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札幌地方裁判所 平成9年(わ)818号 判決 1997年12月19日

被告人

法人の名称 株式会社グリーンハウジング

本店所在地

札幌市西区二十四軒二条五丁目一五番地一

代表者の氏名

斎藤光政

代表者の住居

同区宮の沢四条五丁目六番六号

氏名 斎藤光政

年齢

昭和一七年一一月二二日生

本籍

同所六番

住居

同所六番六号

職業

会社役員

主文

被告人斎藤光政を懲役一年六月及び罰金二〇〇〇万円に、被告人株式会社グリーンハウジングを罰金八〇〇万円に処する。

被告人斎藤光政においてその罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人斎藤光政に対し、この裁判確定の日から三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

第一  被告人斎藤光政(以下「被告人斎藤」という)は、札幌市西区内に居住し、「Be-」「Be-」「Be-メイト」の各テレホンクラブを経営するものであるが、所得税を免れようと企て、その収益を従業員名義の借名預金に入金するなどの不正な方法により自己の所得を秘匿し、

一  平成四年分の実際所得金額が五六四四万八三九七円であり、これに対する所得税額二三二九万九五〇〇円から源泉徴収税額を除いた二一七四万一一〇〇円を納付すべきであるのに、同所得税の確定申告期限である同五年三月一五日までに住所他を管轄する同区発寒四条一丁目七番一号札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないまま、法定納期限である同日を徒過させ、もって不正の行為により、同四年分における納付すべき正規の所得税額二一七四万一一〇〇円を免れ、

二  同五年分の実際所得金額が七四〇七万六六七九円であり、これに対する所得税額三二一〇万九〇〇〇円から源泉徴収税額を除いた三〇七九万円を納付すべきであるのに、同所得税の確定申告期限である同六年三月一五日までに前記札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないまま、法定納期限である同日を徒過させ、もって不正の行為により、同五年分における納付すべき正規の所得税額三〇七九万円を免れ、

三  同六年分の実際所得金額が五六一六万六七六五円であり、これに対する所得税額二二八〇万二〇〇〇円から源泉徴収税額等を除いた一八三五万八六〇〇円を納付すべきであるのに、同七年三月一〇日、前記札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二八四万五〇〇〇円であり、既に源泉徴収された税額のうち七三万六八三一円の還付を受けることになる旨の虚偽過少の所得税確定申告書(平成九年押第五三号の1)を提出し、もって不正の行為により、納付すべき正規の所得税額とその申告税額との差額一九〇九万五四〇〇円を免れ、

第二  被告人株式会社グリーンハウジング(以下「被告人会社」という)は、同区二十四軒二条五丁目一五番地一に本店を置き、資本金二〇〇〇万円(当時)で建築及び大工工事の請負並びに設計・施工・監理等を営むもの、被告人斎藤は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人斎藤は、被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空の交通費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、同六年四月一日から同七年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億九九五〇万七二二二円であったにもかかわらず、同年五月三一日、右本店所在地を管轄する前記札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億〇三四五万四四六三円で、これに対する法人税額が三九七九万〇六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2に綴られているもの)を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七五八一万〇五〇〇円と右申告税額との差額三六〇一万九九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

注 括弧内の甲乙の数字は、証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。

事実全部について

一  被告人斎藤の公判供述

一  被告人斎藤の検察官調書(乙二)

第一の事実全部について

一  被告人斎藤の各検察官調書(乙四、五、七)

一  橋本裕美子(甲五七ないし六一)、辻早智子(甲六二)、山口幸惠(甲六三)及び野村詣(甲六四、六五)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  売上金額調査書(甲二五)、期首商品棚卸高調査書(甲二七)、仕入金額調査書(甲二九)、期末商品棚卸高調査書(甲三一)、給料賃金調査書(甲三二)、減価償却費調査書(甲三三)、地代家賃調査書(甲三四)、利子割引料調査書(甲三五)、荷造運賃調査書(甲三六)、水道光熱費調査書(甲三七)、旅費交通費調査書(甲三八)、通信費調査書(甲三九)、広告宣伝費調査書(甲四〇)、接待交際費調査書(甲四一)、損害保険料調査書(甲四二)、修繕費調査書(甲四四)、消耗品費調査書(甲四六)、福利厚生費調査書(甲四八)、車両関連費調査書(甲五〇)、雑費調査書(甲五二)、給与所得調査書(甲五三)、総合譲渡(短期)所得調査書(甲五四)、雑所得調査書(その他所得)(甲五六)及び調査事績報告書(甲七三)

一  各捜査報告書(甲二六、二八、三〇、四三、四五、四七、四九、五一、五五)

第一の一及び同二の事実について

一  平成四年分の所得税の確定申告書及び平成五年分の所得税の確定申告書・各謄本(甲七四)

第一の三の事実について

一  平成六年分の所得税の修正申告書・謄本(甲七五)

一  平成六年分の所得税の確定申告書一枚(平成九年押第五三号の1)

第二の事実について

一  被告人斎藤の検察官調書(乙三)

