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札幌地方裁判所 昭和48年(行ウ)7号

原告

第一小型ハイヤー株式会社

被告

北海道地方労働委員会

被告補助参加人

第一ハイヤー労働組合

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告と被告との間に生じた分および参加によって生じた分とも、すべて原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

一  被告が、昭和四七年道委不第一二号不当労働行為救済申立事件について、昭和四八年五月二五日にした命令のうち、主文第三項を除き、その余を取消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

(被告)

一  主文第一項と同旨

二  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

(原告の請求原因)

一  被告補助参加人第一ハイヤー労働組合(以下参加人組合または単に組合ともいう。)は、原告(以下単に会社ともいう。)が参加人組合に所属する組合員に対し職制上の昇格について差別していることは不当労働行為であるとして、被告に対し救済の申立をなし、これに対して、被告は昭和四八年五月二五日不当労働行為であるとの右主張を容れて、別紙命令書(本件命令書)記載のとおりの救済命令(本件命令)をなし、同命令書は同年六月二日原告に送達された。

二  しかしながら、本件命令のうち主文第三項を除くその余の部分は、不当労働行為と誤認してなされたものであり、また右命令の内容においても、不当労働行為制度の本来の原状回復という目的を逸脱し、将来原告が行なおうとする昇格人事に支配介入するものであって、これは使用者たる原告の裁量領域に介入した被告の権限濫用行為にほかならず、右二点において違法があるから、その取消を求める。

(請求原因に対する被告の認否)

一  請求原因一の事実は認める。

二  同二の主張は争う。

(被告の主張)

被告は、本件命令書記載のとおりの事実認定および法律判断により本件命令をなしたものであって、何らの違法はない。被告は、同命令書のとおり事実上および法律上の主張をする。

(被告の主張に対する原告の認否および反論)

一  被告が本件命令書において認定した事実(命令書第1)について

(一) 第1の1「関係者」(1)ないし(4)は認める。

(二) 第1の2「これまでの労使紛争」は認める。

(三) 第1の3「会社の本社営業所の職制」は認める。

ただし、現在は「営業所」が「営業課」と変わり、「所長」の職名は「課長」と名称が変わったほか、次長、主任および班長の数はそれぞれ一名、四名、八名(営業六名、整備二名)に変わっている。

(四) 第1の4「従業員の昇格」(1)(2)は認める。同(3)のうち昭和三九年および同四二年以降についてすべて入社順序に従っているとの点は否認し、その余の事実は認める。同(4)は認める。

二  被告が本件命令書においてした判断(命令書第2)について

(一) 第2の1は認める。

(二) 第2の2は認める。

(三) 第2の3は争う。

1 第2の3<1>は認めるが、原告の不当労働行為を認定する一資料として採用しているのは誤りである。会社における班長職は、会社従業員の運転業務を直接に監督する立場にあり、安全運転、乗客へのサービス等の指導のほか、従業員の健康管理、従業員間の融和協調への配慮等をその職務内容とする以上、班長を任命するに当たっては会社に三年以上勤務し、その勤務態度、指導力、職場での調和性、健康状態、車輛の知識、現業においての事務能力、遵法性、重大事故の有無、出勤状況等を総合考慮して右職務内容に適するか否かを判断しているものである。参加人組合の組合員の中から班長職に昇格した者がないのは、右判断の結果、同組合員の中には適任者がないとされたからにほかならず、したがって右事実をもって原告の不当労働行為を認定する資料とすることは許されない。

2 第2の3<2>は否認する。

班長職への昇格について、原告が会社に三年以上勤務した者の中から選んでいることは認めるが、右に述べたごとく、それは班長の選任に当たっての一資料に過ぎない。要するに、原告会社は班長職への昇格について適材適所主義によっているのであって、年功序列といった非合理的な方法によっている事実はない。

