七〇万円
(4) 被告Y9 一五七〇万円
(5) 被告Y12 六一〇万円
(6) 被告Y3(ただし、半常勤副理事長として) 二九〇万円
(二) 退任常勤役員について
(1) 被告Y7 三一六〇万円
(2) 被告Y8 一一四〇万円
(三) 非常勤学識理事及び監事について
一人五〇万円
(四) 非常勤理事について
一人三〇万円
(五) 参事職一名について
役員に準じて五〇〇万円
五 被告らの粉飾決算との関連について
1 被告Y1について
被告Y1は、昭和六三年に理事長に就任し、市民生協全体を統括管理する立場にあった。直接、会計処理について指示をすることはなかったが、被告Y7らが行っていた虚偽の会計報告を阻止・是正することはなかった。
2 被告Y3について
被告Y3は、平成三年度から平成五年度まで非常勤理事であり、平成六年度(平成六年五月)から非常勤の副理事長に就任した。副理事長に就任した後、常勤理事会に半分以上は出席していた。平成六年八月に脳梗塞により倒れた。それ以降、療養のため、市民生協の経理に関与及び監督することはほとんどなかった。
3 被告Y2について
被告Y2は、昭和六一年度から平成四年度まで常務理事・事業本部長であり、平成五年度から常務理事・管理本部長に就任した。
常勤理事会に出席していたが、粉飾決算を阻止する行動をとってはいない。平成五年五月一二日、管理本部長に就任した後、被告Y5に粉飾決算書類作成の指示を与え、粉飾決算の作成に関与した。
4 被告Y9について
被告Y9は、昭和六三年度から常務理事・商品本部長として、常勤役員会に出席していた。粉飾決算を阻止する行動をとってはいない。
5 被告Y6について
被告Y6は、昭和六三年度から平成六年まで常務理事・開発本部長として、平成七年度からは専務理事として、常勤役員会に出席していた。粉飾決算を阻止する行動をとっていない。
6 被告Y7について
被告Y7は、昭和五三年度から平成五年度まで専務理事を勤め、粉飾決算を実施する中心的立場にあった。被告Y7の影響力は大きかった。常勤理事会は、事実上、被告Y7の意向に従って運営されており、反対意見を言うことは困難であった。
7 被告Y8について
被告Y8は、昭和六三年度から常勤理事・管理本部長で、平成三年度から平成五年度まで常務理事・管理本部長であり、総務、人事、経理の担当部門の長であった。被告Y7の指示で粉飾決算書類の作成に関与した。
8 被告Y4について
被告Y4は、平成三年度まで参事・事業副本部長、平成四年度は参事・企画室長、平成五年度及び平成六年度は参事・組活本部長企画室長であった。平成七年度に、常勤理事・店舗事業部長に就任した。
9 被告Y5について
被告Y5は、昭和五四年以降、職制変更による名称の変化はあったが、経理部長としての職務を担当した。昭和六三年度から、参事職・管理副本部長の地位に就いた。被告Y5は、被告Y7及び被告Y8の指示に従い、粉飾決算書類を作成していた。被告Y2が管理本部長に就任後は、同人から粉飾決算の指示を受けた。
10 被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13について
右被告四名は、非常勤の監事である(報酬は月額五万円である)。職業は、元会社部長、市議会議員らであり、通常人よりは会計に詳しいが、会計専門家でなかった。
監事会において、減価償却、固定資産、リベートの長期未収等について指摘したことはあったが、決算書類は巧妙に操作されているため、粉飾決算を発見することは困難であった。
以上の事実が認定できる。右認定に反する証拠は採用できない。
第二 右認定事実を前提に、原告らの本訴請求の当否について検討する。
一 被告らの不法行為責任について
1 右認定の市民生協の組織及び定款、常任・常勤理事等の職務権限及びその責任、組合債の性格(特に組合員からの借入であり、組合資産しかその責任財産がないこと)等の前項認定の事実関係を総合すれば、決算書類の作成に関与した市民生協の理事及び決算書類の作成にあたる職員は、組合債の債権者になる組合員に対し、組合債の償還に不安がないか否かの判断ができるように真実の市民生協の決算状況を明らかにして開示する義務を負うと解すべきであり、右義務に違反して粉飾した決算を作成した理事及び職員は、作成・公示された決算により償還不能になることはないと信頼して組合債の債権者となった組合員に対し、償還不能になる組合債の債権者になった損害を被らせているから、償還不能になった金額相当の損害を賠償する責任がある、と認めるのが相当である。
決算書類作成に直接関与しなかった理事も、理事会において事業計画・予算や事業結果・決算等を審議する義務を負うのであるから、適正な決算が作成・公表されるように監視して粉飾決算をしていることを阻止すべき義務があったと解すべきであり、右義務を怠った結果、決算を信頼して償還不能になることはないと誤信して組合債の債権者となった組合員に対し、償還不能になった組合債の金額相当の損害を賠償する責任がある、と認めるのが相当である。
監事についても、その職務上、当然に、粉飾決算を発見してこれを阻止すべき義務があると解すべきであるから、右義務を怠った結果、決算を信頼して償還不能になることはないと誤信して組合債の債権者となった組合員に対し、償還不能になった組合債の金額相当の損害を賠償する責任がある、と認めるのが相当である。