一  伊藤惠美子(甲二二)、大森多美子(甲二三)及び稲田浩太郎(甲二四)の各検察官調書

一  交通費調査書(甲一)、従業員賞与調査書(甲二)、厚生費-法定福利費調査書(甲三)、広告宣伝費調査書(甲四)、車両関連費調査書(甲五)、備品・消耗品費調査書(甲六)、支払保険料調査書(甲七)、租税公課調査書(甲八)、減価償却費調査書(甲九)、接待交際費調査書(甲一〇)、通信交通費調査書(甲一一)、会議費調査書(甲一二)、雑費調査書(甲一三)、受取利息調査書(甲一四)、雑収入調査書(甲一五)、支払利息割引料調査書(甲一六)、各損金の額に算入した道民税利子割調査書(甲一七、一八)、交際費損金不算入額調査書(甲一九)、事業税認定損調査書(甲二一)及び調査事績報告書(甲七二)

一  捜査報告書(甲二〇)

一  商業登記簿謄本(乙八)

一  法人課税ファイル(平成七年三月期法人税確定申告書在中)一綴(同押号の2)

(法令の適用)

一  被告人斎藤について

罰条

第一の各所為 いずれも所得税法二三八条一項、二項

第二の所為 法人税法一五九条一項

刑種の選択

第一の各罪 いずれも懲役刑及び罰金刑

第二の罪 懲役刑

併合罪の処理 刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法をいう。以下同じ)四五条前段

懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)罰金刑につき同法四八条一項、二項

労役場留置 刑法一八条

刑の執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項

二  被告人会社について

罰条 法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

(量刑の理由)

一  本件は、判示のとおり、被告人会社の代表取締役を務め、かつ、いわゆるテレホンクラブを個人で経営していた被告人斎藤が、右テレホンクラブの売上げを従業員名義の借名口座に入金することなどによりその所得を秘匿し、連続する三年分の所得税合計七一〇〇万円を免れ、さらに、営業外務員の旅費の過大計上や右テレホンクラブの経費の付け替え計上などで、被告人会社の経費を過大計上し課税所得を圧縮する不正な行為により、一事業年度において、約三六〇〇万円もの法人税を免れたという事案である。

二  ほ脱額は、右のとおり多額で、全事実合計一億円以上にも及んでいるのみならず、ほ脱率も、第二事実は約四七・五パーセントであるものの、第一事実は通算で一〇〇パーセントを超えており、極めて高率である。犯行態様は、いずれも被告人斎藤が、被告人会社及びテレホンクラブそれぞれの従業員に自ら指示して、右のとおりの不正な行為を行っていたのであり、ほ脱の手段自体巧妙である上、経費の付け替え計上の点などを見ても、両者の便宜的かつ恣意的な混同が甚だしいことに加えて、特に第一事実は、連続する三年にわたる多額の無申告ほ脱犯であり、大胆かつ悪質である。また、犯行の動機も、第一事実は、当初テレホンクラブは利益を出していたものの、被告人会社は赤字続きだったことから、その利益を被告人会社の資金として使うためというもの、第二事実は、急速に業績を伸ばし利益を出すようになった被告人会社を、倒産しない大会社に育てるべく、将来の資金難に備えて裏金を作るためというもので、結局のところ、いずれも被告人会社及びその代表取締役である被告人斎藤の利益追求目的といえ、安易かつ自己中心的であり、酌量の余地はない。以上の諸事実に加えて、被告人斎藤は、テレホンクラブの実質的経営者となって以来長期間にわたって、その所得を全く申告していなかったことをも併せ考えると、その脱税に対する本件当時の罪悪感の欠如は明らかだったといえる。

被告人両名の刑事責任は重いというべきである。

三  しかし他方、本件発覚後、被告人斎藤は、第一事実につき、起訴されたほ脱にかかる本税、重加算税、延滞税及び地方税等合計一億五〇〇〇万円余を全額納付済みであるばかりか、起訴の対象となっていない過去のほ脱分についても、同被告人がテレホンクラブの実質的経営者となった当初にまで遡って新たに申告し納付していること、被告人会社も、第二事実につき同様に合計一億円余を完納していること、本件は元来被告人斎藤の個人的な不正蓄財を目的としたものではないこと、同被告人は、本件発覚後国税局による税務調査に進んで協力し、当初から犯行を素直に認めるなど、反省の情が顕著であること、今後は被告人会社の経理体制を充実して、納税義務を果たしていく姿勢を示していること、被告人斎藤は、個人事業であったテレホンクラブを既に法人化し、その所得関係を明朗にしている上、現在では右法人の取締役を辞任していること、被告人斎藤は、昭和五六年の逮捕監禁致傷等による執行猶予前科以来前科がなく、被告人会社の代表取締役として真面目に稼働し、多大な利益を出すまでに育て上げたこと、被告人斎藤の経営手腕を頼りとする従業員や養うべき家族もあることなど、被告人両名のために酌むべき事情も認められる。

四  そこで、当裁判所は、以上の諸事情を総合考慮し、それぞれ主文掲記の刑を科した上、被告人斎藤についてはその懲役刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

(検察官 内田俊昭)

(弁護人 被告人両名につき日浦力(主任)、越前屋民雄)

(求刑 被告人斎藤につき懲役一年六月及び罰金二五〇〇万円、被告人会社につき罰金一〇〇〇万円)

(裁判長裁判官 矢村宏 裁判官 手塚稔 裁判官 坂田威一郎)

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