3 第2の3<3>は争う。

およそ班長職昇格人事については、単に班長職として不適格とする特別な事情がないという消極的判断ではなく、この者こそ班長職として適格があるとの積極的な判断がなされなければならない。しかるに、被告の右判断は「不適格とすべき特段の事情は立証されなかった」とするにとどまるのであるから、昇格人事の見方を誤るものである。

4 第2の3<4>は否認する。

原告は参加人組合と協調し、会社経営の円滑に行なわれることに努力こそすれ、組合敵視をしたことはない。

5 第2の3<5>は否認する。

被告の右主張は、具体的に如何なる世話が不十分であったかが明確でなく、その証拠も明らかでない。

原告は、参加人組合の組合員から班長の同組合員に対する取扱に行き届かない点がある、との苦情を全く受けたことがないことからしても、右主張は誤りである。

(四) 第2の4は争う。

第三証拠(略)

理由

一  本件命令の存在

請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

二  本件命令の適否について

(一)  不当労働行為の成否

(事実関係)

1 原告と参加人組合

原告は肩書地(略)においてタクシー業を営み、従業員二八〇名余、車輛台数一一〇台余を有していること、参加人組合は昭和三一年一一月原告会社従業員をもって結成され、同四八年ころの組合員数は五〇名余であり、全日本自動車交通労働組合北海道地方札幌連合会に加盟していること、および原告会社従業員中約二三〇名は、同三七年春の会社と参加人組合間の争議中に同組合とは別に新たに結成された第一小型ハイヤー株式会社新労働組合(以下新労という。)に加入していること、以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。

2 原告と参加人組合間の労使紛争の経緯

原告は、昭和三七年五月八日同年春闘の際に業務妨害行為をしたこと等を理由として当時の参加人組合の執行委員長(及川静雄)を、同三八年一一月二八日には右春闘以降に組合に違法な争議行為があったことを理由として当時の副執行委員長(飯村平)ら一〇名を、それぞれ懲戒解雇したこと、これに対し、参加人組合は原告の右懲戒解雇はいずれも不当労働行為であるとして被告に対し同三七年六月と同三九年二月にそれぞれ救済の申立(昭和三七年道委不第一一号、同三九年道委不第六号)をし、同四一年七月一四日それぞれ一部救済の命令がなされたこと、しかるに原告はこれを不服として行政訴訟を提起したので、被告は右命令について緊急命令の申立をし、これが認められたが、原告はこれに服しなかったこと、しかし原告は同四五年一二月、右緊急命令に従わないため過料の制裁を受けたことからようやくこれに服し、前記一一名の被解雇者の職場復帰を認めるに至ったものの、後の事件についてはいまだ行政訴訟を係属させていること、参加人組合はさらに同四七年四月、同組合員の昇格問題について原告が団体交渉を拒否しているとして被告に対し救済の申立(昭和四七年道委不第一一号)をする一方、別途本件救済の申立をもなし、それぞれ一部救済の命令がなされたこと、以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。

3 原告の本社営業所の職制

原告の本社営業所は、昭和四八年ころ所長のもとに次長二名、主任三名、班長一〇名(営業七名、整備二名、事務一名)、指導運転手二名を含む運転手約二五〇名をもって構成されていたこと(なお、証人高橋信行、同平田利夫の各証言によると、その後営業所は営業課と、所長は営業課長とそれぞれ名称が改められたことが認められるが、次長、主任および班長の人数に変更があったことについてはこれを認めるに足りる証拠がない。)、原告会社の職制は、古くは班別に編成されないままに比較的古参の運転手に班長の名称を与え、これを新入運転手の教育に当たらせる一方、一般の運転手と同様に乗務させていたが、右名称が勤務の実態にそぐわないため、同三六年にこれを廃止して指導運転手と改め、その後同三七年には会社の営業形態がハイヤー業から次第にタクシー業に移行してきたことに伴って班長制度を復活し、その保有車輛を班別に編成して班長を置き、指導運転手の中からこれを登用するに至ったこと、そして現在、班長は原則として乗務せず、班長一人当たり約一五台の車輛と約三〇名の運転手を掌握してその事故処理、売上金の収受、新入運転手の指導等の管理的業務に従事し、その賃金も一般の運転手より高額の固定給のほか職務給を受けていること、以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。そして、(証拠略)を総合すると、班長職の給与は運転手の給与と比べて若干下回る場合もあるが金額的に大きな差異はなく、一方、班長職は主任、課長等の上位の管理職へと昇進するための最も有力な地位であって、現にここ約一〇年の間、班長職を経ずして主任等の地位に昇進した者はないことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