2 被告らは、その損害賠償責任を否定するが、その主張は、以下のとおり、採用できない。
(一) 被告らは、市民生協の粉飾決算が会計処理上認容されるものであり、違法性はない旨主張している。
しかし、前記認定の市民生協の粉飾決算額、粉飾決算の期間、粉飾決算の目的等に照らし、市民生協の粉飾決算が会計処理上の妥当性の問題であり違法性の問題ではない、と認めることは到底できない。
(二) 被告らは、理事らが市民生協に対する職務上の善管注意義務を負っても、市民生協の債権者で第三者である原告らに対する注意義務は負担しない旨主張する。
しかしながら、定款等で要求される理事らが正確な決算書類を作成して総代会に報告し事務所に備え置く義務は、単なる市民生協に対する職務上の忠実義務だけでなく、市民生協に対する出資者である組合員らに対する注意義務であるとも認めることができるし、組合債の債権者になる原告らは、無担保で市民生協の資産のみを責任財産として金銭を貸し付けるのである(組合員が債権者となる組合債を通常の取引の第三者と同視することは相当でない)から、決算書類の作成に当たる理事及び職員並びに決算書類の審議をする理事とも、組合債の債権者になる組合員である原告らに対し、正確な市民生協の決算状況を明らかにする注意義務があり、これに違反して損害を与えたときは、損害賠償責任を負うものと解すべきである。
(三) 被告らは、組合債の募集広告を行っていないし、組合債が安全確実で有利な投資であるかのように誤解させる発行はしていないし、原告らが市民生協の決算報告に依拠して組合債を購入したものではないから、被告らの不法行為と原告の損害との間に因果関係はない旨主張する。
しかしながら、特段の事情がない限り、市民生協の財務内容が健全で利益が生じているように粉飾決算することなく、市民生協が赤字であることが明らかにされていれば、原告らは、組合債の償還に不安を覚えて、組合債を購入せず、金銭の貸付けをしなかった、と推認できるから、被告らが実際の組合債の募集広告行為に関与していたか否かにかかわらず、被告らが粉飾決算書類を作成したり、これを阻止しなかったりしたことと、原告らが償還が不能になることはない旨信頼して組合債を購入したこととの間には、相当因果関係がある、と認めることができる。
他方、原告らは、組合債を更新する際に市民生協の財産状況を考慮して組合債を継続するか否か検討していた、あるいは、市民生協の真実の財産状況が明らかにされれば、組合債を解約して払い戻すことができたから、組合債購入のときに理事等に就任していない理事らも、就任前に組合債を購入した原告らに対して、損害賠償を負う旨主張している。しかし、市民生協の実際の収支に照らせば、原告らが取得した組合債は、その購入の際にすでに全額の償還は不能であった(換言すれば、組合債はその購入の際に額面の価値はすでになかった)、と推認できるから、更新あるいは払戻しの際に新たな損害が発生した、と認めることはできない(市民生協の真実の財産状況が明らかにされてから、更新を拒否するなり、払戻しをするなりして、額面どおりの貸金の返済を受けることができたとしても、それは事実上の問題であり、法的な因果関係は肯定できない)。
(四) 他に、前記1の認定説示を妨げる主張立証はない。
3 被告らの責任について
そこで、前記1に説示した見地から、被告らの賠償責任を検討する。
(一) 被告Y1
被告Y1は、平成二年度前から、理事長に就任し、常勤理事会に出席し、被告Y7らが行った粉飾決算を認識しないし認識し得たのにこれを阻止しなかった過失があり、被告Y7らの退任後は粉飾決算書類作成に常勤理事会の構成員として関与していたのであるから、これによって原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(二) 被告Y3
被告Y3は、平成五年度まで非常勤理事であり、常勤理事会に出席しておらず、被告Y7らの粉飾決算を認識し得たと認めることはできないから、平成五年度までに組合債を取得した原告らに対して損害賠償責任を負わない。被告Y3は、平成六年五月から、非常勤の副理事長に就任し、常勤理事会にも約半分以上は出席しているが、平成六年八月に脳梗塞により倒れて市民生協の経理に関与及び監督することはできなくなった、と認められるから、被告Y7の退任後の粉飾決算作成を阻止し得たと認めることはできず、平成六年度以降に組合債を取得した原告らに対しても、損害賠償責任は負わない。
(三) 被告Y2
被告Y2は、平成二年度前から、常務理事として常勤理事会に出席し、被告Y7らが行った粉飾決算を認識し得たと認められるし、平成五年度から常勤理事・管理本部長として粉飾決済書類の作成に関与しているから、粉飾決算によって組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(四) 被告Y9
被告Y9は、平成二年度前から常務理事として常勤理事会に出席し、被告Y7らが粉飾決算書類を作成していることを認識しないし認識し得たのにこれを阻止しなかった過失があり、被告Y7らが退任後は粉飾決算書類作成に常勤理事会の構成員として関与していたのであるから、粉飾決算によって原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(五) 被告Y6
