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札幌地方裁判所室蘭支部 昭和33年(わ)132号 判決 1958年10月08日

被告人 大川久

主文

被告人を懲役二年に処する。

未決勾留日数中六十日を右の本刑に算する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、昭和三十三年六月頃本籍地から苫小牧市在住の従兄弟半田時頼を頼つて来道し暫く同人方に同居したが、同人の養父孝一(四十九年)が、被告人の就職止宿先等を種々配慮したのに、その意に反し、無断で同市緑町二〇番地小笠原乕蔵方に身を寄せ同人の世話になることになつたところから、右半田孝一において右小笠原乕蔵を快く思つていなかつたところ、たまたま、同年七月十四日同市祭礼の日、右孝一は、飲酒の上午後九時過頃、右乕蔵方に至り同家茶の間において、右乕蔵及びその家族に因縁をつけ、両者の間が険悪になつたので、被告人はこれを仲裁しようとしたが、右孝一の執拗な態度と暴行を加えられたことに痛く憤慨し、前頭部顔面等を手拳又は平手で数回殴打し又は足蹴りにする等の暴行を加えて同人の頭部、顔面部に打撲傷等の傷害を与え、これがため化膿性脳脊髄膜炎を誘発させ、因つて同月二十日午後五時四十七分頃苫小牧市立病院において同人を右病症により死亡するに至らしめたものである。

尚被告人は、昭和二十九年十一月三十日秋田地方裁判所大館支部において、暴行傷害の罪により懲役六月に処せられ、当時その刑の執行を終えたものである。

(証拠の標目)(略)

(適用法令)

被告人の判示所為は、刑法第二百五条第一項に該当するところ、被告人には判示の如き前科があるので、同法第五十六条、第五十七条を適用して法定の加重を為し、同法第十四条の制限内において罰すべきところ、被告人には判示の如き前科があるが、本件犯行は被害者の執拗な態度と暴行とに基因するのみならず、被害者致死の原因は、たまたま被害者において副鼻腔炎症(蓄膿症)に罹つていたため、被告人の暴行による顔面の傷害は誘発されて判示の如き症状を惹起し、死亡するに至らしめた点等を考えて懲役二年に処するを相当とし、尚同法第二十一条を適用して未決勾留日数中六十日を右本刑に算入することとし、訴訟費用については、被告人にその支払能力なきこと明らかであるから、刑事訴訟法第百八十一条第一項但書を適用して全部被告人に負担させない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 畔柳桑太郎 藤本孝夫 岡田潤)

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