4 従業員の昇格

原告は、昭和三四年六月参加人組合との間で、会社の運営、人事その他すべてにつき組合と協議して充分その意向を尊重し、これらを民主的に行なう旨および人事異動については本人の意向をも尊重する旨を協定し、同三七年に新労が結成されるころまではおおむね右協定に従った人事その他が行なわれてきたこと、原告は同四六年三月一七日、右協定をその解釈について紛議が絶えないからとの理由で同年六月三〇日限り解約する旨を組合に通告したこと、同三八年以降班長(ただし、整備担当者を除く。)に昇格した人数は同三八年に一名、同三九年に三名、同四〇年に一名、同四二年に二名、同四三年に一名、同四五年に二名および同四六年に五名の合計一五名であって、その勤続年数は同三八、三九年の昇格者を除いた一一名については約九年であること、右一五名の昇格者はすべて新労に属し、班長であったこと、参加組合の組合員前田五七夫、同古川達夫、同松野喜代春、同佐藤安三、同千代谷渥、同中島義一、同松尾豊、同川淵正光はそれぞれ同三四年四月一八日から同三七年三月二〇日にかけて原告会社に運転手として入社し今日に至っているが、前田ら八名と同時期に入社して現在も勤務している者は、右前田ら八名および解雇を争っている者を除き、すべて同四六年三月一五日までに班長もしくは主任に昇格していること、前記の班長に昇格した一五名のうち三名は、右前田ら八名よりおくれて入社した者であること、以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。

ところで、班長昇格の基準についてみるに、(証拠略)を総合すると、原告会社は班長職昇格人事を行なう際には、まず営業課長に対し勤続年数三年以上の者の中から候補者を推薦するように指示し、次いで営業課長が推薦した複数の候補者について専務取締役、総務部長、営業課長および庶務課長が共に検討したうえ、社長の決裁を得て昇格者を決定し、特に右検討に当たっては勤続年数(三年以上の者が対象となることは当事者間に争いがない。)のほか、欠勤率、事故の有無態様その他の勤務成績、協調性、指導力等の各要素が対象となっていること、入社時期の順序が班長あるいは主任への昇格の順序と全く一致しているわけではないことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はなく、殊に、右認定に反し昭和三九年および同四二年以降の班長昇格者はすべて入社順序に従っている旨の被告主張の事実を裏付けるべき資料は全く存しない。しかしながら、新労結成後の乗務員から班長(ただし、整備担当者を含む。)への昇格人事について、(証拠略)を仔細に検討すると、(1)昭和三七年度昇格者は、その昇格の当時、入社順序が参加人組合の組合員以外の乗務員(原告会社から解雇通知を受けている者を除く。)中、同組合員を除いて第二、第四番目(同組合員を加えると第二、第五番目、以下括弧内は同趣旨)、(2)同三八年度昇格者は第一二番目(第一九番目)、(3)同三九年度昇格者は第二、第三、第九番目(第三、第四、第九番目)、(4)同四〇年度昇格者は第三番目(同上)、(5)同四二年度昇格者は第一、第二番目(同上)、(6)同四三年度昇格者は第一番目(同上)、(7)同四五年度昇格者は第一、第三、第四番目(第三、第八、第九番目)、(8)同四六年二月一五日付昇格者は第一番目および順位不詳者(第六番目および順位不詳者)、(9)同年三月一五日付昇格者は第一、第二番目(第七、第一〇番目)、(10)同年九月一六日付昇格者は第一ないし第三番目(第九ないし第一一番目)、(11)同四八年度昇格者は第一四番目以内の順位不詳者(第二二番目以内の順位不詳者)であること、しかして右昇格者はすべて参加人組合の組合員以外の者によって占められていること(なお、昭和三八年以降において整備担当者を除き班長職に昇格した一五名は全員が新労に所属する者であったことは当事者間に争いがない。)がそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そして、本件全証拠によっても、右昇格した各人につき如何なる点において班長職として適任であるのかは明らかでない。したがって、右事実関係のもとにおいては、参加人組合の組合員を除外して考える限り、原告会社への入社時期という要素は、班長昇格者を選任する基準として絶対的なものとまではいえないにしても、極めて重要な要素であり、特に昭和三九年以降においてその重要性が高まってきていると推認せざるを得ないところである。

