札幌地方裁判所 昭和41年(わ)737号・昭41年(わ)686号 判決
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〔判決理由〕(罪となるべき事実)
被告人浦添佐知子、同小森勉は内縁関係にあり、かつ佐知子はキャバレー月世界のホステスであつたが、右両名は借金の支払いに窮した末、右佐知子のなじみ客である長内善造(当時三八才)に麻酔薬を使つて昏酔させ、その所持金を奪うことを相談し、ここに右被告人両名は金員強盗の共謀を遂げ、同佐知子が昭和四一年九月一九日午前一時一〇分頃、札幌市川沿町一八二七番地札幌プリンスホテル二〇二号室に右長内を言葉巧みに誘い入れ、同人と飲酒中、同人の隙をみて麻酔薬「クロロホルム」を同人のビールの入つたコップに投入してこれをビールとともに同人に飲ませてその場に昏酔させ、それに乗じて同人所有の現金一二三、二〇〇円を盗取した。
さらに被告人浦添美知子は同佐知子の妹であるが、同日午前二時頃、盗取して帰宅した右佐知子から「長内さんはまだお金を沢山持つている」と聞くと、右被告人佐知子、同小森の両名に対し「もう一回長内さんのところへ行つて取つて来よう」と持ちかけ、同人から金員を盗取することを提案し、右両名もこれに同意し、ここに三名共同して強盗せんことを企て、直ちに被告人小森の運転する自動車で前記プリンスホテルに行き、被告人小森は同ホテルの外で待機し、被告人美知子は同室の入口に立つて見張りをなし、被告人佐知子は右長内が同所において昏酔状態を持続していたのに乗じて、同人所有の現金四四万円を盗取したものである。
(法令の適用)
刑法六〇条、二三九条、二三六条一項(ただし、被告人浦添美知子は四四万円の盗取の点についてのみ責任を負う)、六六条、六八条三号、二五条一項
(情状)
被告人浦添佐知子、同小森勉は、計画的で強固な決意にもとづいて、なんらちゆうちよすることなく、佐知子の顔見知りの長内から沈着冷静に行動して合計五六三、二〇〇円という多額の金員を盗取したものであり、また同浦添美知子も、右被告人らの犯行を知るや、直ちに「もう一度長内さんの所へ行つて取つて来よう」と言つて、積極的その後の犯行を提案しているのであつて、被告人らの大胆不敵ともいえる犯行態度、および一片の良心的なかしやくもなく犯行を犯す被告人らの反社会性には、驚かざざるをえない。しかも右犯行の動機には何ら同情すべき点も見出せないこと、右犯行が社会に与えた影響も大きいことなどを考え合わせると被告人らの罪責はまことに重大であるといわなければならない。しかし一方被害者長内においても多額の金員を所持しながら、被告人佐知子の言葉をたやすく信頼してホテルに行つているのであつて、同人においても本件犯行を引き起す誘因があつたこと、その後被害金員の弁償がなされて財産的損害は回復されていること、被害者は現在被告人らを宥恕していること、被告人らは反省悔悟の態度を示して、更に犯罪を犯す慮がないこと、その他諸般の事情をも考慮し、被告人らにはいずれも刑の執行を猶予することとする。(白井皓喜)