札幌家庭裁判所 平成22年(家)10125号 決定 2010年7月12日
主文
本件申立てを却下する。
理由
1 申立ての要旨
申立人は甲山Aとの間の非嫡出子であるところ,父である申立人法定代理人親権者父乙川B(以下「申立人父」という)は平成17年×月×日申立人を認知し,平成21年×月×日甲山Aとの間で申立人の親権者を申立人父と指定する旨の合意をした。申立人父は,申立人を,自己を筆頭者とする戸籍に入籍させるべく,申立人の氏「甲山」を「乙川」に変更することの許可を求める。
2 当裁判所の判断
本件記録によれば,甲山Aは平成16年×月×日申立人を出産したこと,申立人父は平成17年×月×日申立人を認知したこと,申立人父と甲山Aは平成21年×月×日申立人の親権者を申立人父に指定したこと,申立人父を筆頭者とする戸籍には,申立人父を父とし,丙谷Cを母とする嫡出子である長男D(平成3年×月×日)及び長女E(平成5年×月×日生)が同籍していることが認められる。
父の認知により母の氏を称する子が父の氏への変更を求めた場合には,子の利益もさることながら,同籍によって社会的な不利益・精神的苦痛を被ることとなる嫡出子の利益との調整を図りつつ,変更許可の可否を決しなければならない。当裁判所は,申立人父に対し,平成22年×月×日及び同年×月×日に,D及びEの申立人が同籍することへの同意書の提出を求めたところ,申立人父はこれに応じず(申立人父は,同年×月×日に裁判所書記官に対し,すぐに同意書を提出すると電話連絡するも,同意書の提出をしないばかりか何らの連絡をしてこない。),指定された審判期日にも出頭しない。嫡出子の同意は得られていないといわざるを得ない。
また,本件にあっては,申立人と申立人父が共同生活を送っているというわけではなく,申立人が申立人父と同籍することによる利益が大きいとまではいえない。
嫡出子の同意が得られない本件にあっては,申立てを許可するのが相当とはいえず,本件申立てはこれを却下するほかはない。
3 よって,本件申立てを却下することとし,主文のとおり審判する。