そして、(証拠略)を総合すると、現在原告会社の班長あるいは主任の職にある者と同時期に入社し、かつ、参加人組合に所属する者の中にも、永年原告会社の運転手として職務に精励し、無事故運転で社団法人札幌乗用自動車協会から表彰を受け、あるいは会社から業務に精励したとの理由で表彰を受ける等、勤務成績が優秀である者も数多く認められ、右の者について班長昇格を不適格とすべき特段の事情は毫も存しない。なお、被告が班長の組合員に対する世話が行き届いていないと主張するような事実は、これを認めるに足りる適確な証拠がない。

(事実関係に対する判断)

原告会社の班長職が、現在、全員新労所属の組合員によって占められ、参加人組合の組合員は一人としてその地位にないのであるが、これは、以上の当事者間に争いのない事実と認定した事実とを総合すれば、原告が主張するように適材適所主義で人選をした結果であって参加人組合の組合員であるが故に昇格をさせなかったものではないとはとうてい認めることができない。かえって、前述した労使紛争の経緯等に徴するときは、原告会社はことさら参加人組合を嫌悪し、同組合に対して敵意を抱いていたものと推認せざるを得ず、班長職昇格人事においても、参加人組合の組合員であること自体をもって昇格者決定の際の極めて重要な要素として取り込み、同組合員である場合にはこれを理由として班長に昇格させなかったものと認むべく、結局、原告において不当労働行為を行なったものと認定すべきである。(証拠略)のうち右認定した事実と牴触する部分は、前記の認定に供した各証拠に照らして、とうてい信用することができないものである。

なお、原告の「被告の主張に対する原告の認否および反論」二(三)3における主張について判断する。被告が本件命令書において右主張でいうところの消極的判断しか示していないことは当事者間に争いのないところではあるが、成立に争いのない(証拠略)(右命令書)を検討すると、右消極的判断は原告の不当労働行為を認定する一つの間接事実の判断としてなされているに過ぎず、右消極的判断のみによって原告の不当労働行為を認定するに至ったものでないことは明らかに看取できるところである。したがって、原告のいう積極的判断を示さずして原告の不当労働行為を認定したとはとうていいうことができず、原告の右主張は理由がない。

(二)  救済措置の是非

不当労働行為救済命令は、できるだけ不当労働行為がなかったと同じ状態に回復することを目的とする行政処分であるから、不当労働行為があった場合に、これに対し如何なる救済措置をとるかは労働委員会の裁量に属するところであって、たとえ右措置が会社(使用者)の有する人事権に対して制約を加える結果となるにしても、申立の趣旨に反しない限り、個別的具体的事案に即して右の目的を達するに適当な処分を命じ得るものと解すべきである。そして、前記の認定、説示に照らすと、本件救済命令の主文第一、第二項に各記載の措置が著しく不当で、裁量権の範囲を逸脱し、あるいはその権限を濫用したとかいうことはできない。

三  結論

以上によれば、原告の主張するところは理由がなく、他にその主張を理由あらしめるべき事情は何ら認めることができないから、原告の請求は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九四条後段を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 前川豪志 裁判官 上原裕之 裁判長裁判官白石嘉孝は、転任につき署名捺印することができない。裁判官 前川豪志)

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