札幌地方裁判所 昭和58年(レ)18号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
そこで、本件契約締結が日常家事代理権の範囲に属するか否かについて判断する。
<証拠>によれば、控訴人は本件契約締結当時四六才で、北海道予備学園の常務理事の職にあり、月収は約三〇万円で、昭和五三年に新築した家屋と土地を所有し、右家屋に妻子と暮らしていたこと、本件契約は子どもの学習教材を購入した代金の立替払契約であること、右教材は現金価格一八万九〇〇〇円であり、本件契約における立替代金の支払方法は初回一万一三〇〇円、以降毎月一万円であつたことが認められ、これに反する証拠はない。
ところで、日常家事に関する法律行為の範囲は、夫婦の社会的地位、職業、資産、収入や地域社会の慣習等の個別的事情だけではなく、その法律行為の種類、性質等の客観的事情をも考慮して定められるものである。これを本件についてみると、本件契約は子どもの教育のための教材に関するものであり、さきに認定した控訴人の地位、収入、資産等に照らすと、本件契約における立替金債務が控訴人夫婦にとつて不相当に高価であるとは認め難く、仮に控訴人が訴外節子に対し日常家事に関する代理権に制限を加えていたとしても、訴外節子に目の障害はあつたが、訴外節子が本件契約の趣旨を理解してこれを締結し、その後の支払等をしていたことも前認定のとおりであるから、本件の場合右のような主観的事情を重大視することはできず、本件契約締結は日常家事代理権の範囲に属するものと認めるのが相当である。
したがつて、訴外節子が控訴人名義でした本件契約は控訴人に効果が及ぶものということができる。
(木下重康 小野博道 中西茂)