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札幌地方裁判所 平成9年(わ)748号 1998年1月28日

本店所在地

札幌市中央区北三条西三丁目一番四七号

有限会社トマト倶楽部

右代表者代表取締役

白川憲一

本籍

名古屋市名東区一社二丁目一五八番地

住居

札幌市中央区旭ケ丘五丁目二番二一号

会社役員(代表取締役)

白川憲一

昭和二二年一月一日生

主文

被告人有限会社トマト倶楽部を罰金二〇〇〇万円に、被告人白川憲一を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人白川憲一に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社トマト倶楽部(以下「被告人会社」という。)は、札幌市中央区北三条西三丁目一番四七号(平成八年四月二〇日以前は、同市同区北二条西二丁目二九番地一札幌ウイングビル)に本店を置き、コンピューター及びその関連機器による情報処理業務等を営業目的とするものであり、被告人白川憲一(以下「被告人白川」という。)は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人白川において、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、いずれも売上を除外するなどの不正な方法により所得を秘匿した上

第一  別紙1及び2記載のとおり、平成五年八月九日から平成六年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が、四一二三万〇七三五円であったにもかかわらず、平成六年九月一六日、札幌市中央区大通西一〇丁目所在の札幌中税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二八八二万三九四七円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年同月三〇日を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一四七〇万〇九〇〇円を免れ

第二  別紙3及び4記載のとおり、平成六年八月一日から平成七年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が、一億四三二八万四七三九円であったにもかかわらず、平成七年九月一九日、前記札幌中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年一〇月二日を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額五二九六万九九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人白川の公判供述

一  被告人白川の検察官調書(乙一二)及び大蔵事務官に対する質問てん末書(一通。乙一ないし一一)

一  松本昭男(三通。甲二八ないし三〇)、藤林明(二通。甲三一、三二)、橋本成生(甲三三)、有川真澄(二通。甲三四、三五)、野崎泰司(甲三六)、出倉素明(甲三七)、庄司裁三(甲三八)、藤田俊之(甲三九)、加藤節子(甲四〇)及び神保千晶(甲四一)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲二)、売上高調査書(甲五)、期首棚卸高調査書(甲六)、仕入高調査書(甲七)、期末棚卸高調査書(甲八)、役員報酬調査書(甲九)、給与手当調査書(甲一〇)、福利厚生費調査書(甲一一)、旅費交通費調査書(甲一二)、通信費調査書(甲一三)、交際費調査書(甲一四)、消耗品費調査書(甲一五)、租税公課調査書(甲一六)、運賃調査書(甲一七)、支払手数料調査書(甲一八)、車両費調査書(甲一九)、開発費調査書(甲二〇)、受取利息調査書(甲二一)、車両売却損調査書(甲二二)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲二三)、事業税認定損調査書(甲二四)、交際費損金不算入調査書(甲二五)、欠損金又は災害損失金の当期控除額調査書(甲二六)及び申告欠損金調査書(甲二七)

一  商業登記簿謄本(甲四)

一  法人課税ファイル一綴(平成九年押第五四号の1。甲四二)

(法令の適用)

一  被告人白川憲一

罰条 いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 いずれも懲役刑選択

併合罪の加重 平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)

附則二条二項前段により同法による改正後の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

執行猶予 平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条三項により同法による改正後の刑法二五条一項

一  被告人会社

罰条 いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、多額については情状により同法一五九条二項

併合罪の加重 平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条二項前段により同法による改正後の刑法四五条前段、四八条二項

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役である被告人白川が、平成五年八月から平成七年七月までの二事業年度にわたり、売上を除外するなどして所得を秘匿し、被告人会社の法人税合計六七六七万円余を免れたという事案である。法人として当然果たすべき納税義務を尽くさず、国の課税権を侵害し、その租税収入を減少させた行為は、それ自体反社会的で許し難いものであるが、本件においては、ほ脱税額が右のとおり多額である上、ほ脱率も一〇〇パーセントであって、他の脱税事案に比しても甚だ悪質なものといわざるを得ない。被告人白川は、パチンコ攻略ソフトの開発・販売という被告人会社の業務の性質上、将来の売上予測が困難なことから、不測の事態に備えて内部蓄積を図るとともに、ソフト開発のためのパチンコ実戦資金を捻出するため、本件犯行に及んだというのであるが、これも結局は被告人らの利益を図ったものに他ならないのみならず、被告人白川は除外した売上金を自宅の土地建物の購入費の一部や自己が使用する高級外車の購入費等に流用するなど、私物化して派手な生活をしていたものであって、動機に酌量の余地はない。また、被告人らのかかる行為は、申告納税制度を採用している法人税等において、善意の納税者の納税意欲を阻害するものであり、その社会的影響も無視できない。これらの事情を考慮すると、被告人らの刑事責任は重いといわなければならない。

しかしながら、被告人会社においては、本件発覚後、各事業年度について修正申告を行い、本税のみならず重加算税、地方税の一部を支払い、残額についても今後納税する予定であること、身から出た錆とはいえ、本件が新聞等で報道されたことにより、被告人会社はその信用を喪失した上、新聞社から広告の掲載を拒まれて売上の減少を余儀なくされたことなど、既に一定程度の社会的制裁を受けていること、被告人らはいずれも犯罪歴がなく、被告人白川は反省の情を示していることなど、被告人らに有利な事情もあるので、以上を総合考慮し、それぞれ主文掲記の刑を科した上、被告人白川については、今回に限り、その執行を猶予するのが相当と判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(検察官大久保和征、弁護人山田廣(私選)各出席)

(求刑―被告人会社について罰金二五〇〇万円、被告人白川について懲役八月)

(裁判長裁判官 長島孝太郎 裁判官 鈴木桂子 裁判官 古谷慎吾)

別紙1

修正損益計算書

自 平成5年8月9日

至 平成6年7月31日

有限会社トマト倶楽部

No.1

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

自 平成5年8月9日

至 平成6年7月31日

有限会社トマト倶楽部

<省略>

別紙3

修正損益計算書

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

有限会社トマト倶楽部

No.1

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

有限会社トマト倶楽部

<省略>

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