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札幌家庭裁判所 昭和38年(家)1702号 審判 1963年12月26日

申立人 白水信子

右法定代理人親権者父 白水国夫

〃 母 白水マサ子

主文

本件申立を却下する。

理由

本件申立の要旨は「申立人の現住所と二~三百メートルしか離れていない札幌市白石町中央○○○番地の五に申立人と同姓同名の者が居住しており、将来郵便物等の誤配その他社会生活上何かと不都合を生ずる虞れがあるので、いまのうちにその名を三紀子と変更しておきたく、これが改名の許可を求める」というのであつて、記録中の戸籍謄本ならびに住民票の謄本によれば、申立人主張の場所に白水篤の妻である白水信子(昭和八年八月二三日生)が居住している事実が認められ、その住所と申立人の住所地とが直線距離にして約一、五〇〇メートルのへだたりを有することは、札幌市都市計画課計画係への電話照会に対する回答によつて明かである。

そこで考えてみるに、申立人は現在ようやく満一年四ヵ月に達した幼児にすぎないのであるから、たとえ近所に同姓同名の同姓者がおつたとしても、これがために本人の日常生活上はもちろん、両親が本人を哺育していく上においてもいま直ちに格別の支障があるとは認められない。のみならず申立人と上記白水信子とは年齢の上で二九歳の開きがあるほか、その住所は同じ札幌市内ではあるが町名を異にしており、しかもその間約一、五〇〇メートルをへだてているのであつて、これらの諸点からすれば、たとえ両者が今後現住所のままの生活をつづけていつた場合にも、将来においては社会生活上両者が間違われて申立人の主張するような不便不都合を生ずる虞があるとはにわかに断定し難く、むしろそのような可能性は少ないのではないかとさえ思われる。もつとも申立人の如き生後一年半にも満たない幼児にあつては、名の変更による呼称秩序への影響はほとんど皆無といつてもよいのであるから、この点だけからすれば本件申立を許容して改名を認めたからといつて格別社会的の弊害を生ずる虞はないといい得るのであるが、戸籍法が改名について特に「正当事由」のあることを必要とした趣旨にかんがみるときは、改名が許されるためにはたんに改名による弊害がないとか、少ないとかいう消極的な面だけでは足りず、改名することがその本人にとつて利益になるという積極的な事由の存在することを要するものと解すべきである。そうすると、本件は上述の消極面においてはともかく、改名の積極的事由を欠く点において「正当事由」なきものといわざるを得ない。

よつて、本件申立を却下すべきものとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 小石寿夫)

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