被告Y6は、平成二年度前から平成六年まで常務理事として、平成七年度からは専務理事として、常勤役員会に出席し、被告Y7らが行った粉飾決算を作成していることを認識しないし認識し得たのにこれを阻止しなかった過失があり、被告Y7らが退任後は粉飾決算作成に常勤理事会の構成員として関与していたから、粉飾決算によって原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(六) 被告Y7
被告Y7は、平成二年度前から平成五年度まで専務理事として粉飾決算を実施する中心的立場にあったから、平成二年以降に組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。被告Y7は、平成六年五月に市民生協を退任しているが、在任中、粉飾決算を実施し、退任後も同様な粉飾決算が継続していたから、被告Y7の退任後に償還に不安がないと信じて組合債を取得した原告らに生じた損害についても賠償する責任がある、と認めるのが相当である。
なお、被告Y7が常勤理事会を事実上指導し、他の理事が反対の意見を述べることが難しかったとしても、他の理事の責任を免れさせるものではない。
(七) 被告Y8
被告Y8は、平成二年度前から平成五年度まで常勤理事ないし常務理事・管理本部長として、被告Y7の指示で粉飾決算書類の作成に関与していたから、平成二年以降に組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。被告Y8は、平成六年五月に市民生協を退任しているが、自ら粉飾決算書類の作成に関与し、退任後も同様な粉飾決算が継続していたから、被告Y8の退任後に償還に不安がないと信じて組合債を取得した原告らに生じた損害についても賠償する責任がある。
(八) 被告Y4
被告Y4は、平成七年度に常勤理事に就任したものであるから、平成六年度までの粉飾決算を阻止すべき注意義務があったものと認めることはできない。平成七年度(平成七年五月)に常勤理事に就任後には、毎月開催される常勤理事会に出席し、粉飾決算書類の作成に関与していたから、平成七年五月以降に組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(九) 被告Y5について
被告Y5は、平成二年度前から、参事職・管理副本部長の地位に就いて、粉飾決算書類の作成に当たっていたから、平成二年以降に償還に不安がないと信じて組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。
被告Y5は、理事ではなく、従業員であるから、雇用契約に基づく服務義務があった旨主張する。しかし、被告Y5が従業員として担当理事の指示に従う義務があったとしても、粉飾決算書類を作成することが違法であることを否定する理由にはならないし(第三者に対する責任が中断されると解する理由もない)、期待可能性がなかったとまでは認められない。
(一〇) 被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13
市民生協の粉飾決算は巧みになされ、常勤理事会に出席していない者がこれに気付くことは困難であったこと、監事らは会計専門家ではないこと等の前記認定の事実関係の下において、監事である被告ら四名が粉飾決算を発見して粉飾決算を阻止できたと認めることは難しいから、右被告らの注意義務違反は肯定できない。
(一一) まとめ
被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9は、平成二年以降に組合債を取得して原告らが被った損害を賠償する責任がある。被告Y4は、平成七年五月以降に組合債を取得した原告らが被った損害を賠償する責任がある。その余の被告らは、損害を賠償する責任を負わない。
二 原告らの損害について
1 原告X1
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X1は、平成二度から平成七年度までに合計六〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する一五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、一五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X1は、平成七年度に新たに二〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、五〇万円の損害賠償を求めることができる。
2 原告X2
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X2は、平成二年度から平成七年度までに合計六〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する一五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、一五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X2は、平成七年度に新たに二〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、五〇万円の損害賠償を求めることができる。
