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札幌地方裁判所 昭和57年(わ)1254号 判決 1983年5月19日

本店の所在地

北海道小樽市稲穂一丁目八番一七号

法人の名称

有限会社 丸キ滝波商店

代表者の住居

北海道小樽市稲穂一丁目八番一七号

代表者の氏名

瀧波喜久治

本籍

北海道小樽市稲穂一丁目五番地

住居

北海道小樽市稲穂一丁目八番一七号

会社役員

瀧波喜久治

昭和四年三月二〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官宮沢忠彦、弁護人藤原栄二各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社丸キ滝波商店を罰金八〇〇万円に、被告人瀧波喜久治を懲役六月に処する。

被告人瀧波喜久治に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。訴訟費用は、その二分の一ずつを被告人有限会社丸キ滝波商店及び被告発瀧波喜久治の各負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社丸キ滝波商店(以下「被告会社」という)は、北海道小樽市稲穂一丁目八番一七号に本店を置き、海産物の販売等を事業目的とする資本金二五〇万円の会社であり、被告人瀧波喜久治は、被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人瀧波喜久治は、被告会社の右業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部除外及びたな卸除外などの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が一、九七九万六、〇五九円であり、これに対する法人税額が七〇四万一、七〇〇円であるにもかかわらず、昭和五五年二月二九日、北海道小樽市富岡一丁目一六番一号所在の小樽税務署において、同税務署長に対し、被告会社の同事業年度所得金額が一八七万五、三一二円であり、これに対する法人税額が四八万八、三〇〇円である旨内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額とその申告税額との差額六五五万三、四〇〇円の法人税を免れ

第二  昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が三、七一五万四、四四二円であり、これに対する法人税額が一、四〇二万一、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五六年二月二八日、前記小樽税務署において、同税務署長に対し、被告会社の同事業年度の決算の結果は、欠損金額が一八四万四、二五三円で、課税標準たる所得がなく、従って納付すべき法人税もない旨内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一、四〇二万一、六〇〇円を免れ

第三  昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が三、四六八万六、七九八円であり、これに対する法人税額が一、三五七万一、二〇〇円であるにもかかわらず、昭和五七年三月一日、前記小樽税務署において、同税務署長に対し、被告会社の同事業年度所得金額が四六三万五、五二三円であり、これに対する法人税額が一三五万三、六〇〇円である旨内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額とその申告税額との差額一、二二一万七、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告会社代表者兼被告人瀧波喜久治の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告会社代表者兼被告人瀧波喜久治の供述部分

一  被告人瀧波喜久治の検察官に対する供述調書

一  被告人瀧波喜久治の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  瀧波久子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一  門間博司及び對馬守作成の各答申書

一  札幌法務局小樽支局登記官作成の登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の調査事績報告書(一〇通)、修正貸借対照表調査書、脱税額計算書、現金調査書、預金調査書、売掛金調査書、代表者勘定調査書(二通)、通信費調査書、福利厚生費調査書、水道光熱費調査書、仮払金調査書、期末商品調査書(二通)、買掛金調査書、未払金調査書(二通)、借入金調査書、価格変動準備金調査書、未納事業税調査書、繰越金調査書(二通)、欠損金の当期控除額調査書及び領置てん末書

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和五八年押第六一号の1)

(法令の適用)

被告人瀧波喜久治の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(判示第一及び第二の各所為については、刑法六条、一〇条により昭和五六年法律五四号による改正前のもの)に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、右は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役六月に処し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。そして同被告人の判示各所為は、同被告人が被告会社の代表者として被告会社の業務に関して犯したものであるから、法人税法一六四条一項により被告会社に対し同法一五九条一項の罰金刑を科することとし、判示各罪は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同四八条二項により各所定の罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金八〇〇万円に処する。訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により、その二分の一ずつを被告会社及び被告人瀧波喜久治の各負担とする。

(量刑の事情)

本件は、起訴された三年分のほ脱税額が三千万円を越え、ほ脱率も平均九四パーセント余り、判示第二の事業年度分にいたっては、ほ脱率一〇〇パーセントという悪質な事案であるが、他方、被告人、被告会社の取引金融機関や被告会社の決算書類、法人税申告書類等の作成を依頼されていた会計事務所の対応が本件各犯行を助長させた形跡もうかがわれ、また被告人瀧波は本件の発覚当初から犯行を素直に認め、捜査に協力しており、反省の情が認められ、既に修正確定申告をし、ほ脱税、延滞税、重加算税を納付済であり、一定の社会的制裁も受けていること、今後はかかる犯行を繰り返さないように、経理・会計の処理体制を整えようとしていること、同被告人は昭和四七年に業務上過失傷害罪により一回罰金刑に処せられた以外に前科もなく、今日まで真面目に働き続けてきた者であり、また被告会社もこれまでに刑罰を科せられたことはないなどの斟酌すべき事情も認められるので、これらを総合考慮し、主文の刑を量定する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田元彦 裁判官 永井敏雄 裁判官 浜秀樹)

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