札幌地方裁判所岩見沢支部 昭和46年(ワ)93号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕原告は、交通事故による受傷により後遺障害等級第八級に該当する障害があるとして自賠法一六条一項に基づき損害賠償額の支払を請求したが、被告は、「原告は訴外柳沼伸吉、同北寿産業株式会社を被告として本件交通事故による損害の賠償を求める当裁判所昭和四四年(ワ)第一五三号訴訟事件を提起し、昭和四五年九月二五日右事件につき判決の言渡があり、右判決は同年一〇月二二日確定した。右訴外柳沼は原告に対し同月二六日右判決にもとづいて判決の認容額金五七万一、〇五一円を全額支払つたので、被告は被保険者である右柳沼に対し昭和四六年二月三日総額金六一万円の保険金を支払つてその損害を填補した。右訴訟の訴訟物は原告の本訴請求にかかる後遺症を含む原告の損害全部にわたるものであり、右判決も逸失利益および慰藉料の項目で右後遺症補償を認容ずみであり、従つてまた被告支払にかかる保険金六一万円には、障害等級第一四級第九号相当の金一一万円の後遺障害の保険金が含まれているのであるから、原告の損害全部について解決ずみであり、被告は自賠法第一六条第二項により原告に対する保険金の支払義務を免れるものである。」と主張した争つた。
〔判決理由〕同第二項の後遺症の障害等級の点について検討するに先立ち、被告の主張について考えるのに(弁論の全趣旨によれば原告は右主張を争つているものと解せられる)自賠法第一六条第一項の保険会社の被害者に対する直接責任は、被保険者である保有者の被害者に対する責任の限度において、認めらるべきことは同条項の法律要件上明らかであるところ、<証拠略>によれば、原告と被保険者訴外柳沼伸吉との間には、被告主張の訴訟事件の確定判決があることが認められるから、右柳沼の原告に対する責任の確定された範囲を検討する必要がある。<証拠略>によれば原告は本件事故による後遺障害を慰藉料の費目において請求していると解せられること、<証拠略>によれば、原告は昭和四五年九月五日の前記訴訟事件口頭弁論終結当時において、頭頸部、上肢の神経症状、左手関節、肘関節の機能障害、右膝関節の引出症状、動揺関節並びに関節裂隙の圧痛等の症状を残している事実が前記確定判決上認定され(ただし症状固定時および障害等級は判文上明らかでない)、右後遺症を含めた慰藉料として金四五万円が右判決において認容されたことが認められ、右認定を動かすに足る証拠はない。そうすると右柳沼は前記訴訟事件の口頭弁論終結時である昭和四五年九月五日当時顕在化し、或いは発生の予見された範囲の原告の後遺症については右判決認容の限度で原告に対する責任を負担するものと考えるのが相当であり、従つてまた被告の原告に対する責任も右の限度で認容さるべきものである。
そこで原告主張の後遺症について検討するに、<証拠略>には、原告の後遺症の症状が固定し、その内容は頭部の神経症状、左手指、右膝関節の疼痛等でありその障害等級は第八級に該当する旨の記載があるけれども、右所見は昭和四五年九月三〇日のものであつて、原告の後遺症の状況は同月五日の口頭弁論終結の後、特段の変化を来したものではなく、右口頭弁論終結当時、顕在化し、発生の予見された範囲の症状に留まるものであると解すべきことは、<証拠略>により明らかであるから、原告の後遺症に対する訴外柳沼並びに被告の責任は前記確定判決の認容の限度を超えるものではない。
二、<証拠略>によれば訴外柳沼は原告に対し昭和四五年一〇月二六日、判決認容額全額金五七万一、〇五七円を弁済したことが認められ、<証拠略>によれば被告は訴外柳沼に対し昭和四四年一〇月八日、金三〇万円、昭和四六年二月三日、金三一万円合計金六一万円の保険金を支払い(内訳、治療費等金二八万〇、八〇二円、休業補償費金一二万六、九九〇円、慰藉料三四万円、障害補償費金一一万円、相殺等差引額金二四万七、七九二円)その損害全部を填補したことが認められ、右認定を動かすに足る証拠はない。
してみれば被告は自賠法第一六条第二項により、原告に対する保険金支払義務を免れることが明らかである。
(稲田輝明)