3 原告X3
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X3は、平成三年度から平成七年度までに合計三六〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する九〇万円の損害を被ったから、九〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X3は、平成七年度に四〇万二四〇〇円を加えて額面三六〇万円の組合債を購入しているから、被告Y4に対しては平成七年度に支出した四〇万二四〇〇円の二五パーセントに相当する一〇万〇六〇〇円の損害賠償を求めることができる。
4 原告X4、原告X6、原告X7及び原告X8は、原告X3と同じ時期に同じ金額の組合債を購入しているから、損害賠償を求めることができる相手方及びその金額は、原告X3と同様である。
5 原告X5
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X5は、平成四年に合計二〇〇万円の組合債を購入しているから、その二五パーセントに相当する五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X5は、平成七年度に新たに組合債を購入していないから、被告Y4に対しては損害賠償請求できる損害が生じていない。
6 原告X9
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X9は、平成三年度から平成五年度までに合計二〇八万円の組合債を購入しているから、その二五パーセントに相当する五二万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X9は、平成七年度に新たに組合債を購入していないから、被告Y4に対しては損害賠償請求できる損害が生じていない。
7 原告X10
原告X10は、平成七年度に合計一九万円の組合債を購入しているから、被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8、被告Y9及び被告Y4に対し、その二五パーセントに相当する四万七五〇〇円の損害賠償を求めることができる。
8 原告X11
原告X11は、平成七年度に合計一九万円の組合債を購入しているから、被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8、被告Y9及び被告Y4に対し、その二五パーセントに相当する四万七五〇〇円の損害賠償を求めることができる。
9 原告X12
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X12は、平成四年度から平成五年度までに合計二一〇万円の組合債を購入しているから、その二五パーセントに相当する五二万五〇〇〇円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X12は、平成七年度に新たに組合債を購入していないから、被告Y4に対しては損害賠償請求できる損害が生じていない。
10 原告X13
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X13は、平成三年度から平成四年度までに合計二〇一万円の組合債を購入しているから、その二五パーセントに相当する五〇万二五〇〇円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X13は、平成七年度に新たに組合債を購入していないから、被告Y4に対しては損害賠償請求できる損害が生じていない。
11 原告X14
(一) 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8及び被告Y9に対し
原告X14は、平成四年度から平成五年度までに合計二〇〇万円の組合債を購入しているから、その二五パーセントに相当する五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 被告Y4に対し
原告X14は、平成七年度に新たに組合債を購入していないから、被告Y4に対しては損害賠償請求できる損害が生じていない。
第三 結論
よって、原告らの被告Y1、被告Y6、被告Y2、被告Y9、被告Y7、被告Y8及び被告Y5に対する請求はすべて理由があるから、これを認容することとし、被告Y4に対する請求は、主文の限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとし、被告Y3、被告Y10、被告Y11、被告Y12及び被告Y13に対する請求はすべて理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言について、同法二五九条一項を適用して、主文のとおり判決する(弁論終結の日・平成一〇年四月二一日)。
(裁判長裁判官 小林正明 裁判官 小濱浩庸 裁判官 鵜飼万貴子)
<以下省略>